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SSFが振り返る2018年重大ニュース

1.スポーツ庁が部活動ガイドライン策定、日本版NCAA「UNIVAS」来春発足

スポーツ庁は3月、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を発表した。ガイドラインは、生徒や顧問教員に負担を強いる長時間練習の改善を目指し、週2日以上の休養日を設けることなどの指針を示した。指導者のハラスメント撲滅も強く打ち出しており、部活動改革が大きな一歩を踏み出した。

また、同庁は全米大学体育協会(NCAA)を参考にした大学スポーツの新たな統括組織の名称を「大学スポーツ協会(UNIVAS)」とし、来春発足させることとなった。大学横断的、競技横断的な組織として学生アスリートの安心と安全を確保し、学業との両立を促すため、対外試合に出場できる学業成績の基準を将来的に設けることも決定した。

<SSFの取り組み>

スポーツライフ・データの二次分析をウェブサイトで定期掲載

SSFでは、国民のスポーツライフの実態把握を定期的に行う「スポーツ活動に関する全国調査」を実施している。2018年度からスポーツライフ・データの二次分析をウェブサイトで紹介する連載をスタートさせた。子供を取り巻く運動環境を調査データから分析し、「子供たちは運動部活動に何を求めているのか」「野球部の練習時間はなぜ長いのか」など、SSF独自の切り口で、部活動問題を考える材料を社会に提供した。

2.2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け日本勢が大活躍

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2月に韓国の平昌で開かれた冬季オリンピックで、フィギュアスケートの羽生結弦選手が2連覇を達成するなど日本勢が大活躍し、社会に明るいニュースをもたらした。金4、銀5、銅4の計13個のメダル獲得は冬季五輪で過去最多。メダルを含めた入賞数は43で、過去最多だった98年の長野大会の33を大きく上回った。

日本は8月にインドネシアのジャカルタで開かれたアジア大会でも過去最多のメダル数を獲得するなど、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて弾みをつけた。また、6月にロシアで開かれたサッカーのW杯で、日本は大会直前に監督が交代するという逆境を乗り越えて予選リーグを突破。ベスト16進出をはたして国民を興奮させた。また、卓球では、15歳の張本智和選手がワールドツアー・グランドファイナルを史上最年少で制覇。
バドミントンでは、ワールドツアー・ファイナルで、女子複の高橋礼華選手、松友美佐紀選手が韓国ペアを下し、4年ぶり2度目の優勝を果たした。

<SSFの取り組み>

リオ五輪を振り返り「東京が学ぶ成功と失敗」を発信

2018年はオリンピック・パラリンピック開催の中間年にあたる。そこで、SSF海外研究員の沢田啓明氏により、2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの成功と失敗から、2020年東京大会を成功させるために何が必要か、という記事をウェブサイトに掲載した。リオデジャネイロでは、大会に向けて整備した交通網などのインフラは大会後も有効活用されているが、競技施設の利用は計画通りに進んでいないことなどを紹介した。

2019年に日本で開催されるラグビーW杯を前に、独自の視点でラグビーを掘り下げる「ラグビー歴史の検証」を企画。往年の名選手や関係者へのインタビューなどを通し、大会がより広く認知されるように努めた。

3.スポーツ界の不祥事が世間をにぎわす

残念なことにスポーツ界での不祥事が世間をにぎわせた。1月にはカヌーのトップ選手がライバル選手の飲料に禁止薬物を混入する事件が発覚。5月には日大アメリカンフットボール部の指導者が選手に悪質タックルを指示したとされる不祥事が起き、メディアで連日報じられた。ほかにも日本体操協会のパワハラ問題、日本ボクシング連盟の助成金不正流用に端を発する騒動も起きた。

こうした事態を受けて超党派のスポーツ議員連盟プロジェクトチーム(PT)は12月、国とスポーツの統括団体が各競技団体の健全化へ指導的役割を果たす「円卓会議」の設置などを求める提言をスポーツ庁に申し入れた。

<SSFの取り組み>

各競技団体の現状を収益面から調査

SSFは日本スポーツ協会および日本オリンピック委員会に加盟する中央競技団体のうち、公益法人格を有する59団体を対象に、過去5年間(2012年度~2016年度)に渡る財務諸表から財務データベースを作成し、現状の分析・把握を試みた。2020年東京大会に向けた強化費増額による財務状況の好転する一方、2020以降は強化費の減額も予想され、各競技団体が収益力の向上につながる事業計画が肝要と提言した。

4.障害者スポーツの普及・促進が加速

パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ

写真提供:日本財団パラリンピックサポートセンター

2020東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、障害者スポーツの普及と促進、周知活動が活発化した。世界最大規模の車いすマラソン大会である「大分車いすマラソン」は38回目の大会を成功裡に終えた。障害者スポーツの魅力を伝えるための体験会が各地で開催された。子どもを対象としたイベントに加え、企業が社員間のコミュニケーションを強化するために障害者スポーツを取り入れる動きも見られた。6月にはパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」が東京都品川区にオープンした。

<SSFの取り組み>

大分県と地域スポーツイノベーター協定締結


長年障害者スポーツの研究に取り組んでいるSSFは、大分県と「SSF地域スポーツイノベーター」協定を締結し、障害者スポーツと地域スポーツの現場、自治体などが連携を促進する人材を配置した。

また、パラリンピアン認知度調査を実施し(調査主体:ヤマハ発動機スポーツ振興財団)、2020年東京パラリンピックの成功と障害者スポーツ普及に向けた調査結果を発表した。

5.2020東京大会のボランティア募集始まる

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と東京都が9月にボランティアの募集を開始した。競技会場などで活動する「大会ボランティア」への応募が11月下旬の段階で予定人数の8万人を超えた。

2019年に国内12か所で開催されるラグビーW杯は、史上最多3万8000人のボランティア応募があった。ボランティアへの理解と関心が高まる一方で、ボランティアの活動環境に疑問を呈する声が上がり、ボランティア議論が巻き起こった。

<SSFの取り組み>

ワールドマスターズゲームズ2021関西でボランティア連携協定締結

ワールドマスターズゲームズ2021関西でボランティア連携協定締結


SSFはスポーツボランティアの調査を実施した。その結果、4人に1人がボランティアを希望していることが分かり、2020東京大会を契機にしたボランティアのレガシー創出の必要性を訴えた。また、2021年に開催されるワールドマスターズゲームズでボランティア活動を円滑に推進するため、ワールドマスターズゲームズ2021 関西組織委員会、SSF、日本スポーツボランティアネットワーク(JSVN)三者による連携協定を締結した。

関連団体である日本財団ボランティアサポートセンターは、ボランティアの機運醸成を高めるために積極的なPR活動を実施した。同じく関連団体のJSVNは、ボランティアの育成を目的とした研修を継続的に開催している。

SSFが振り返る2018年総括「世界の目が日本に向いてきた1年」

  2019年のラグビーW杯、20年の東京オリンピック・パラリンピック、21年のワールドマスターズゲームズ関西と国際スポーツイベントが連続で開催される、“ゴールデン・スポーツ・イヤーズ”と言われる3年を目前にして、2018年は世界の目が日本に向いてきた1年だった。訪日外国人の数が上昇を続けていることは、その一つの証と言えるだろう。

  そうした中、各競技で日本の選手たちが目覚ましい活躍を見せた。卓球やバドミントンの選手たちは進境著しく、日本のお家芸たる柔道も強化が進んでいる。これらの理由を探ってみると、競技団体のガバナンスにいきつくのではないだろうか。

  競技団体のガバナンス・コンプライアンスが今年も問題になる中、ガバナンスのしっかりしている競技団体ほど、選手の発掘から育成、強化が効果をあげられているのではないかと考えられる。人口減少という社会背景もあり、今後もさらなる競技団体の努力が求められることになりそうだ。

  国のスポーツ政策に目を向けると、スポーツ庁が発足3年目でさらに重要な役割を果たしている。運動部活動のガイドライン作成は、スポーツ庁だからこその成果と言えるだろう。部活動においては長時間練習をはじめ、さまざまな問題が指摘されながら、なかなか解決の道筋をつけられずにいた。今回は課題がテーブルに乗り、議論が進んでガイドラインの作成につながった。

  来春スタートする日本版NCAA「UNIVAS」も、スポーツ庁の指導力によるところが大きい。大学スポーツの優良コンテンツを作って産業化を図るという目的を達成するのは簡単ではないが、「UNIVAS」という旗が挙がったことで、学生アスリートの安心と安全を確保し、学業との両立も促されることが期待される。

  2020年東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集が始まり、大会ボランティアの応募が予定数を超え、ラグビーW杯では史上最多となるボランティアの応募があった。スポーツボランティアへの関心が高まった1年だったと言えるだろう。長くスポーツボランティアにかかわってきたSSFは2019年のラグビーW杯、21年のワールドマスターズゲームズ関西の組織委員会と協定を結んでおり(2020年東京大会は、日本財団ボランティアサポートセンター)、今後はボランティア教育などを通じ、大会の成功とスポーツボランティア文化の醸成に力を尽くしていく。

  2019年はいよいよゴールデン・スポーツ・イヤーズが本番を迎え、国際スポーツ・フォー・オール協議会(TAFISA)によるワールドコングレスが日本で開催される。またとない契機を迎え、スポーツ・フォー・オールとゴールデン・スポーツ・イヤーズが強く結び付く1年になることに期待したい。

笹川スポーツ財団 理事長 渡邉一利

笹川スポーツ財団 理事長
渡邉一利

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