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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる」

2011.07.08

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」開催の様子

笹川スポーツ財団シンポジウム「日本のスポーツのこれからを考える」の第1部では、パネルディスカッション「スポーツ基本法制定後、日本のスポーツはどう変わる?」を開催した。登壇いただいた友近氏、増田氏、中竹氏からは、それぞれの視点でスポーツ基本法そして日本における今後のスポーツのあるべき姿を述べていただいた。

インデックス

5 各地で活動を行っている地域のスポーツクラブに対する議論はあったか?

質問者 私は36年間、ドイツの民間スポーツの統轄団体であるドイツオリンピックスポーツ連盟の青少年部門の事務局に勤務しました。民間スポーツの中心的な団体だったのですが、ドイツのスポーツに関していくぶんか勉強できたと思います。ドイツの人たちは、日本にはスポーツクラブがないという認識を持っています。今回のスポーツ基本法により総合型地域スポーツクラブが設けられ、日本に初めてスポーツクラブができるのだとドイツのスポーツ関係者の人たちは思っています。

パネルディスカッションの様子1

私はドイツで、日本のスポーツについて話をすることがありましたが、そのとき一番疑問に思っていたことは、日本の市民の方たちのスポーツの現状がどうなっているのかということです。日本のスポーツ関係者の人たちに聞きますと、地域のチームやママさんバレーとかそういうようなものだと説明されましたが、実態がどうも分かりませんでした。
ここ4年ほどは日本で生活していまして、東京都狛江市での総合型スポーツクラブの立ち上げに携わりました。そこで知ったのですが、地域の中にはたくさんの少年野球チームや少年サッカーチーム、ゲートボールのグループがあるということです。社会教育団体として登録されているグループの約70%はスポーツ関係団体です。しかし、ドイツと比較すると、これら地域で活動しているグループというものが日本体育協会と連携していないというのが現状です。ドイツでは、2,500~2,600万人の人たちがスポーツクラブの会員として登録されています。
先ほど日本人の場合はある年齢に達するとスポーツの競技量が急激に落ちる、それはスポーツをする場所がないからだというお話がありました。しかし実際には、笹川スポーツ財団の白書によると、スポーツクラブや地域のスポーツクラブでやっているところが、数年前ですでに約37万団体あるというお話を聞きました。今回、新しいスポーツ政策ができて、スポーツの権利を主張する場合、このような団体が忘れ去られているのではないかと不安です。実際に市民が参加している地域スポーツクラブと総合型地域スポーツクラブの立場がどのように捉えられているのか、私は日本のスポーツのこれからを考えると、そのことがすごく不安です。

工藤 ありがとうございます。友近様、法案の中で総合型ではない地域スポーツクラブに関する議論は挙がりましたでしょうか?

パネルディスカッションの様子2

友近 各団体がいろいろなかたちで活動されていますので、地域スポーツクラブを国が責務を負って対応できるのかということに関して、大きな課題があります。国と地方公共団体の役割をすみ分けて考えなければならない、という議論も出てくるかと思います。
私も以前ドイツにいまして、今思うのは日本のスポーツと体育というものがごちゃ混ぜになって考えられているということです。ただ最近私自身は、これを日本のスポーツ文化のひとつとして捉えるべきだと思っています。この部分をひも解いていかなければ、なかなか解決できないと思います。
スポーツ庁を作るときに、ではスポーツ庁にはどの団体が属するのかということが大変大きな課題になります。例えば、相撲もスポーツ庁の中に入るのかということです。相撲というのはもともと神事として五穀豊穣を祈るために始まりました。しかし、スポーツ新聞の一面を飾っています。そういった意味では、日本人にとってスポーツとは一体なんなのか、あるいは体育とは何か、ということをきちんと整理しなければなりません。その延長に、今ご質問にありました総合型地域スポーツクラブ、あるいは日本の学校体育、市民団体のスポーツクラブの活動というものの方向性をきちんと示さなければならないと、私も同じ問題意識を持っています。
スポーツ基本法が成立しましたけれど、これはあくまで国家的な法案です。スポーツ基本計画を具体的な施策として、今年度を目標に策定していくのですがその中でもそういったご意見をぜひ聞かせてていただきたいと考えています。

プロフィール

友近聡朗氏(参議院議員 民主党スポーツ議員連盟事務局長)
早稲田大学人間科学部卒業後、ドイツへサッカー留学。2001年に愛媛FCに入団、主将としてチームを率いJリーグ昇格へ貢献。2007年7月に参議院議員初当選。以来、「スポーツ基本法」の策定に取り組んできた。また、現在も地域でサッカー教室を開催し、子どもたちの育成に取り組んでいる。

増田明美氏(スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授)
成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。2007年7月には初の小説「カゼヲキル」(講談社刊)を発表。厚生労働省健康大使。

中竹竜二氏(財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)
1996年早稲田大学ラグビー蹴球部主将。卒業後、英国留学にて社会学修士課程修了。2006~09年度、母校ラグビー部の監督を務め、大学選手権優勝2回・準優勝1回。杉並区三谷小学校学校運営協議会初代会長、文部科学省「熟議」委員、内閣府「新しい公共」委員など務める。