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パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる」

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」の第1部では、パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる?」を開催した。登壇いただいた友近氏、増田氏、中竹氏からは、それぞれの視点でスポーツ基本法そして日本における今後のスポーツのあるべき姿を述べていただいた。

パネリスト

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)

コーディネーター

工藤保子(笹川スポーツ財団)

1 スポーツ基本法3つの柱は、1.国の責務、2.スポーツ権、3.スポーツ庁

友近:

まずはこのようにたくさんの皆さまがスポーツの政策に関心を持たれ、またスポーツというものにすごく興味を示され、この会場にお集まりくださいましたことに対し、改めて私のほうからも感謝の気持ちを表したいと思います。今年は、笹川スポーツ財団の20周年、そして日本体育協会の100周年になります。さらに、スポーツ振興法が制定されて50年ということで、本当に節目の年です。このような機会で、このような場で、皆さんとともに勉強させていただく機会を設けさせていただいたことに改めてスポーツマンとして幸福を感じています。

今日は私自身も皆さまと一緒に勉強させていただきたい、そんな気持ちで参りました。私の方からは、スポーツ基本法に向けての思いや、基本法の内容について少し触れさせていただきたいと思っております。

まずはじめに、皆さまにお伺いしたいことがございます。ご存知の方は答えないでいただきたいのですが、今、日本にスポーツに関する法律というものがいったい何本あるかというのを皆さまに聞いてみたいと思います。私がおたずねしますので、ぜひお手を挙げていただきたいと思います。10本以上あるんじゃないかなという方、ぜひ挙手をお願いします。いらっしゃらないですか?じゃあ8本ぐらいはあるんじゃなかという方。次に、5本以上という方。3本という方。最後に3本以下じゃないかなという方は?はい、ありがとうございます。一番多かったのはたぶん、3本以下でしょうか。その方が一番多かったと思いますが、答えは、スポーツに関する法律というのは今2本しかありません。今回、可決されました「スポーツ基本法」がひとつ。そして皆さんもきっとお求めになられていると思います、サッカーくじtotoの法律、「スポーツ振興投票法」というのがひとつございます。

今年の6月17日、スポーツ基本法が全面改正されて可決されました。ちょうど50年前の6月16日にスポーツ振興法が可決したという記録が残っていますので、まさに50年の役目を終えまして、新しいスポーツ基本法が可決されたというような、運命的な歴史を私は感じました。

スポーツ基本法の中には、前文というものがございます。教育基本法などにしか、前文というものはないのですが、スポーツ基本法には前文があるのです。その中には、このように書かれています。「スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与するものである」。そしてもうひとつ、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、すべての人々の権利である」とはっきりと書かれています。

私は、スポーツが持つ力によって、地域が活性化して絆が結ばれる、あるいは人と人とがつながっていくということを、ぜひとも日本に浸透させたいという思いで、議員になりました。まさにこの前文には、さまざまな議員のそうした思い、あるいは国民の皆さまの思いが込められているのです。

南アフリカのアパルトヘイトを撤廃に導いた、元大統領のネルソン・マンデラさんという方がいらっしゃいます。その方が主役の、ラグビーをテーマにした『インビクタス』という映画がございます。その中で、スポーツについてこのように言っております。「スポーツには世界を変える力があります。人々を鼓舞し、団結させる力があります。人種の壁を取り除くことにかけては政府も敵いません」。このようなことを、マンデラさんは述べました。ぜひとも、こういった思いがこめられたスポーツ基本法を、皆さまとともに育てていかなければならない、というのが私の思いです。スポーツ基本法は、今ねじれ国会といわれている中で、超党派の全会一致で可決された法案です。そういった意味でも、スポーツの力というのを改めて感じることができます。まさに、ゴールではなくスタートを切ったという印象を持っていますので、これからまたさらに皆さまと議論を深めていきたいと思います。

ここで、スポーツ基本法の柱ともいうべき部分をいくつかご紹介させていたきます。まずひとつ目は、国の責務が明確に記されているという点です。財政面や税制優遇の措置について、さらには国際大会での政府の財務保証などが盛り込まれております。さらに、スポーツ権についても述べられています。私自身、このスポーツ権については、憲法13条の幸福の追求権から導き出されていると考えています。スポーツ権は、ユネスコの体育スポーツ国際憲章においては1978年に定められています。新ヨーロッパスポーツ憲章の中でも触れられています。遅ればせながら、日本でもスポーツ権を可決させていただいたことは、大きな意義があると私は思っています。

続いて、スポーツ庁のことについて。スポーツ庁については、条文の中に盛り込むことができませんでしたが、付則の中で触れています。さらには、障がい者スポーツについて、改めて明記をさせていただきました。加えて、紛争を仲裁する機関を支援するということが明記されています。あるいは、ガバナンスの問題、各スポーツ団体の組織面の透明化の確保などが盛り込まれている、というのが特徴です。また、このスポーツ基本法の中には盛り込まれていないのですが、当初、民主党案もございまして、その中に盛り込まれていたものを簡単にご紹介させていただきます。

サッカーくじtotoの助成について国民に深く理解してもらおうという条文が盛り込まれていましたが、残念ながら超党派の議論の中で削除されてしまいました。さらに、スポーツ推進会議というものがございます。これは各省庁、文科省や厚労省、あるいは国交省や総務省、経産省などが寄り合い、スポーツに関する政策を協議するという会議です。民主党案の中では、スポーツ推進協議会という名前で、日本アスリート会議のようにアスリートの皆さん、団体の皆さん、そして現場で活動されている皆さんなどと協議会を設けようという案が盛り込まれていました。残念ながら、少し後退するかたちになりましたが、スポーツ推進会議として条文に盛り込ませていただきました。

今日のディスカッションの中では、好循環というのがひとつの大きなテーマだと思います。増田さんはオリンピアンですが、私は地域のJリーグの選手でしたので、私は自分自身を紹介するときに、ローカルアスリートだと表現しています。基本法には、地域スポーツとトップアスリートの「好循環」という考え方を盛り込めたと思います。

私は、2年弱くらいの間、ドイツで暮らしていました。そこで得た体験というのは、私のスポーツ観、あるいは人生観に大きな影響を与えています。その中で感じたことを皆さんに1点だけ、ご紹介できればと思います。私が感じたヨーロッパにおける競技スポーツは、放物線を描いていると感じました。縦の軸が競技レベル、横の軸が年齢です。皆さんそれぞれのレベルでスポーツを行います。トップアスリートになる人もいれば、生涯スポーツを楽しむ人もいますが、その放物線は緩やかに、そして長いスパンでスポーツをしていく環境にあると感じました。そのような環境を、日本で作らなければならないということも感じました。日本に戻ってきたとき、学校体育や学校スポーツ、あるいは大学卒業後、なかなかスポーツができる環境がないということを、すごく感じています。そういった意味では、放物線が垂直に落ちて、そのあとはスポーツをする機会が非常に乏しくなります。

さらに皆さまに、文部科学省が今年新たに始めた政策をご紹介させていただきます。どういう政策かというと、総合型地域スポーツクラブやNPO法人などに、国が直接支援をして、そこからトップアスリート、あるいはアシスタントコーチ、小学校の体育活動コーディネーターを派遣しようというものです。国のスポーツ予算の228億円のうち、今年度の予算は5.7億円を使う政策です。文部科学省にとっては、すごく画期的な政策だと思います。今回は、全国の9ブロック地区で、モデルケースがスタートしました。公募が締め切りになりましたけれど、これを機に全国300ヵ所程度に広げていく予定です。

私は今36歳ですが、25歳のときにドイツから帰国して、ボランティアでサッカー教室をしています。自分自身でコーディネートをして、団体の皆さんや知り合いのコーチの皆さんからお話しいただき、自分でメニューを考えて、スポーツを通じて子どもたちと触れ合う。オリンピックのアスリートでなくても、私のようなローカルアスリートでも、子どもたちは目をキラキラ輝かせてスポーツを楽しむ、スポーツに触れ合う機会をつくっていると思います。私はこれまでで、のべ1万人以上の子どもたちと触れ合うことができました。こういった活動を、ぜひ皆さまにも実施していただきたいと思います。
Jリーグでは、「夢先生」という授業や、心のプロジェクトを行っています。全国にその夢先生を派遣します。文科省の事業と大きく違う点は、地域のアスリートが、自分の地域で継続的にそういった活動をできるということです。

トップアスリートというのは、決してメダリストではなく、全国大会の出場者、あるいは国体に出場した方々が対象です。まさに、おらが町のヒーローが自分たちの学校にやってくる、という授業です。まだまだ改善の余地はあると思いますが、ぜひこの場を借りまして、皆さまにご紹介させていただきたいと思いました。

今日のシンポジウムをキックオフとして、皆さまのスポーツでもっと豊かな、幸せな日本がつくれるように、私も力を尽くさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

工藤:

ありがとうございました。条文に入らなかった情報などは、新聞にも出てきませんので非常に参考になりました。続きまして、増田明美様のほうからお願いします。

プロフィール

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組んできた。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、子どもたちの育成に取り組んでいる。

増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。2007年7月には初の小説「カゼヲキル」(講談社刊)を発表。厚生労働省健康大使。

中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)
1996年早稲田大学ラグビー蹴球部主将。卒業後、英国留学にて社会学修士課程修了。2006~09年度、母校ラグビー部の監督を務め、大学選手権優勝2回・準優勝1回。杉並区三谷小学校学校運営協議会初代会長、文部科学省「熟議」委員、内閣府「新しい公共」委員など務める。

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