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笹川スポーツ財団 シンポジウム「日本のスポーツガバナンスを考える」

基調講演 「我が国のスポーツガバナンスの向上に向けて」

4.今後の我が国のスポーツの発展に向けて

3つめに、「今後の我が国のスポーツの発展に向けて」でございます。オリンピックの根本原則を定めるオリンピック憲章は、スポーツにおけるいかなる形の暴力も否定しており、コーチや選手によるフェアプレーと非暴力の精神の尊重とともに、そのためにしかるべく行動をしなければならないことを定めております。この考え方は、先ほどご紹介したスポーツにおける暴力根絶やガバナンスにも共通するものと考えております。

また、「スポーツ基本法」もスポーツが心身の健全な発達に資するものであること、他者を尊重する精神や公正さと規律を尊ぶ態度を育むなど、人格形成に大きな影響を及ぼすものであることをスポーツの理念として示しております。こうした考えは、オリンピック憲章と共通するものです。

また、このオリンピック憲章の考え方は、わが国の武道等の「道」の考えにも相通ずるものだと思います。本年3月にIOCの評価委員のメンバーが東京に来られたときに、ウルグアイの委員の方から「スポーツを「人の道」にまで昇華する思想を有するのは、世界の中でも日本だけではないか」、「そのことを日本は積極的に発信し、スポーツ振興のトップに立っていくべきだ」ということを言われました。

その方は日本の武道を大変高く評価されており、「柔道、剣道、あるいは空手道などといわれるように、それぞれの武術を通じて人間としても一流の研さんを積むというのは、これは日本ならではの考え方である。」とおっしゃいました。また、「こうした『道』の考え方は、まさにオリンピック憲章そのものにつながるものである。だからこそ是非日本から、世界のあらゆるスポーツ選手に対して、スポーツを通じた人間としての完成を目指すということを発信してほしい」ということも指摘されました。私もその通りであると思います。

今回の女子柔道の指導者による暴力事案、それはまさにわが国のスポーツ界の「史上最大の危機」です。これは女子柔道界だけの問題ではありませんので、このまま何となくうやむやのうちに終わりにしてしまうのではなく、ピンチをチャンスに変えて、むしろ今申し上げましたように、わが国からオリンピック憲章の理念を発信していくことが求められているかと思います。

旧来のスポーツ界では「愛の鞭」という言葉が存在し、実際にそれが指導者と選手の間で通じるような時代もあったかもしれません。しかし現在、世の中がさらに複雑化し、コミュニケーション能力が基本的に不足している、あるいは非常に稚拙になっています。指導者は以前と変わらないつもりで指導していても、選手のほうから見ると、「愛の鞭」とは受け入れられない。旧来のような手法が、若い人になればなるほど通用しなくなっているということを指導者自らが理解し、全面的に意識改革していかなければ、日本だけが世界の中で遅れてしまいます。また、それだけではなく、若い世代から「スポーツというのは野蛮なものである」と捉えられてしまうと考えます。

わが国から本来のオリンピズムの精神に新たな息吹を注ぎ込むことができるよう、今後、国・スポーツ界が協力して取り組んでいくことが必要と思います。本日お集まりのスポーツ団体の皆様方にもご協力をお願い申し上げたいと思います。

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