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国際情報
International information

「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

スポーツアカデミー2012 第8回

スポーツに関する情報とメディア

第8回スポーツアカデミー2012の様子

1月29日に今年初となるスポーツアカデミーが行われました。

今回は、「スポーツ白書~スポーツが目指すべき未来~」の第8章「スポーツに関する情報とメディア」をテーマとして、わが国のスポーツの普及や強化に関する情報やメディア、多様なスポーツ享受の現状について筑波大学の仲澤 眞 先生がご講義されました。

仲澤先生は最初に、「情報とメディア」は、その「内容(コンテンツ、メッセージなど)」、「方向(一方向、双方向、多方向、垂直/水平など)」、「方法(媒体、タイミング、コスト負担者など)」のありかたによって整理されること、情報の送り手は受け手の反応などを踏まえながら、送る情報の内容、方法に修正を加えるコミュニケーション過程があることが説明されました。その後、スポーツ白書第8章の構成に基づき、スポーツの「普及」「強化」「多様なスポーツ享受」に関する情報・メディア・コミュニケーションの現状と問題の所在について解説がなされました。

筑波大学 仲澤 眞 先生

筑波大学 仲澤 眞 先生

問題の所在に関する解説では、「スポーツにおける『自由』と『平等』」に関して、ナショナルチームの試合というコンテンツを例にあげられました。情報の送り手である民間のテレビ会社が、市場の原理に基づき、放映権を購入し、加入者にのみ試合を報じる自由が存在する一方で、コンテンツの公共性の高さから、国民全体の見る権利への格差にどのように配慮すべきかとの議論が存在することが紹介されました。また、従来、日本のスポーツ界では底辺の拡大(普及)は頂点(強化)のためにという底辺手段論が支配的な考え方であったところ、昨今では、競技スポーツと生活の中のスポーツに大きな乖離がみられており、その統合を図るものとしてトップアスリートの果たす役割への期待が高くなっていることが説明されました。また、そのような「頂点手段論」の中では、トップアスリートのロールモデルとしての役割や発信力の強化(メディアトレーニングなど)がますます求められるとも述べられました。

講義の中では、「成人の直接スポーツ観戦率」などのデータをもとに、「する・ささえる」といったスポーツの楽しみ方と「みる」スポーツの楽しみ方のシナジーがうまくいっている種目とそうでない種目が存在することや、プロスポーツチームによるソーシャルメディアの積極活用の現状、スポーツ愛好者がオンサイト、オフサイトのコミュニティを形成しながらコミュニケーションの輪を水平的に広げている現象など、情報・メディア・コミュニケーションがスポーツを発展させていく可能性について指摘がなされました。

まとめでは、メディアとスポーツの分野における「目指すべき未来」として、スポーツの「普及」「強化」における情報・メディア・コミュニケーションの課題と今後への期待、スポーツが多様化する中でメディアが果たすべき役割などが説明されました。講義後の質疑では、頂点手段論におけるトップアスリートへの教育のありかたや競技団体の課題、メディアがスポーツコンテンツを伝える際のメディアとスポーツ界の意思疎通の問題などについて複数の質問や意見が出されました。いくつかの質疑のやり取りのあと、予定の時間を迎えて終了いたしました。