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都道府県格差

都道府県間に実在する格差とは何か
客観的データがあぶりだす事実
幸福とは何かを考えさせられる一冊

仲間たちと出身地の自慢話や自虐ネタを披露し合い、盛り上がった経験はだれでも1回くらいはあるのではないだろうか。自分の生まれ育った地域はよそと比べてどうなのか。自分は自分、他人は他人と言ったところで、やはり隣の芝生が気になるのは人間の性である。
本書『都道府県格差』は、国や民間シンクタンクが調査した都道府県別のさまざまなデータを紹介した一冊だ。その内容は経済・労働、女性、子ども・教育、健康、スポーツ・文化、社会・福祉、政治と多岐にわたる。安易な主観や考察を極力排し、徹底してデータを提示する姿勢を貫いている。

日本総合研究所が実施している「全国47都道府県幸福度ランキング」で福井県が長く1位にランクされていることをご存知の方も多いであろう。ではなぜ1位にランクされるのか、その理由を知る人は少ないのではないだろうか。
たとえば福井県は「正規雇用者比率」が全国3位、「女性労働力率」が同1位、「大卒者進路未定者率」が同最下位、「人口10万人あたりの社長輩出数」が同1位、「子どもの学力」が同2位、「子どもの運動能力」が同1位、「自殺死亡者数の少なさ」が同1位、「平均寿命」が同2位という数字が並ぶ。こうしたデータから福井県は多くの県民が安心して働け、女性も働きやすく、子どもが元気で、悩みも比較的少なく、長生きしている、というわけだ。

本稿で紹介するからにはスポーツという項目にも触れておきたい。スポーツにおいても地域間格差は存在し、「人口10万人あたりの体育・スポーツ施設数」はトップが長野県で125.3件、2位以下は鳥取県、山梨県、秋田県、島根県と続く。ワーストの大阪府が17.8件だからかなりの格差である。
さらに「1日あたりのスポーツ活動に費やしている時間」をみると、1位から滋賀県、島根県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県。施設数で2位の山梨県は36位で、施設の充実と運動時間がリンクしていないという事実は考えさせられるところだろう。

本書は人によって求める幸福は違うということもしっかり説明している。文部科学省の調査によると、客観的データにおいて幸福度1位に輝いた福井県は、県民が感じている主観的幸福度の調査ではなんと35位。福井県民はそこまで幸福だとは感じていないかもしれない、という事実も明らかにしている。

なんだかちゃぶ台返しのようにも思えてくるが、これもまた厳然たる調査結果だ。どのデータを重視するのかは各人の自由。他県をうらやむも、やっぱり我が故郷が一番とほくそ笑むもよし。本書はタイトル通り地域間格差をあぶりだす硬派の一冊であるが、酒席のネタにも十分なりそうな面白みが魅力ではないだろうか。

(掲載:2018年07月24日)

著者
造事務所 (著)、橘木 俊詔 (監修)
編集発行
日本経済新聞出版社
紹介者
笹川スポーツ財団
ジャンル
スポーツ政策
定価
850円+消費税