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政策提言

提言7 中央競技団体の運営を可視化し、競技の普及活動の強化につなげるべき

スポーツ立国戦略は重点戦略として、「スポーツ界における透明性や公平・公正の向上」に触れているが、スポーツ基本法においても、「スポーツ団体は、スポーツの振興のための事業を適正に行うため、その運営の透明性の確保を図るとともに、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成する」(第5条2)べきとしている。笹川スポーツ財団(SSF)「中央競技団体現況調査」(2011)によると、中央競技団体の運営スタッフに関する分析において、調査に回答した79団体のうち、運営スタッフがおらず、役員が運営スタッフの役割を兼務しているとみられる団体が11団体、正規雇用者のいない団体が全体の3割近くに及ぶことが明らかとなり、多くの中央競技団体は、役員、運営スタッフともボランティアで運営されるなど、財政的に苦しい状況にあることが改めて確かめられた。また、スタッフの入職経路では5割以上が「縁故」であること、スタッフの約8割が転職を経ていることがわかっている。

この結果から、中央競技団体は少数精鋭で、現場に精通した即戦力人材を求めていると推察できる。そうした要望を考慮した場合、組織運営の改善のために、現場の声を吸い上げることができる専門職スタッフと、組織運営の調整役となる総合職スタッフのバランスの取れた構成が望ましいと考えられる。総合職スタッフは、経営学修士(Master of Business Administration:MBA)に代表される組織マネジメントやガバナンスに関する学位取得者を対象に組織運営で能力を発揮できる人材を採用し、民間的な経営手法の導入により、資金調達、事業運営の効率化やコストの縮減、安定性や継続性、発展性に考慮した事業運営のスキーム構築などに注力させる。その上で、競技団体の運営の効率化を支援するため、統轄団体である日体協やJOCなどを中心に監督・助言機関を設置するとともに、競技団体は一層の情報公開に協力し、運営ノウハウを団体間で共有する体制を築いていく。

前述の「中央競技団体現況調査」で示したように、多くの競技団体が運営していくだけで精一杯で、ガバナンス強化にまで手が回らないのが現実である。中央競技団体が事業体として強固になることはつまり、短期的な結果を求められるために、強化活動に専念せざるをえない運営体質の改善にもつながる。安定した運営体制が構築されれば、普及活動にも腰をすえて取り組めるようになり、競技人口の増加だけではなく、競技自身の全国的な盛り上がりにもつながる。ひいては、競技団体のさらなる強化へとつながり、アスリートが安心して競技に取り組める環境構築を加速させるはずである。(独)日本スポーツ振興センターでは、2011年度から「スポーツ団体のガバナンス強化に対する助成事業」を開始した。法律、経営面についての課題等に対する指導・助言や統治・統制に関する研修会、およびそれらの課題等に関する専門家の配置等を行う事業が対象となっており、初年度は、3団体に対して、総額約530万円の助成を予定している。この助成事業が今後より多くの団体に活用され、成果をあげることが期待される。加えて、中央競技団体の運営能力の改善には、総合職スタッフの雇用支援など、10年後、20年後の競技団体のありかたを見すえた、さらに踏み込んだ施策展開が求められる。子どもがスポーツに没頭したときに、保護者が心配するのは、競技性を追及した先に明るい未来が描けるかどうかである。怪我をしたときに充実したアスリート保険はあるのか、スポーツとは無関係な生活に移行しても幸福な人生を歩むことはできるのか、キャリアパスの作成と安心できる環境構築は、日本の競技スポーツの発展をささえる上で重要な課題である。

図表3-6 アスリート年金受給システム

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