第3期スポーツ基本計画では、障害者のスポーツ実施率の目標を「週1回以上=40%程度(若年層は50%程度)」「年1回以上=70%程度(若年層は80%程度)」と定めています。令和4年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」の(スポーツ庁)では、20歳以上の運動・スポーツ実施率は、週1回以上では30.9%、年1回以上では54.1%でした。
障害者がスポーツ等に無関心であること、指導者不足、施設のバリアフリー整備などさまざまな課題が考えられます。しかし、「運動・スポーツをやりたい」と思った時に、実際にできる場所がないことが大きな課題・問題点と言えます。
笹川スポーツ財団の調査では、2021年度『障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究(抜粋版)』で、障害者が専用もしくは優先で運動・スポーツをできる施設は、全国に150あることをが分かっています。この調査は2010年から実施しており、施設数は、2010年:116、2012年:114、2015年:139、2018年:141と増加傾向にあります。
しかし、国内の障害者数は、身体障害児・者:約436万人、知的障害児・者:約109万人、精神障害者:約419万人、合計約964万人です(内閣府「令和4年版 障害者白書」)。指導者不足も含め、地域差はあるにせよ、障害児・者がスポーツをする際、十分に対応できる体制とマンパワーが整備されているとは言い難い状況で、障害者の運動・スポーツをする場、受け皿が不足しています。
障害者専用・優先スポーツ施設の行政の所管部署をみると、「障害福祉・社会福祉関連部署」が79.1%と最も多く、ついで「首長部局のスポーツ担当部署」の9.1%でした。「その他」には、勤労福祉関連部署、医療保健関連部署、文化財管理部署、社会教育部署(公民館)などがあります。
2015年10月にスポーツ庁が設置されて以降、スポーツ担当部署が障害者スポーツも所管する自治体が増えていますが、障害者専用・優先スポーツ施設の所管部署は、約8割が「障害福祉・社会福祉関連部署」です。障害者のスポーツ振興をスポーツ行政が担っていながら、障害者専用・優先スポーツ施設の多くを「障害福祉・社会福祉関連部署」が所管している現状を鑑みると、双方の連携を十分にとり障害者スポーツ普及を推進する必要があります。
障害者が日常生活で気軽に運動・スポーツを楽しめる環境が整備されていない課題をどう解消するのか?施設を新しく建てるのは現実的ではありません。障害児・者が、いつでもどこでもスポーツできる環境を整えるために、地域の障害者スポーツセンターなどの障害者専用・優先スポーツ施設が拠点となり、行政、近隣の公共スポーツ施設とネットワーク化を進め、障害者のスポーツ参加の受け皿(機会)を増やすことを提言しています。
▼ハブ施設:都道府県単位で障害者スポーツの拠点(ハブ)として機能する障害者スポーツセンター
▼サテライト施設:地域の障害者専用・優先スポーツ施設や公共スポーツ施設
▼地域のその他社会資源:ハブ・サテライト施設以外で、公民館や福祉施設など障害者のスポーツの場となる施設
笹川スポーツ財団では、「障害児・者の運動・スポーツの日常化」に向けて、国内の障害者スポーツ環境の調査・研究を行っています。また、障害者スポーツを推進する外部団体と共同実践研究も実施(東京都障害者スポーツ協会や大分県障がい者スポーツ協会)。日頃の調査、実践研究から得た結果を、政策提言として発表しています。