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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

知る学ぶ
Knowledge

日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツ政策研究所が振り返る2014年

~スポーツ庁・ソチ五輪・1964から50年・障害者スポーツ~

スポーツ庁設置議論がほぼ収束

本年当初は、来年4月の設置を検討していた超党派のスポーツ議員連盟だったが、同問題を所掌したプロジェクトチームによる素案(6月)が「現場の意見と一致していない(同議連会長:麻生太郎氏)」とされ、先送りされた。その後、選手強化体制や強化費の配分方法のありかたなどについて現場サイドからも一定の理解を得たことから、来年の通常国会には文部科学省設置法の改正法案が提出されるめどがたった。可決されれば来年度からスポーツ庁がスタートする。

<SSFの取り組み>

東京人(2014年11月号)

スポーツ庁について、講演・執筆を行う

政府は、本年秋の臨時国会中に文部科学省設置法を改正し、2015年4月の設置を目指していたことから、SSFでは、文部科学省外局型を含めた複数の設置パターンを提示。パターンごとの予算規模算出などを行っていた。
2014年は同調査を担当したSSFスポーツ政策研究所 藤原直幸研究員が、スポーツ庁設置に関する、講演・執筆活動を行った。

ソチオリンピック・パラリンピック開催

2月から3月にかけてロシアのソチで冬季オリンピック・パラリンピックが開かれた。選手の活躍だけではなく、ロシア初の冬季五輪大会として、プーチン大統領のイニシアチブのもと、多額の投資が行われた国威発揚型の大会という側面も注目された。

<SSFの取り組み>

ソチオリンピック

ソチオリンピック・パラリンピック現地レポートを連載

大会開催に合わせて、「SPORT TOPICS」に、現地報告を連載した。大会通訳ボランティアとして活躍した西川千春氏による「ソチオリンピック ボランティア奮闘記」を3話掲載(1月17日~)したほか、パラリンピックに関してはフリーライター星野恭子氏による「ソチパラリンピック 現地レポート」を4話掲載(3月28日~)し、大会の実態を紹介した。

1964東京オリンピック・パラリンピックから50年

2014年は1964年東京オリンピック・パラリンピックから50年にあたり、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会が迫っているということもあって、メディアを中心にさまざまな振り返りが行われた。1964東京大会が遺したレガシーを検証し、2020年につなげる契機となった。

<SSFの取り組み>

スポーツアカデミー 東京オリンピック・パラリンピック開催と東京の未来構想
スポーツボランティアサミット2014(JSVN)

1964から2020へ。東京オリンピックを考える各種企画を実施

東京オリンピック・パラリンピック2020および、その後の日本のスポーツのあり方を考えるため、SSF主催の公開講義「スポーツアカデミー」にて、関連のテーマを取り上げた。

また今年、開催から50年の節目を迎えた1964年の東京オリンピック・パラリンピックを検証した『スポーツ歴史の検証』を、一昨年度より引き続き当サイトにて連載。
そのほかSSFに事務局を置く日本スポーツボランティアネットワーク(JSVN)が主催する国内最大規模のスポーツボランティア会議「スポーツボランティアサミット2014」が11月24日に行われ、「大規模スポーツイベントの開催後にスポーツボランティアは何を遺せるのか」をテーマに熱い議論が交わされた。

ブラインドサッカー世界選手権が日本で開催

ブライドサッカーの世界最高峰大会である「IBSAブラインドサッカー世界選手権2014」が11月、日本ではもちろんアジアでも初めて開催された。ブラインドサッカーというスポーツ自体の周知・普及につながっただけではなく、障害者スポーツ全般への理解浸透のきっかけともなった。

<SSFの取り組み>

平成25年度 文部科学省『健常者と障害者のスポーツ・レクリエーション活動連携推進事業』報告書

平成25年度 文部科学省『健常者と障害者のスポーツ・レクリエーション活動連携推進事業』報告書を発表

SSFでは、平成24年より文部科学省の障害者スポーツに関する調査を受託。2年目となる本調査では、「障害児・者の4割がスポーツを実施」「6割の学校で運動部活動・クラブ活動が行われ、体育館・グラウンドの5割以上が一般に開放されている」、「障害者入所施設の8割が外部のスポーツ大会に参加し、また担当者の半数がスポーツに関する専門資格を保有する」などの障害児・者のスポーツ実施状況が明らかとなった。

総括 -2014年を振り返り-

世界に目を向けても、日本に目を向けても、2014年はスポーツが新たなステージを迎えた1年だった。国際オリンピック委員会は「アジェンダ2020」を発表。未来の国際社会を展望して、オリンピックが今後どうあるべきかを世界に示した。日本でも2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて組織委員会が発足。スポーツ庁もいよいよ設置に向けた動きが固まった。

新たなステージを迎えるにあたり、時代に合わせた「自己変革」が各所で求められている。ここ数年、スポーツ界では、中央競技団体のガバナンスの問題が指摘されてきた。今年も日本バスケットボール協会で自己変革が進まず、国際バスケットボール連盟という「外部の力」に変革を促されることになった。スポーツ庁の発足、それに伴う日本スポーツコミッション(仮称)の設置により、ダイナミックな政策が展開され、各競技組織の改革が進むことを期待したい。

ソチオリンピック・パラリンピックは2020年を迎える私たちに多くの教訓を与えてくれた。多額の投資により建設した施設が今後どのように利用されていくのか。あるいはボランティアが文化としてロシアに醸成されるのか。どのようなレガシーが後世に継承されるか世界が注目している。東京が模範教師的にみる2012ロンドン大会と並び、ソチ大会は反面教師的な部分を含めて学びの多い大会であった。

2014年は1964年の東京オリンピック・パラリンピックから50年という節目の年にあたり、さまざまな機会で1964年が振り返られた。1964東京大会では、社会インフラやオリンピック教育など、ハード面でもソフト面でも多くのレガシーを日本に遺した。また東京大会は日本の文化を世界に発信するまたとない機会にもなった。歴史の教訓を2020年に生かすためにも、50周年という節目に1964年を振り返り、負の遺産も含めて検証したことの意義は大きかったと思う。

スポーツ基本法に謳われる「スポーツの意義」は、国際社会でも強く再認識されている。
笹川スポーツ財団は、研究調査、周知啓発、あるいはスポーツボランティア養成などの活動を通じ、今まで以上にスポーツの意義や価値を「啓発」していかなければならない。

笹川スポーツ財団 専務理事 渡邉一利