公益財団法人日本パラスポーツ協会が公認パラスポーツ指導者制度に基づき認定する指導者資格となります。障害者がスポーツを安全に楽しく行うために指導し、障害者スポーツの普及を目指します。
障害者スポーツは、健常者のスポーツ指導と比較すると特別な配慮が必要です。医学的・身体的・心理学的効果との関連性、コミュニケーション、事故・怪我の防止など、多様な知識や経験が求められます。また、社会への障害者スポーツの理解促進も行います。そのため、障害者の特性に応じた運動やリハビリテーションとの関連性などについて講習を行い、指導者としてさまざまな面で向上を図っていきます。
障害者スポーツ指導員の資格は「初級」「中級」「上級」と分類されています。
障害者スポーツ指導員(現在は公認パラスポーツ指導者)資格を取得するには、大きく2つの方法で取得が可能です。
1.日本パラスポーツ協会の公認養成講習会を受講する。
2.認定された大学・専門学校に在学し、該当するカリキュラムの単位を取得し、条件を満たす。
初級障害者スポーツ指導員からスタートし、実際に経験を重ね、また指定の講習会を受講することで中級・上級の資格を取得できます。
資格取得後は、障害者スポーツセンター、総合型地域スポーツクラブ、障害者スポーツ団体、特別支援学校、病院、リハビリテーションセンターなどで活躍することができます。
2022年度で初級障害者スポーツ指導員は21,450人、中級障害者スポーツ指導員は4,209人、上級障害者スポーツ指導員は888人、計26,547人の障害者スポーツ指導員が登録されています。2021年度は25,953人、2020年度は25,318人、2019年度は26,992人、2018年度は26,022人となっており、横ばいの状況です(公益財団法人 日本パラスポーツ協会)。
笹川スポーツ財団の調査で、国内に「障害者専用・優先スポーツ施設」は150存在していることが分かりました(2021)。この調査では、施設に配置されている障害者スポーツ指導に関わる有資格者の実態を把握。障害者スポーツ指導に関わる有資格者を配置している障害者専用・優先スポーツ施設についてみると、障害者スポーツ指導に関わる有資格者がいるのは、69.7%で2015年度調査、2018年度調査との大きな違いはみられませんでした。
障害者専用・優先スポーツ施設における有給または有償のスポーツ指導者数についてみると、64 施設(58.2%)で1人以上の有給または有償のスポーツ指導者を配置しています。2018年度調査と比較すると、有償または有給の指導者が「1人」いる施設が減少し、有償または有給の指導者がいない「0人」の施設が増加しました。
障害者専用・優先スポーツ施設における障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置状況についてみると、「初級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は82.9%で、平均指導者数は3.7人でした。「中級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は60.5%で、平均指導者数2.5人、「上級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は51.3%で、平均指導者数は2.8人となっています。
国内の障害者数は、身体障害児・者は約436万人、知的障害児・者は約109万人、精神障害者は約419万人、合計約964万人です(内閣府「令和4年版 障害者白書」)。一方で、公認障害者スポーツ指導員は26,547人。障害者専用・優先スポーツ施設において、「上級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は51.3%で、平均指導者数は2.8人。障害の種類や度合が多岐に渡ることから、指導には細部のケアが要求され、こうした点からも含めて指導者数の不足は否めない状況です。
笹川スポーツ財団は、公益社団法人 東京都障害者スポーツ協会と共同研究を実施し、障害者専用スポーツ施設における専門職が備えるべき能力を3つに整理しました。
1.支援力・指導力
①活動場面の危険を予測し、安心してスポーツができるように安全を最優先した助言ができる。
②個々の障害特性や目的に応じて、きめ細かなスポーツ支援・指導ができる。
2.想像力・創造力
障害者専用スポーツ施設内の活動のみならず、いかなるスポーツ場面においても、既存の用具の使い方やルールの緩和、指導方法などを障害特性に合わせて工夫することで、利用者にとって最適なスポーツ環境を整えることができる
3.発信力・調整力・情報収集力
①専門知識や過去の指導経験に加え、全国のスポーツ・障害者スポーツ関係機関・団体との連携・協働から得た先進性・新規性の高い情報を発信し、各地域のスポーツ振興に還元することができる。
②地域のスポーツ推進のために多様な関係機関・団体を繋ぎ、助言ができる。
笹川スポーツ財団では、「障害児・者の運動・スポーツの日常化」に向けて、国内の障害者スポーツ環境の調査・研究を行っています。また、障害者スポーツを推進する外部団体と共同実践研究も実施(東京都障害者スポーツ協会や大分県障がい者スポーツ協会)。日頃の調査、実践研究から得た結果を、政策提言として発表しています。