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パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる」

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」の第1部では、パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる?」を開催した。登壇いただいた友近氏、増田氏、中竹氏からは、それぞれの視点でスポーツ基本法そして日本における今後のスポーツのあるべき姿を述べていただいた。

2 わが国のスポーツにおける“好循環”をどのように生むべきか

増田:

スポーツ基本法が制定されたことは、大変喜ばしいことです。スポーツ基本法を活かしてこれから何ができるだろうかと考える、スタートラインに立ったのではないかと思います。先ほどから、キーワードに「好循環」という言葉が出ていますので、これまで私が感じた好循環がうまくいっていないと思われる例を3つほど挙げながらお話させていただきます。

友近さんのお話にありましたように、まずはじめは競技スポーツと健康スポーツの循環を考えます。引退した選手たちは、地域貢献したい、地元に戻って子どもたちに指導したいという気持ちを持っています。ところが、総合型地域スポーツクラブが全国にありますが、そこでオリンピックや世界選手権を経験した選手たちが指導できるかといったら、決してそうではないのです。たまに教育委員会に招かれて、選手たちが教えるケースがあります。「どのくらいで行ったの?」と聞くと、交通費を入れて2万円とか、3万円とかというお話を聞きます。それが今紹介されました、文部科学省で出されたスポーツコミュニティの形成促進では、トップアスリートやアシスタントコーチが月に8回の派遣で、トップアスリートが行くと25万円、アシスタントコーチが行くと17万円というふうに、とてもいい方向に向かっています。それは選手たちの引退後のためだけではなくて、地域の子どもたちにとっても、スポーツで良い結果を残してきた人たちが、引退直後に現役時代の余韻を残しながら教えてくれるという点で、一流の感性に触れるよい機会なのです。

私は競技を引退して26年くらい経ちますが、今でもときどき地域の小学校を訪ねます。先生は子どもたちに、「この人はね、昔オリンピックの選手だったんだよ」と紹介してくださいます。しかし、元オリンピック選手よりも、今まさに旬の選手が求められています。競技の監督や選手たちからは、「増田明美」じゃなくて「豚田明美」って言われますけど、その通り、今はトップアスリートのスピードを見せてあげることができないのです。今後スポーツ基本法により、競技スポーツと健康スポーツが「好循環」を図っていくことはとても素晴らしいことだと思います。

循環させたいことのもうひとつは、健常者のスポーツと障がい者のスポーツです。韓国では、障がい者スポーツと健常者スポーツ、オリンピアンとパラリンピアンが、同じ施設の中で練習をします。そのことが、相乗効果を生んでいます。お互いに交流を図りながら、お互いに刺激し合って競技力を伸ばしていく、ということなども図られているのです。スポーツ関連の予算が出る中で、このような施設の充実と、そこの垣根を取ることで、お互いによい循環ができればいいなと思います。

今、東京マラソンがすごく人気で、3万5,000人しか出場できないにもかかわらず、30万人以上の方々が応募します。今年の東京マラソンの招待選手の記者会見は、去年東京マラソンで優勝した男女車椅子の選手から始まりました。私たち取材陣はいろいろな質問をしました。そうしましたら、瀬古利彦さんという陸上界の華と呼ばれる、とても面白くてダジャレ好きな方が、質問しました。「土田さん、山本さん、あなたたち去年も車椅子の部で優勝しましたが、去年の優勝賞金の200万円は何に使ったの?」って聞きました。その途端、会場がクスクス、ざわざわ。お二人ともぽかんとしていました。瀬古さんは、去年の優勝賞金の20万円を200万円と間違えて読んでしまったのです。関係者が、「違いますよ、20万円ですよ」って言ったら、「えっ!なんだ、駄目だよそんなんじゃ。男子と女子の優勝者には800万円も出していて、車椅子の部門が20万円じゃ駄目だよ」とおっしゃったのです。賞金にしても施設の整備などにしても環境の違いは大きいのです。健常者のスポーツと障がい者のスポーツの好循環を、もっと図っていただきたいと思います。

3つ目の私が考える循環は、女性の登用による「好循環」です。多くの競技団体がありますが、中央競技団体の役員になる女性の割合は5%です。競技者の男女比率に対して、スポーツ団体には女性の幹部が少ないと思います。

私は、2000年から6年間、日本陸上競技連盟で山下佐知子さんと一緒に理事をさせていただきました。6年経って、やっといろんなことが分かってきたかなという頃にクビになりました。そのときに会長さんが、「これからは女性の枠は二人と決めて、いろいろな方々に経験してもらいたい」とおっしゃいました。次は誰がやるのかなと思っていたら、有森裕子さんと曽根さんという、経験も知性も素晴らしいお二人が就任しました。しかし、このお二人も2年しかされなかった。二つの椅子をどんどん変えていくんですね。今のところ、女性を増やそうという考えは感じられませんね。これは他の競技団体でも言えるのではないでしょうか。
女性の競技人口が増える中、これからは女性ならではの視点が大事だと思います。やはり、女性の登用による好循環も追い求めていきたいと思います。どうもありがとうございました。

プロフィール

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組んできた。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、子どもたちの育成に取り組んでいる。

増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。2007年7月には初の小説「カゼヲキル」(講談社刊)を発表。厚生労働省健康大使。

中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)
1996年早稲田大学ラグビー蹴球部主将。卒業後、英国留学にて社会学修士課程修了。2006~09年度、母校ラグビー部の監督を務め、大学選手権優勝2回・準優勝1回。杉並区三谷小学校学校運営協議会初代会長、文部科学省「熟議」委員、内閣府「新しい公共」委員など務める。

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