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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

第3章 提言 ~障害者が幸福を感じながらスポーツを楽しむ社会の形成~

国民が生涯を通じて、それぞれが望むかたちでスポーツを楽しみ、幸福を感じられる社会の形成

障害者スポーツ

日本では、障害者がスポーツを楽しむための環境整備について、十分な支援が行えておらず、日常生活の中でスポーツを楽しむ土壌が形成しきれていない実情がある。障害の種類が多岐に渡る上、プライバシーの問題もあり、障害者の運動・スポーツ参加状況に関するデータは乏しいが、内閣府「障害者施策総合調査」(2008)によると、40.5%の障害者が何らかのスポーツ・文化芸術活動に参加していると回答し、これらの障害者が参加する主なスポーツ活動として卓球(スポーツ・文化芸術活動参加者の12.6%)、水泳(同12.4%)、陸上競技(同8.6%)などがあげられている。

障害者スポーツにおける根本的な課題は、障害者がスポーツを楽しむ環境の不足である。具体的には、障害者にスポーツを教えられる指導者の不足、障害者がスポーツを実施できる施設の不足があげられる。世間の目が気になって、スポーツに参加しにくいという社会背景もまた、障害者のスポーツ環境を狭める原因となっている。

1964年の東京パラリンピックを契機に、障害者のスポーツはリハビリテーションの一環と見られるようになり、病院や障害者施設などでスポーツとして実施されるようになった。国際連合は、1981年を「完全参加と平等」をテーマにした「国際障害者年」と指定し、その成果をもとに検討された「障害者に関する世界行動計画」を総会で決議し、計画実現にあたり、「国連・障害者の十年」(1983~1992)を宣言、障害者への課題解決に取り組むようになった。国際的にも、競技性の高い障害者スポーツ大会が開催されるようになり、こうした流れの中で、障害者のスポーツは、リハビリテーションの延長という考え方から、日常生活の中で楽しむスポーツ、競技するスポーツへと変わってきた。

1998年には、厚生省(現・厚生労働省)によって、「障害者スポーツに関する懇親会」が開催され、その報告を受けて、翌年、(財)日本身体障害者スポーツ協会は(財)日本障害者スポーツ協会(Japan Sports Association for the Disabled:JSAD)へと名称を変更し、すべての障害をもつ人の統轄団体となり、同時に、日本パラリンピック委員会が設立された。2002年には、(財)日本アンチ・ドーピング機構にも加盟を果たした。

今後は、スポーツが障害者の生活をより豊かにするという視点に立ち、誰もが気軽に生活の中で楽しむスポーツへと発展していく必要がある。また、障害の有無に関わらず、スポーツにおいてのノーマライゼーション(障害者と健常者が区別されることなく、社会全体を共にすることが望ましいという理念)の実現が必須である。「障害者基本法」(1993、2004改正)第2条において、障害者とは、「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と定義づけられており、本項でも、同様の定義のもと、障害者が幸福を感じながらスポーツを楽しむ社会の形成について、以下2点の提言を行う。

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