Search

子どもの体力低下と小学生のスポーツクラブ離れ

―子どもの豊かな運動・スポーツの場づくりのために地域スポーツができることとは―

2022年08月25日

子どもの体力低下と小学生のスポーツクラブ離れ

 近年の子どもの体力は新型コロナウイルスの感染拡大前から低下し始め、コロナ禍の影響によってさらに低下傾向に拍車がかかっている。スポーツ庁が毎年実施している「体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果より小学5年生の体力合計点をみると、平成20年(2008年)以降は男子では横ばい、女子では向上傾向を示していたが、令和元年(2019年)より男女ともに低下している1。子どもたちの運動・スポーツの実施状況や意識にはどのような変化が起こっているのだろうか。笹川スポーツ財団の「子どものスポーツライフ・データ(411歳のスポーツライフに関する調査)」からわかる現状と課題、子どもの地域スポーツのあり方について考えてみたい。

1. 子どもの運動・スポーツ、運動遊び実施状況の変化
 -高頻度で実施する小学生男子の減少-

 図1に男女の運動・スポーツ、運動遊びの実施状況の推移を学年別に示した。過去1年間に全くしなかった「非実施群」、週1回以上週3回未満の「低頻度群」、週3回以上週7回未満の「中頻度群」、週7回以上の「高頻度群」における20172021年までの推移を示している。

「高頻度群」に着目してみると、男子では未就学児と小学12年では特に変化はみられないが、小学34年と56年では2017年から減少傾向にある。一方、女子では未就学児と小学12年は2017年と比較すると減少傾向にあるが、小学34年では横ばい、56年では増加の傾向を示しており、男女で実施状況の変化に違いがみられる。つまり、高学年男子における高頻度で運動・スポーツをする子どもの減少が課題と言える。

2. 減少する小学56年男子のスポーツクラブ加入率

2にスポーツクラブへの加入率の20152021年までの推移を男女別・学年別に示した。2015年から男女ともに加入率が増加傾向にあるのは未就学児であり、過去6年間で男子では9.0ポイント(33.1%⇒42.1%)、女子では11.5ポイント(32.4%⇒43.9%)増加している。加えて、女子の小学34年においては、2015年と比較して2021年では7.5ポイント(55.2%62.7%)の増加がみられる。

一方、減少傾向が顕著であるのは小学56年男子であり、2015年では81.5%であった加入率は2021年では70.3%と、過去6年間で11.2ポイント減少している。小学校高学年の時期は初歩的なスポーツ技能の習得が可能になる頃であり、スポーツを始めるのに最適な時期であると言われる2。しかし、実際は小学56年男子ではスポーツクラブ離れが進んでおり、先に示した小学生男子の体力低下の背景には、このような状況も影響しているのではないだろうか。

3. 小学5・6年の加入しているクラブの変化 
-男子の地域クラブ加入率が減少-

スポーツクラブへの加入率が減少している小学56年の加入しているクラブの種類の変化をみると(表1)、男子では「地域のスポーツクラブ(以下、地域のクラブ)」の減少傾向が顕著であり、2015年の46.5%から2021年では32.9%と、過去6年間で13.6ポイントの減少がみられている。先に示した小学56年男子のクラブ加入率の減少は、地域のクラブへの加入率の減少が背景としてうかがえる。女子では、地域のクラブへの加入率は2015年から2019年にかけては男子と同様に年々減少傾向にあったが、2019年から2021年にかけて増加し、2015年と同程度となっている。

【表1】小学5・6年生の加入しているスポーツクラブの種類の推移(2015~2021年:性別)(複数回答)

(%)

2015年 2017年 2019年 2021年
男子 学校のクラブ活動・運動部活動 31.2 28.1 28.5 27.7
民間のスポーツクラブ 31.8 33.3 35.3 32.9
地域のスポーツクラブ 46.5 37.0 34.9 32.9
女子 学校のクラブ活動・運動部活動 29.9 22.3 23.5 30.3
民間のスポーツクラブ 29.2 26.4 34.1 22.8
地域のスポーツクラブ 20.8 19.0 15.0 20.2

注1)民間のスポーツクラブ:スイミングクラブや体操クラブなど
注2)地域のスポーツクラブ:スポーツ少年団や地域のスポーツ教室など

資料:笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2015、「4~11歳のスポーツライフに関する調査」2017~2021

4. 現代の子どものスポーツは楽しむこと・仲間とのつながりが大切

 なぜ小学56年のスポーツクラブ離れが進んでいるのか、その手がかりとして運動・スポーツをした理由についてみてみたい。表2に小学56年の運動・スポーツをした理由(2021年:上位5位まで)をスポーツクラブへの加入状況別・性別に示した。

男子では、加入者の理由をみると「楽しいから」が最も多く、次いで「好きだから」「うまくなりたいから」「からだを動かしたいから」「勝ちたいから」が続く。一方、非加入者では「楽しいから」が最も多く、次いで「好きだから」「友だちに誘われたから」「からだを動かしたいから」、「うまくなりたいから」であった。加入・非加入ともに「好きだから」は2位であるものの、その割合の差は30ポイント(加入者73.4%、非加入者44.1%)と大きい。また、加入者では勝ちたいという理由が上位にあがっているが、非加入者ではみられず、友だちに誘われたといった友だちとの関わりが理由として上位にあがっている。

 女子では、加入者の理由として「楽しいから」が最も多く、次いで「好きだから」「うまくなりたいから」「からだを動かしたいから」「友だちに誘われたから」と続く。非加入者では「楽しいから」が最も多く、次いで「友だちに誘われたから」「好きだから」「からだを動かしたいから」「他にすることがないから」であった。

男女ともに加入・非加入者のいずれも楽しい、好き、からだを動かしたいといった理由は共通していたが、男子の加入者では勝利への志向性が加わり、男子の非加入者や女子では友だちとの関わりが加わる。

非加入者では男女ともに「友だちに誘われたから」が加入者に比べて上位にみられており、女子では「友だちに誘われたから」は「好きだから」より順位が高くなっている点が特徴的である。クラブに加入していない子どもにとっては、運動・スポーツをするきっかけとして友だちとの関わりが重要なポイントになると言える。特に、スポーツクラブ離れが進んでいる男子においては指導を受けて勝ちたいという欲求よりも、スポーツそのものを楽しむことや友だちとの関わりの中でスポーツを楽しみたいという子どもたちが増えているのかもしれない。

【表2】小学56年のクラブ加入状況別にみた運動・スポーツをした理由(2021年:性別)(複数回答)

【男子】

順位 加入者(n=138) 順位 非加入者(n=82)
理由 理由
1 楽しいから 85.5 1 楽しいから 83.8
2 好きだから 73.4 2 好きだから 44.1
3 うまくなりたいから 67.1 3 友だちに誘われたから 42.6
4 からだを動かしたいから 43.4 4 からだを動かしたいから 36.8
5 勝ちたいから 41.6 5 うまくなりたいから 27.9

【女子】

順位 加入者(n=138) 順位 非加入者(n=82)
理由 理由
1 楽しいから 86.2 1 楽しいから 81.7
2 好きだから 67.4 2 友だちに誘われたから 50.0
3 うまくなりたいから 65.2 3 好きだから 48.8
4 からだを動かしたいから 55.1 4 からだを動かしたいから 28.0
5 友だちに誘われたから 33.3 5 他にすることがないから 24.4

資料:笹川スポーツ財団「4~11歳のスポーツライフに関する調査」2021

5. 子どもの豊かな運動・スポーツの場づくりのために地域スポーツができることとは?

 近年の子どもの体力低下は新型コロナウイルス感染拡大を機に顕著になったが、それ以前から低下の兆しがあり、その要因の一つとして地域のスポーツクラブ離れがうかがえる。わが国最大の青少年スポーツ組織であるスポーツ少年団の登録率をみると、1995年度まで100万人台の団員数を維持していたが、国内の少子化などの影響により登録団員数は毎年緩やかに減少し、新型コロナウイルス感染拡大もあり2020年度の登録団員数は562,157人とピーク時から半減した3)。団数でみると、1995年度の34,162団から2020年度では29,212団となり、過去25年間で4,788団減少している4)5)。地域によっては、スポーツクラブに入りたいけどなくなってしまった、満足に活動できるクラブが近くにないといった、子どもの身近なスポーツ環境は縮小している。

子どものスポーツの課題として地域のスポーツクラブなどでは上手くできることや競争・勝敗に価値をおいた活動も多く、また、単一スポーツのみの活動や長時間にわたる練習をしている子どもも存在している6)。多様な子どもたちのニーズも満たせるような子どものスポーツのあり方が求められている中、豊かな運動・スポーツの機会をどのようにつくっていけばよいのか。その方法の一つとして大人のスポーツ文化を中心とした活動ではなく、子ども主体に変えていくことはできないだろうか。 

例えば、神奈川県伊勢原市の小学生のサッカークラブ「伊勢原FCフォレスト(旧:FCしらゆりシーガルス)」では、子どもを主体とした活動が行われており、普段から子どもたちが練習メニューや試合に出場するメンバー、チームの目標などを決めている7)8)9)。また、会場の設営やお茶出し、大会の運営、試合の審判、出場する選手決めなども子どもたちで行う『フォレストカップ(旧:しらゆり招待サッカー大会)』も開催している。コーチや保護者は、試合中は離れたところから子どもたちの姿を見ているだけで口を出さないとのことである。

自分たちのクラブで何をするかは自分たちで決め、その活動の中で起こった問題は仲間と協力したり折り合いをつけたりしながら解決していく。かつて子どもはこのようなことを仲間との自由な遊びのなかで経験し、様々な能力(運動能力や認知能力、コミュニケーション能力など)を獲得していったが、放課後や休日に仲間と自由に遊ぶ機会が少なくなった現代では、スポーツの場面でも意図的に作り出していくことが必要となろう。その場合も「遊び(おもしろい・もっとやってみたい)」の観点を大切にしたい。

日本スポーツ少年団は20214月にスポーツ少年団緊急対策プロジェクトを設置し、人々のスポーツへのニーズや価値観の多様化に柔軟に対応できる組織・体制として最適化するため「スポーツ少年団改革プラン2022」を公表した3)。その中では、勝利至上主義を否定し、スポーツの本質である自発的な運動(遊び)から得られる「楽しさ」を享受できる機会をジュニア・ユース世代に提供することがメッセージとして示されており、現在それぞれに活動している様々な子どものスポーツクラブをスポーツ少年団の理念をベースにまとめ、子どもの発育発達に配慮したスポーツ活動の推進を目指している。

スポーツ少年団の改革によって子どもたちの身近なスポーツ環境が整備されること、また多くの自治体がアクティブチャイルドプログラムなどの運動遊びの取り組みをスポーツ少年団指導者のみならず学校や幼稚園・保育園の先生など様々な立場の人々に認知されるよう働きかけ、様々な現場で実践されることによって、今後多くの子どもたちの運動・スポーツとの良い出会いが増えることを期待したい。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 シニア政策オフィサー 武長 理栄

<参考文献>

1) スポーツ庁(2021)「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」

2) Meinel,K・金子明友訳(1981)『マイネルスポーツ運動学』大修館書店.

3) 日本スポーツ協会・日本スポーツ少年団「スポーツ少年団改革プラン2022」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/syonendan/2022/kaikakuplan2022pamphlet.pdf
(参照2021- 07-15)

4) 日本体育協会・日本スポーツ少年団「日本スポーツ少年団50年史 ダイジェスト版」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/syonendan/doc/50thdigest.pdf
(参照2021- 07-15)

5) 日本体育協会・日本スポーツ協会(2021)「スポーツ少年団育成事業報告書」

6) 笹川スポーツ財団(2012)「子どもの運動・スポーツ指導者の意識等に関する調査」

7) サカイク(2018)「大人が離れれば子どもはどんどん成長する!運営、審判、試合の作戦まで子どもたちだけで行う「子どもが主役」の大会」
https://www.sakaiku.jp/column/thought/2018/013400.html
(参照2021- 07-15)

8) サカイク(2018)「指示待ち人間にならないために。言葉より「経験」を通して学ぶことでサッカー選手としてもレベルアップ」
https://www.sakaiku.jp/column/thought/2018/013408.html
(参照2021- 07-15)

9) サカイク(2021)「会場設営、出場メンバーも作戦も子どもたちで。ベンチに大人が入らない「子どもが主体の大会」で子どもたちに起こる変化」
https://www.sakaiku.jp/column/thought/2021/015115.html
(参照2021- 07-15)

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴をの把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2022年度

担当研究者