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パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる」

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」の第1部では、パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる?」を開催した。登壇いただいた友近氏、増田氏、中竹氏からは、それぞれの視点でスポーツ基本法そして日本における今後のスポーツのあるべき姿を述べていただいた。

3 スポーツが好きでない人の意見も取り入れなければ、真の発展はない

中竹:

私はこれまで、地域教育やビジネスに関わっていたので、そういった視点を踏まえながらお話させていただきます。今回のテーマが「これからの日本のスポーツ」ということで、本当に今年が日本のスポーツの元年であると思っています。

人間というのは対極の視点を常に持っていなければなりません。これは、ビジネスでも、科学でも、同じです。これからの日本のスポーツがどうなるのかと考えるならば、これまでのスポーツを、政策そして人々の活動を振り返らなければなりません。それをやって初めてこれから先がどうなるかを考えるべきでしょう。

これから先を考えるとき、ゴール設定が非常に重要です。おそらく法案の中にもたくさんのゴール設定があると思います。ゴール設定、つまり日本のスポーツがどうなるかを考えるとき、さまざまな分野で議論されているのは、イノベーションやコラボレーションではないでしょうか。何を指しているかというと、たぶん今のままでは限界が来ていて、壁を取っ払わないといけないということです。これはスポーツ界だけではなく、教育界、政治、マスコミも全てそうなんです。世界がそういう流れに直面しているといえます。

今日お集まりいただいた皆さまの中で、スポーツが好きで、スポーツの価値を認めている方ってどれくらいいらっしゃいますか?ほとんど全員ではないでしょうか。いや自分はスポーツが大嫌いで、スポーツなんて消えちまえって思っている方は、どれぐらいいますか?ゼロですよね。おそらく、今後のスポーツの発展を考えるとき、こういったシンポジウムに半分はスポーツをやったことがない人、スポーツが嫌いな人を、呼ぶべきだと思います。そうでなければ、発展はありません。たぶんこの先もずっと同じ顔ぶれで、「お、また会いましたね」みたいな感じだと思うのです。そうではなくて、我々と同じような感覚の人がマイノリティで、スポーツなんか嫌だよ、本当に学校の体育が嫌だった、もう二度とやりたくない、息子にもさせない、娘にもさせないという人の方が多いわけです。我々は特殊なんです。特殊な人たちが特殊の中でスポーツを語っていても、スポーツをする人が増えることはありません。ですから、スポーツから離れた視点を導入しなければなりません。スポーツから離れた視点を持ってくるというのは、全く具体的ではありませんが、具体的にいいますとスポーツを嫌いな人を呼んで話をするとか、ここに登壇させるとか、そういうことを具体的にしなければ、たぶんずっと同じことを繰り返すだけではないかと思います。これからのスポーツを考えるのであれば、こういったシンポジウムや会議がスポーツを大好きな人たちで固められるのはいかがなものかと思います。その中での反響は素晴らしいかもしれませんが。

スポーツを心の底から嫌いな人はたくさんいます。僕は、そういう人にいっぱい会ったことがあります。本当に申し訳ないんですけども、僕も基本的にあまりスポーツが好きではありません。嫌いではないですよ、もちろん。スポーツは素晴らしいと思っていますが、スポーツ界で嫌な思いを本当にしてきました。ああこれがスポーツ界の嫌な部分だなというのを、またもう思い出したくないくらいのことも感じてきました。

スポーツの良さは何かというのを、皆さんはたぶん体験されています。なぜスポーツがいいのかということを。マンデラ大統領も名言を残していますが、では具体的にはなんなのかと考えたときに、実はなかなか出てこないのです。目の前にいるスポーツが大嫌いな人に、1時間かけてスポーツの良さを伝えてみてくださいといっても、できないのです。「だって良いんだ」で終わるのです。やってみれば分かるんですけども、そういうものなのです。我々スポーツ界としては、素晴らしさを言えなければなりません。その場で体験させなければなりません。そのスキームを作るうえでの支えになるのがスポーツ基本法だと思います。権利について触れていますから。

僕がビジネスフィールドですごくもったいないなあと感じたことは、スポーツ界の古くからのノウハウであり、スポーツ界の一番の財産をスポーツ界は手放しているということです。それは、コーチングです。この中でコーチの方、指導者の方はどれくらいいらっしゃいますか?ちょっと手を挙げていただいてもよろしいでしょうか?ありがとうございます。コーチングというとビジネスコーチング、エグゼクティブコーチングであり、この分野では圧倒的にノウハウが蓄積されています。そのコーチングには多くの対価が支払われています。今、エグゼクティブのビジネスコーチングは、電話がメインですが、桁が3つくらい違います。1億円ぐらい稼いでるコーチが世界中に山ほどいます。スポーツ界ではコーチングを言語化しなかった。スポーツ界が持っているメソッドを、ビジネス界はうまくフレームワークとして形づくり、ビジネスコーチの世界は一気に市場としてのし上がってきました。

もちろんビジネスフィールドのコーチングの中には、スポーツと違う部分がありますが、かなりオーバーラップすることもあります。例えばチームスポーツでは、チームが勝つためにプランニングをします。例えばヨットだったら、次のレース頑張るぞと気合を入れるだけではなく、作戦を練ります。細かくいうと、戦略を立てて、戦術を立てて、技術を磨き、動作を整えるという4つの段階に分かれます。それを、練習し、努力する。これはビジネスも同じです。要するに、チームがゴールを達成するための切り分け方も、圧倒的にビジネスフィールドのほうが長けています。

そんな風に、スポーツフィールドには整理しないままのノウハウがたくさんあります。ではこれから、スポーツ界だけで作り上げるのかというとそうではなくて、せっかく他でやっているノウハウがあるのだから、そういう人たちと一緒にやっていくことが必要です。チームを強くするためには練習をするのですが、もしかすると今後はスポーツと全然関係がない、例えばオーケストラを鑑賞したり、料理を作ったり、そういうスポーツと全く関係ないことが、選手育成やチームビルディングになる、そしてそれが当たり前になるというのが、数年後にやってくると思います。他のビジネスでは、よく研修とかってありますね。今、研修では料理教室やスポーツ、オーケストラ鑑賞などが非常に流行です。このように、壁を越えなければ、スポーツの先はないと思います。少し勇気が必要なことではあります。

僕は今の仕事上、世界各地を訪れています。イギリスはラグビーの発祥の地ですが、イギリスのラグビー協会は本当に素晴らしいオフィスでした。優秀なスタッフが多く働いているのですが、スタッフの半分以上はラグビー未経験者です。さらに、約半数が女性です。スタッフはマネジメントを行っているのです。日本ではやはり、統轄団体を含めたスポーツ関連組織は、スポーツをやっていた人が運営しています。しかし、イベントを企画したり、人を指導したりするときに、スポーツは関係がないのです。ベースも専門性も同じなので、マーケティング、広報、プロモーションや人材の育成に関しては、スポーツの特化性が必要ないのです。だからこそ、スポーツに思い入れがあって、今後もスポーツ界に関わりたいという人は、スポーツとは全く切り離したマネジメントなどの勉強をして、その分野でのプロフェッショナルを目指さなければ、日本のスポーツの発展に貢献はできません。

友近さんも増田さんもご紹介された、文部科学省のスポーツコミュニティの形成促進施策は非常に良いと思いますが、一点注意が必要なのは、スポーツを終えたトップアスリートがいきなりコーチになって教え始めるということです。お手本は彼らにしかできませんが、スポーツをやることと教えることはまったく別物です。コーチングは、プレイングとはまったく別物と思った方がよいでしょう。そうなると、この仕組みは非常に良いのですが、アスリートが引退する前にちゃんとコーチングを学ばせる場を作る必要があります。その仕組みや環境を整えなければ、子どもたちのフォローが、ただ見るだけ、やってることを教わるだけになり、成長の伸びしろがなくなるのではないかと思います。
僕の意見は非常にネガティブで客観的ですが、スポーツに携わる人間としてスポーツには本当に発展してほしいと思います。皆さんのように思い入れの強い方に、今までにない視点、壁を壊す視点を持っていただければと思います。

工藤:

ありがとうございました。もともとパネルディスカッションというのは、いろいろな立場の人がテーマについて意見を交わし合わせるということですので、そういった意味ではいろんなご意見が出たかと思います。
3名の方に直接いろいろご意見を伺えるのは今日ぐらいしかございませんので、フロアのほうからのご質問を受けたいと思います

プロフィール

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組んできた。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、子どもたちの育成に取り組んでいる。

増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。2007年7月には初の小説「カゼヲキル」(講談社刊)を発表。厚生労働省健康大使。

中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)
1996年早稲田大学ラグビー蹴球部主将。卒業後、英国留学にて社会学修士課程修了。2006~09年度、母校ラグビー部の監督を務め、大学選手権優勝2回・準優勝1回。杉並区三谷小学校学校運営協議会初代会長、文部科学省「熟議」委員、内閣府「新しい公共」委員など務める。

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