- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
公益財団法人 笹川スポーツ財団 理事長
渡邉 一利
コロナ禍は"孤立"と"心身の二次被害"を顕在化させました。その後もグローバル情勢から少子高齢化に起因する地域課題まで難問が山積しており、私たちは、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な幸福感)の大切さをこれまでになく強く感じる時代を生きています。
笹川スポーツ財団(SSF)は設立以来、"Sport for Everyone社会"すなわち年齢や国籍、障がいの有無を越えて誰もがスポーツに触れ、楽しみ、ささえ合える社会の実現を目指して活動してきました。スポーツは身体活動を通して心身の健康を増進するだけではなく、本来の感受性を解き放ち、感情を共有することで人とつながり、まさにウェルビーイングを促進する力を持っています。私たちはスポーツを「する」「みる」「ささえる」その全ての入り口を、陰ながらささえてきました。
1992年から国内のスポーツ活動の実施状況を把握する「スポーツライフに関する調査」を行い、数少ない実査データとして高い信頼を得ています。また、1996年から「スポーツ白書」を継続して刊行しており、スポーツの現状と課題を把握する貴重な資料となっています。近年は行動するスポーツシンクタンクとして、確固たるエビデンスをもとに自治体連携や政策提言などに取り組み、ウェルビーイングを実現する"ハブ"になろうとしています。
2024年度からは「アクティブシティ推進事業」をスタートしました。少子高齢化や医療費負担、共生社会の実現といった課題に対し、スポーツを核にしたまちづくりによる解決策を伴走型で共創するものです。SSFの知見と地域ごとのニーズをすり合わせながら、5年、10年のスパンで成果を出し、長期的に各地で事業サイクルが自走し続ける仕組みを確立していきます。
SSFは決して大規模組織ではありません。だからこそ"Small but Excellent Foundation"(小さくても卓越した財団)として、調査・研究、自治体連携などアウトプットの質・量を継続的に高め、社会から信頼していただくことが今後の基盤になると捉えています。その上で国内外のスポーツ組織・アカデミア・産業界をまたいだネットワークをより強固にしながら、スポーツ政策形成への参画や、自然科学・疫学・ビジネス分野の研究者との融合を図り、エビデンスにもとづく政策提言(EBPM)とソーシャル・イノベーションを同時に推進できる体制を強化していきます。
人口構造の変化や多文化共生が加速するなかで、誰もがウェルビーイングを実現できる社会を築いていくために──。SSFは"Sport for Everyone社会"の実現を通して、人・地域・社会を元気にしていきます。
2025年5月