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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

セミナー「子供のスポーツ」

障害者スポーツ指導員の現状と課題 ~指導者不足~

障害者スポーツ指導員とは?

公益財団法人日本パラスポーツ協会が公認パラスポーツ指導者制度に基づき認定する指導者資格となります。障害者がスポーツを安全に楽しく行うために指導し、障害者スポーツの普及を目指します。

障害者スポーツは、健常者のスポーツ指導と比較すると特別な配慮が必要です。医学的・身体的・心理学的効果との関連性、コミュニケーション、事故・怪我の防止など、多様な知識や経験が求められます。また、社会への障害者スポーツの理解促進も行います。そのため、障害者の特性に応じた運動やリハビリテーションとの関連性などについて講習を行い、指導者としてさまざまな面で向上を図っていきます。

障害者スポーツ指導員の資格は「初級」「中級」「上級」と分類されています。

初級障害者スポーツ指導員
身近な障害者にスポーツの魅力や楽しさを伝え、スポーツの日常化を促進する。スポーツ参加のきっかけ作りに対する支援を行う。
中級障害者スポーツ指導員
都道府県レベルにおいて、充分な知識や経験に基づき障害者のスポーツ指導にあたる。地域のスポーツイベントで中心的役割を担う。
上級障害者スポーツ指導員
障害者のスポーツ指導に必要な専門知識と技能ならびに高度な指導技術を身につけ、都道府県あるいはブロックレベルにおいて指導者を含めた指導にあたる。

障害者スポーツ指導員になる方法

障害者スポーツ指導員(現在は公認パラスポーツ指導者)資格を取得するには、大きく2つの方法で取得が可能です。

1.日本パラスポーツ協会の公認養成講習会を受講する。
2.認定された大学・専門学校に在学し、該当するカリキュラムの単位を取得し、条件を満たす。

初級障害者スポーツ指導員からスタートし、実際に経験を重ね、また指定の講習会を受講することで中級・上級の資格を取得できます。

資格取得後は、障害者スポーツセンター、総合型地域スポーツクラブ、障害者スポーツ団体、特別支援学校、病院、リハビリテーションセンターなどで活躍することができます。

障害者スポーツ指導員の人数

2022年度で初級障害者スポーツ指導員は21,450人、中級障害者スポーツ指導員は4,209人、上級障害者スポーツ指導員は888人、計26,547人の障害者スポーツ指導員が登録されています。2021年度は25,953人、2020年度は25,318人、2019年度は26,992人、2018年度は26,022人となっており、横ばいの状況です(公益財団法人 日本パラスポーツ協会)。

障害者スポーツ指導者の実態

笹川スポーツ財団の調査で、国内に「障害者専用・優先スポーツ施設」は150存在していることが分かりました(2021)。この調査では、施設に配置されている障害者スポーツ指導に関わる有資格者の実態を把握。障害者スポーツ指導に関わる有資格者を配置している障害者専用・優先スポーツ施設についてみると、障害者スポーツ指導に関わる有資格者がいるのは、69.7%2015年度調査、2018年度調査との大きな違いはみられませんでした。

障害者専用・優先スポーツ施設における 障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置有無

障害者専用・優先スポーツ施設における 障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置有無

障害者専用・優先スポーツ施設における有給または有償のスポーツ指導者数についてみると、64 施設(58.2%)で1人以上の有給または有償のスポーツ指導者を配置しています。2018年度調査と比較すると、有償または有給の指導者が「1人」いる施設が減少し、有償または有給の指導者がいない「0人」の施設が増加しました。

障害者専用・優先スポーツ施設における有給または有償のスポーツ指導者数

障害者専用・優先スポーツ施設における有給または有償のスポーツ指導者数

障害者専用・優先スポーツ施設における障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置状況についてみると、「初級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は82.9%で、平均指導者数は3.7人でした。「中級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は60.5%で、平均指導者数2.5人、「上級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は51.3%で、平均指導者数は2.8人となっています。

障害者専用・優先スポーツにおける 障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置状況

障害者専用・優先スポーツにおける 障害者スポーツ指導に関わる有資格者の配置状況

障害者スポーツ指導員の不足

国内の障害者数は、身体障害児・者は約436万人、知的障害児・者は約109万人、精神障害者は約419万人、合計約964万人です(内閣府「令和4年版 障害者白書」)。一方で、公認障害者スポーツ指導員は26,547人。障害者専用・優先スポーツ施設において、「上級障がい者スポーツ指導員」を配置している施設は51.3%で、平均指導者数は2.8人。障害の種類や度合が多岐に渡ることから、指導には細部のケアが要求され、こうした点からも含めて指導者数の不足は否めない状況です。

障害者スポーツ指導員が備えるべき能力

笹川スポーツ財団は、公益社団法人 東京都障害者スポーツ協会と共同研究を実施し、障害者専用スポーツ施設における専門職が備えるべき能力を3つに整理しました。

1.支援力・指導力

①活動場面の危険を予測し、安心してスポーツができるように安全を最優先した助言ができる。
②個々の障害特性や目的に応じて、きめ細かなスポーツ支援・指導ができる。

2.想像力・創造力

障害者専用スポーツ施設内の活動のみならず、いかなるスポーツ場面においても、既存の用具の使い方やルールの緩和、指導方法などを障害特性に合わせて工夫することで、利用者にとって最適なスポーツ環境を整えることができる

3.発信力・調整力・情報収集力

①専門知識や過去の指導経験に加え、全国のスポーツ・障害者スポーツ関係機関・団体との連携・協働から得た先進性・新規性の高い情報を発信し、各地域のスポーツ振興に還元することができる。
②地域のスポーツ推進のために多様な関係機関・団体を繋ぎ、助言ができる。


障害児・者の運動・スポーツの日常化に向けた調査研究

笹川スポーツ財団 障害者スポーツの調査・研究

笹川スポーツ財団では、「障害児・者の運動・スポーツの日常化」に向けて、国内の障害者スポーツ環境の調査・研究を行っています。また、障害者スポーツを推進する外部団体と共同実践研究も実施(東京都障害者スポーツ協会や大分県障がい者スポーツ協会)。日頃の調査、実践研究から得た結果を、政策提言として発表しています。

【研究担当者】
政策ディレクター 小淵 和也     

【お問い合わせ先】
公益財団法人 笹川スポーツ財団
TEL:03-6229-5300 MAIL:info@ssf.or.jp