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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

共同実践研究:大分県障がい者スポーツ協会 【SSF地域スポーツイノベーター(障害者スポーツ)】

大分県障がい者スポーツ協会との取り組みまでの経緯

SSF政策提言2017・障害者スポーツ

障害の有無にかかわらず、誰もがスポーツに参加できる共生社会を実現するには?

笹川スポーツ財団は、障害者スポーツにかかわる「政策提言2017」を発表しました。障害者がスポーツに参加しやすい社会をつくるためには、地域(都道府県・政令指定都市)の障害者スポーツ協会を中核とし、「医療」「リハビリテーション」「学校教育」「福祉」の各分野で連携・協働することが、障害者がスポーツに接する機会を創出することにつながるという内容です。

各分野における障害者のスポーツ指導にかかわる人材育成、そして、この人材が、地域のスポーツ行政・福祉行政や地元企業など、多くのステークホルダーと連携・協働することで、学校や病院など、どのライフステージにおいてもスポーツに接する機会が創出されます。障害者スポーツ環境整備に加え、障害当事者やその家族へのスポーツの理解を促進することで、共生社会実現に近づくと考えています。

図表:障害児・者がいつでもスポーツに接することができる連携体制図

Regional Sport Management Organization; RSMO

▶ SSF政策提言2017「障害者スポーツ」

大分県障がい者スポーツ協会との連携協定

■地域の障害者スポーツ協会の現状

政策提言2017の実現において、地域の障害者スポーツ協会を中核とした各分野との連携・協働が重要であることを発表しましたが、SSFと日本障がい者スポーツ協会で共同研究を実施した際、地域の団体・組織との連携が進みにくい理由として、協会の限られた人員と予算の中では、多くの既存事業に時間が取られ、新たな事業に取り組む余裕がないことが明らかとなりました。

平成29年度 スポーツ庁 『障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究』

■政策提言2017実現に向けて

この問題を解決し、また、政策提言実現のために、協働する地域の障害者スポーツ協会を対象に「SSF地域スポーツイノベーター」を配置し、地域の障害者スポーツ環境の充実を図る取組みを推進することとなりました。SSF地域スポーツイノベーターが中心となり、各分野のステークホルダーと連携・協働していくことになります。

そして、20185月に多数の候補先から、大分県障がい者体育協会を配置先に決定。「地域スポーツイノベーター(障害者スポーツ)」協定を締結し、SSFと大分県障がい者体育協会(当時、現在の大分県障がい者スポーツ協会)の共同実践研究として、20213月まで多くの事業を展開しました。

協定式(2018年5月)はこちら

【注目情報】

SSF地域スポーツイノベーター(障害者スポーツ)概要

実践研究の目的や課題など

■目的

SSF政策提言2017「障害者スポーツ」の実現には、地域のスポーツ現場で活動する組織や地方自治体の協力が不可欠であり、その理念に共感いただいた大分県障がい者スポーツ協会と連携協定を締結し、「SSFとともに地域スポーツの将来像を形成する」ことが目的となります。

地域の障がい者スポーツ協会が抱える課題に対して、大分県障がい者スポーツ協会内に「SSF地域スポーツイノベーター(障害者スポーツ)」を配置(任命、財政支援はSSF)し、障害者スポーツ環境の充実を図る新たな取組みを推進しました。(参照 図表:障害児・者がいつでもスポーツに接することができる連携体制図

■内容

障害者・児がいつでもスポーツに参加できる環境づくりのために、大分県障がい者スポーツ協会が中心となり、行政、福祉、医療、学校、企業などさまざまなステークホルダーと連携。2018年度~2020年度にかけて、ネットワークの構築、障害者スポーツの理解促進、運動・スポーツの機会(参加)充実など、SSF地域スポーツイノベーターを中心に多くの事業を実施しました。

SSFの役割

SSF地域スポーツイノベーターの任命・財政的支援、障害者スポーツに関する国内外の情報、エビデンスの提供、アンケート調査の設計、データ分析などで支援を行いました。

SSF地域スポーツイノベーター

鶴岡美空氏

鶴岡美空氏

障害者支援施設にて5年間、介護員を務める。国民体育大会バドミントン大分県代表として活躍した。保有資格は、日本障がい者スポーツ協会公認「中級障がい者スポーツ指導員」、中学校・高等学校教諭一種免許(保健体育)など。

SSF地域スポーツイノベーターとステークホルダーとの連携

■ステークホルダーの考え方

事業は2018年度~2020年度にかけて実施しました。3年間で実現を目指す中期的な計画として、障害者の多様なニーズに対応できる連携・協働体制の構築に向けて、SSF地域スポーツイノベーターが調整するなかで、全ステークホルダーにアプローチするのは現実的ではないと判断し、以下のステークホルダーを中心にネットワーク化していくこととなりました。そして、SSF地域スポーツイノベーターが中心となり、協会がこれまでに実施してきた既存の事業に加えて、ステークホルダーと新たに取り組む事業などにもかかわりました。

SSF地域スポーツイノベーターとステークホルダーとの連携図

SSFスポーツイノベーター ステークホルダーとの連携

ステークホルダー


1.総合型地域スポーツクラブ

2.スポーツ推進委員

3.スポーツ少年団

4.民間スポーツクラブ

5.障害者団体・福祉・就労

6.医療・リハビリテーション

7.学校教育

8.企業

共同実践研究の結果

■ステークホルダーごとの結果

大分県障がい者スポーツ協会とステークホルダーとの関係を、SSF地域スポーツイノベーター導入前後で比較しました。導入前には繋がりが全くなかったステークホルダーとも3年間の実践研究を通して、関係を構築してきたことがみてとれます。

大分県障がい者スポーツ協会とステークホルダーとの関係の変化

大分県障がい者スポーツ協会とステークホルダーとの関係の変化

※ステークホルダーとの関係の強さを、太実線・実線・点線の順で示した

大分県障がい者スポーツ協会と各ステークホルダーとの連携の結果(全体図)

各ステークホルダーとの連携の進捗状況(全体図)です。期間的制約やコロナ禍による社会環境の変化により、目標レベルの連携には達しなかったステークホルダーもありましたが、事業開始時(2018年度)に目標としていた「連携」レベルを、事業終了時点(2020年度)での達成率で表しています。


大分県障がい者スポーツ協会とステークホルダーとの関係の変化

Regional Sport Management Organization; RSMO

■実践研究の結果(まとめ)

【事業数】

業数をみると、プロジェクト開始前の2016年度は10事業、2017年度は11事業でしたが、プロジェクトが開始した2018年度は13事業(メイン担当4事業、サブ担当1事業)、2019年度は15事業(メイン担当6事業、サブ担当1事業)と徐々に事業数が増加していきました。2020年度はコロナ禍により全体の事業数は減少しましたが、SSF地域スポーツイノベーターが関わる事業は3年目が最も多く8事業となり、中心となり事業を展開していることがうかがえます。

大分県障がい者スポーツ協会が主催する事業数とSSF地域スポーツイノベーターの関わり
(2016年度~2020年度)

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【参加者数】

2016年度、2017年度は3,500人程度でありましたが、プロジェクトが開始した2018年度以降は、事業数の増加に合わせて、2018年度は7,000人以上、2019年度は8,000人以上と、プロジェクト開始前の参加者数から倍増する結果となりました。コロナ禍で2020年度は減少しましたが、着実に参加者が増加していたことがわかります。

大分県障がい者スポーツ協会が主催する事業の参加者数とSSF地域スポーツイノベーターの関わり
(2016年度~2020年度)

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3年間の取り組みを終えて

SSF地域スポーツイノベーター 鶴岡美空

■SSF地域スポーツイノベーター 鶴岡美空氏

1年目は同僚の協会職員に頼りながら、仕事を覚え、関連団体・組織の方とお会いするようにしました。2年目はその関係を維持できるよう気を付けました。3年目は新型コロナウイルスの影響で計画通りに進みませんでしたが、国内で初の試みとなるSSF地域スポーツイノベーターとして、笹川スポーツ財団の担当者と綿密に進捗報告して進めることができました。

指導者の方は、とても熱心な方が多く、色々なことを勉強させていただきました。一方で、障害者スポーツの振興状況における地域差や指導者の固定化などを感じました。

■研究担当コメント 笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 小淵 和也

本事業は、2017年度に発表した「SSF政策提言2017(障害者スポーツ)」の内容を実証するために、2018年度から3年間を掛けて大分県で実施した実践研究です。

残念ながら、最終年度となる2020年度はコロナ禍の影響で、予定していた活動がほとんどできず、制約された状況下で事業展開を進めざるを得ませんでした。ただ、そうした環境においても、できる範囲で事業を進めた結果、これまで関わりのなかった組織・団体にアプローチし、体験会・研修会などの開催を通じて、地域の障害者スポーツにおけるステークホルダーとの関係構築ができたことは非常に大きな成果と言えます。

さらに、想定通り進んだ事業、進まなかった事業についての分析も行い、事業を展開していくにあたってのコーディネーターの役割整理、ノウハウの蓄積ができました。本プロジェクトで得られた実証研究の知見は、他の都道府県における障害者スポーツの環境整備に繋げていくために活用できればと考えております。

【お問い合わせ先】

本ページは、大分県障がい者スポーツ協会の事例となります。各地域の実態や協会の運営体制はそれぞれ異なりますので、各協会の課題に応じたノウハウ・情報提供ができればと考えております。
ご興味・ご関心がある場合は、是非お問い合わせください。

公益財団法人笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 小淵 和也
〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
TEL:03-6229-5300  MAIL:info@ssf.or.jp