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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

セミナー「子供のスポーツ」

実践研究(2019~2021)報告書(概要版)~地域スポーツ運営組織「スポネットかくだ」の取組み~

スポネットかくだの設立経緯・趣旨

①スポーツへの期待の高まり
 ● 国:第2期スポーツ基本計画(2017年)
 ● 角田市:スポーツ施設群に隣接して道の駅建設開始
②少子高齢化で地域スポーツの現状維持が困難と想定
③SSFが地域スポーツを推進する「地域スポーツ運営組織(RSMO)」を提言

▼ これらを背景に

2019年4月:角田市・角田市教育委員会・SSFで協定締結(スポーツを通じた地域活性化の実践研究)
2019年4月~9月:スポーツ関連団体で検討
2019年9月:スポーツネットワークかくだ設立

スポネットかくだ概要・組織体系

スポネットかくだ構成団体(2022年1月時点)

スポネットかくだ構成団体(2022年1月時点)

■角田市のスポーツの課題解決に向けて

  • 課題把握、情報共有のため関係団体を一堂に会する懇談会を開催
  • 課題解決のために専門チームを設置

■スポネットかくだ 組織体系

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スポネットかくだでは、課題解決のために3つの基準を明確化し取り組みを進めた。

  1. スポーツ事業を「インナー施策」(地域住民のスポーツ参加促進)と「アウター施策」(地域・経済活性化の促進)の2つに区分
  2. 課題解決の優先基準を「スポーツを楽しめる人をどれだけ増やせるか」と設定
  3. 期間は5~10年と中長期スパン

スポネットかくだ・3年間の取り組み

インナー施策

健康スポーツ懇談会で多くの課題がでるなか、下記の優先課題について取り組んだ。

  • 優先課題A:いかにより多くの人にスポーツを楽しんでもらうか(よりアクティブに)
  • 優先課題B:いかにスポーツの持つイメージを一新するか

具体的な解決方法は、課題解決の効果、構成団体の連携・調整のしやすさなどから下記の取り組みを進めた。

  • 第1優先「幼児スポーツ」の課題解決/乳幼児チーム
  • 第2優先「中学校部活動」の課題解決/部活動チーム
スポネットかくだ・インナー施策の3年間の振り返り

アウター施策

スポネットかくだ設立以前から次の4団体が地域活性化等を目的に取り組んでいた。スポネットかくだ設立後、各団体が過渡期・変革期にあり、各団体の事務局が一か所でないことから、ノウハウの共有や蓄積が難しい、アウター施策全体のコーディネートがされていないなどの課題が分かり、1・2・3を発展的に解散し、スポネットかくだが当該事業を継承することとなった。4は専門性が高いことから、専門チーム「車いすバスケチーム」を設置する(2022年6月)。

  1. 阿武隈リバーサイドマラソン実行委員会(1992年設立)→ スポネットかくで機能を継承
  2. ベガルタ仙台レディース角田ホームゲーム協議会(2013年設立)→ スポネットかくで機能を継承
  3. Challengemillion2016 スポーツ専門部会(2016年設立)→ スポネットかくで機能を継承
  4. 全日本女子車いすバスケット強化合宿を支援する会(2018年設立)→ 車いすバスケチームに

スポネットかくだの今後に向けて

次のステップ

スポネットかくだの活動を分析すると、行政課題(幼児スポーツ推進、部活動の見直しなど)に沿った取り組みで公共性が高いことが分かった。将来ビジョン「明るく楽しく健康で活力あるまち(アクティブシティ)」の実現に向け、「スポーツを楽しむ人をどれだけ増やせるか」を基準とし、さまざまな課題解決に向けた取り組みを行っている。

しかし、スポーツで稼ぐ視点で事業を選択しておらず、かつ、中長期的な視点で取り組んでるため、すぐに収益性を高めることは難しい。

また、課題解決の役割分担は、行政が担うべきか、市民団体、企業が行うか、スポネットかくだで決定する。角田市スポーツ推進計画の後期アクションプランに掲げる重点施策(幼児スポーツの推進等)も大きく推進しており、スポネットかくだの業務が、非常に公共性の高い分野を担っていることが分かる。

これらから、次のステップを、「スポネットの事務局を指定管理業務として整理すること」「市・教育委員会における位置づけの明確化」として、2022年4月より取り組みを進める。

スポネットかくだの次のステップ
  1. スポネットかくだの事務局体制を指定管理者へ移行
    指定管理業務と位置付けたことで、事務局体制は、指定管理に必要な規模の組織へ5年間というスパンで移管され、スポーツ施設の運営と一体的に中長期的な視点で安定的な運営が期待できる。
    今まで事務局を担ってきたスポコムかくだに、Kスポ共同企業体を構成する角田市地域振興公社と(株)フクシ・エンタープライズが加わる。追加の2団体はスポネットかくだ構成団体であり、円滑な事務局移行が期待できる。
  2. 市・教育委員会における位置づけの明確化
    第6次長期総合計画、角田市教育振興計画に、スポネットかくだの役割やスポーツの位置づけを明記したことで、スポネットかくだの役割やスポーツの位置づけを効果的に共有することができ、さらに、10年期間での計画のため、各事業の継続性が確保されることとなった。
    なお、第6次長期総合計画は地方総合戦略を併せ持った計画のため、重点施策として位置付けた「スポーツによるまちづくり」の各事業に、企業版ふるさと納税が活用可能になる。
    ※2022年度に、総合体育館の改修工事を対象事業として企業版ふるさと納税を募集開始

スポネットかくだ・3年間の評価

3年間の取り組みを分析

スポネットかくだの評価は、設立時に掲げた将来ビジョンがいかに実現したかで分析すべきもので、具体的には、課題解決の優先度分析の基準として掲げた「スポーツを楽しむ人をどれだけ増やせたか」を指標として評価する方法が考えられた。

しかし、設立後の3か年をその指標で評価することは、スポネットかくだが中長期スパンで将来ビジョンの実現を目指していることを考えると適切ではないため、「どの程度、関係団体との連携がとれるようになったか」を基準とし分析をした。

■評価の指標
1・スポーツ団体とそれ以外の団体との打合せの回数
2・会議への参加人数(参加した行政の所属数)
3・連携事業数(長期総合計画に記載)

スポネットかくだ・3年間の取り組みを分析

3年間の評価

分析の結果、スポネットかくだは、設立後3か年でスポーツ団体とそれ以外の団体との打ち合わせ回数、打合せに参加する人数がともに5倍以上に増えており、連携体制が構築されていることが分かった。スポネットかくだの取り組みは、2021年12月にスポーツ庁長官表彰を受賞した。

また、連携事業への参加者数も大幅に増加していることからも、将来ビジョン「明るく楽しく健康で活力あるまち(アクティブシティ)の実現」に向け着実な取組みで大きな成果があったと言える。スポネットかくだの役割やスポーツの位置づけを第6次長期総合計画に位置づけるなど、持続可能な体制の整備も併せて構築された。

今後について

分析の通り、スポネットかくだは着実に角田市のスポーツの課題解決のために進んできた。2022年度以降は、スポネットかくだ事務局の指定管理者への移行を円滑に進めつつ、行政内外ともに、スポーツの役割や位置づけの共有を進め、スポネットかくだの活動が持続可能な体制となるよう、次の2点を押さえ、将来ビジョンの実現に向けて加速する必要がある。

1・スポーツ及び健康における計画の次期改定との連動

スポネットかくだは設立直後、角田市スポーツ推進計画(前期)における「さまざまな課題」について課題解決の議論をしてきた。その結果、優先して取り組むこととした各事業は、角田市スポーツ推進計画(後期)とともに、角田市第6次長期総合計画にも位置づけることで、行政内で共有のうえ、効果的に事業展開した。

今後、角田市スポーツ推進計画および角田市にこにこ健康プラン(健康増進計画)の改定(2024年から10年計画)がなされることから、スポネットかくだの取り組みを、当該計画改定としっかり連動するこで、将来ビジョンの着実な実現を目指す。

2・専門チームの有効活用

スポーツ庁において、2022年度から第3期スポーツ基本計画が始まり、スポーツに求められる役割・期待がさらに広がった。厚生労働省では、2023年度に健康日本21(第三次)の改定が予定されており、運動による一次予防の重要性の高まりも予想される。そのため、スポネットかくだは、専門チームの機能を十分に活用し、2024年度の行政内の計画改定としっかりと連動し、将来ビジョンの実現を目指す。

 

スポネットかくだと各種計画の連動イメージ図

スポネットかくだと各種計画の連動イメージ図