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パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる」

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」の第1部では、パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる?」を開催した。登壇いただいた友近氏、増田氏、中竹氏からは、それぞれの視点でスポーツ基本法そして日本における今後のスポーツのあるべき姿を述べていただいた。

6 生涯を通じてスポーツを継続するのが難しいといわれている、その原因とは?

質問者:

先ほど友近さんから、日本のスポーツは大学生ぐらいまでスポーツをやって、そのあとはしないというお話がありましたが、その原因は何だと思いますか?また、スポーツを続けるためには、どのようなことをしたら良いのか皆さんからお聞きしたいと思います。

中竹:

私はイギリスにいたのですが、イギリスと比較すると日本ではスポーツの環境が限られています。具体的には、スポーツ施設の数や、スポーツ施設があってもそれを利用するソフト面においてです。もうひとつの原因は、スポーツ施設が十分あり、施設を使える場面であっても、今の日本の働き方だったらできないんですよ。残業がありますよね。

日本に来たくないという海外のビジネスマンはとても多いです。朝から晩まで働いているイメージがあるので。そのあとの飲み会がすごく長くて、飲み会も全部含めてビジネスなんだといわれるわけです。そう考えると、スポーツのことだけを考えても駄目で、働き方を考えないとなりません。しかも、総務省など別の省庁と一緒に考えていかなければなりません。スポーツをしたい人がスポーツをできない理由はたくさんあると思いますが、働き方の文化にも大きな原因があると思います。

増田:

高校生の授業には体育が含まれていますが、大学生になると体育は選択科目になります。そういった状況ですと、スポーツに興味がない人は、スポーツをやらなくなります。ましてや、大学を卒業して就職すると、男性は仕事が忙しくなってきますので、20代、30代というのはスポーツどころではなくなります。女性も子育てなどで忙しくなってきますね。中高年になって健康診断とかで、「お、ちょっと生活習慣病、大丈夫? メタボ、大丈夫?」って切羽詰ってきてまたそこからやり始めるというような流れが、今の日本にはあります。そう考えると、学校を卒業しても、職場や地域でスポーツに気軽に参加できる状況を作ることが必要です。
また、特に女子中学生があまりスポーツをやらなくなり、体力が心配されていますので、これからは統計をしっかりとりながら施策を進めていくのがいいと思います。スポーツは、心と身体の両方を育むという面でも、健康のために良いことなので、推進していければと思います。

友近:

先ほど中竹さんが言われたように、スポーツをとりまく環境、スポーツをできる環境がすごく重要だと思います。私はドイツにいたとき、サッカーの4部のチームと7部のチームに所属していました。元々は高いレベルでプレーしたいと思ってドイツに渡りましたけれど、ある時期に自ら7部のチームに移籍しました。7部のチームというのは、ビール腹のおじさんたちがサッカーをやっているようなチームです。けれども、緑の芝生のフィールドがあり、クラブハウスがあり、シャワーもあります。毎週木曜日には役所の方が芝生の手入れに来て、土曜日と日曜日はスーパーも商店も休みで、子どもたちが親やおじいちゃん、おばあちゃんに手を引かれてそのクラブに集まってきます。ソーセージを焼いてビールを飲んで、試合はとっくに終わってもその輪は解けずに、まさに地域の憩いの場というのがスポーツクラブでした。そういった意味では、日本の働き方というのが非常に問題であると私自身は思っています。

私がドイツから日本へ戻ってきて、成田空港から都内まで移動する電車の中で、くたくたに疲れたサラリーマンが、ネクタイのほどけそうな姿で酔っぱらって寝ていた光景を見て、果たして日本は本当に幸せな国なのかと疑問を持ちました。私がスポーツクラブにいたとき、ドイツ人は「トモ、今日は6時から家族と食事をしなくちゃいけないから帰るよ」と言ってさっと帰ったりしていました。4部のクラブに所属していたときは、みんな仕事を持ちながらも6時にはきっちり集まって練習していました。ワークライフバランスがとれていたのです。日本人自身もワークライフバランスについて考えなければなりません。これは国の責任があると思っています。

スポーツ関連施設に関して言うと、私は欧米の総合型スポーツクラブをそのまま日本に持ってきても、日本の文化にはマッチしないと思います。学校体育で育ってきた馴染みがありますので、学校というものをひとつの核として、例えば学校の空き教室を利用しておじいちゃん、おばあちゃんたちが囲碁をやったり、裁縫教室をやったり、料理教室をやったりして、地域の拠点になるような活動が必要ではないかと思います。人口減少とかドーナツ化現象があり、都市部でも廃校になったり、あるいは過疎のところも施設を持て余したりしてますので、そういったところを地域の拠点として有効に活用していくということが、私は大きく意味があることじゃないかなと思います。

国では、学校施設をスポーツ施設としてカウントしていません。学校施設をスポーツ施設としてカウントした場合には、イタリアやドイツの人口当たりのスポーツ施設とほぼ同レベルになるという調査も出ています。そういった働き方の問題、あるいはスポーツをできる環境づくりは、国の大きな課題のひとつであると私自身は思っております。

工藤:

ありがとうございます。最後に、一言コメントをいただきたいと思います。

プロフィール

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組んできた。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、子どもたちの育成に取り組んでいる。

増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。2007年7月には初の小説「カゼヲキル」(講談社刊)を発表。厚生労働省健康大使。

中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)
1996年早稲田大学ラグビー蹴球部主将。卒業後、英国留学にて社会学修士課程修了。2006~09年度、母校ラグビー部の監督を務め、大学選手権優勝2回・準優勝1回。杉並区三谷小学校学校運営協議会初代会長、文部科学省「熟議」委員、内閣府「新しい公共」委員など務める。

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