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【箱根駅伝2022】 箱根からパリへ走り出す

佐野 慎輔(尚美学園大学 教授/産経新聞 客員論説委員/笹川スポーツ財団 理事)

2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会。陸上競技 男子3000m障害決勝で7位入賞を果たした三浦龍司(順天堂大学) 写真:フォート・キシモト

2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会。陸上競技 男子3000m障害決勝で7位入賞を果たした三浦龍司(順天堂大学) 写真:フォート・キシモト

 多くの箱根ファン、いや陸上ファンが期待感を高ぶらせる男がいる。順天堂大学2年の三浦龍司。今夏の東京オリンピック男子3000m障害決勝で私たちの持つ日本人長距離走者のイメージを覆したランナーだ。

 600m付近でトップに立つと、500mほどだったか、エチオピアやケニアの選手たちを従えて168㎝の三浦が先頭を走り続けた。かつてこんな場面を映画『オリンピア』で視たことがある。1936年ベルリン大会の村社講平である。

 さすがにその後は順位を落とし、最後の1周を迎えたときは10番目。うーんと思った瞬間、また三浦が躍動した。異次元のラストスパートで8分9秒32、日本新記録でゴールに飛び込んだ。前を走る3人をかわし、7位入賞はあの村社の4位以来、81年ぶりのトラック種目の入賞である。どこに余力を残していたのか。これまでにはいないスタイルの長距離走者がオリンピックの舞台にいた。

 パリ・オリンピックは3年後。三浦の姿を思うと今から心躍る。さて箱根路はどう走るのか。20km以上の長丁場、トラックと異なるロードをいかに攻めていくのだろう。

2021年箱根駅伝で2区を走る田澤廉(駒澤大学) 写真:大内翔太/フォート・キシモト

2021年箱根駅伝で2区を走る田澤廉(駒澤大学) 写真:大内翔太/フォート・キシモト

 かつて「箱根駅伝はマラソン選手養成には適しているが、トラック選手には不向きだ」と言われた。トラックのスピード感、駆け引きをうまく養えないとの理由からだ。実際、成績がそれを裏打ちする。だからこそ三浦とともに、駒澤大学3年田澤廉の走りが気にかかる。実力は日本学生長距離界No.1。12月の記録会で出し1万m272344は日本歴代2位、来年7月米国オレゴンで開催予定の世界選手権参加標準記録を突破した。三浦と同様、その先にあるパリ大会への期待が膨らむ。もっとも駒大主将でもある田澤は母校の連覇のために走るのだろうが…。

 この田澤と留学生No.1の実力を誇る東京国際大学3年のイェゴン・ヴィンセント、今年の大会で創価大学往路初優勝の原動力となった3年生フィリップ・ムルワ、さらに青山学院大学3年の近藤幸太郎たちの母校の栄光をかけた挑戦に注目したい。

優勝争いは駒沢、青山学院が中心

2021年箱根駅伝、最終10区で先頭を競う小野寺勇樹 (創価大学)と 石川拓慎 (駒澤大学) 写真:AJPS/フォート・キシモト

2021年箱根駅伝、最終10区で先頭を競う小野寺勇樹 (創価大学)と 石川拓慎 (駒澤大学) 写真:AJPS/フォート・キシモト

優勝争いは前回の総合優勝校駒沢が中心となる。最後の10区大逆転で大八木弘明監督の「大八木マジック」が喧伝された。11月の全日本駅伝は故障、不調者が多くベストメンバーではなかったが、アンカーの2年花尾恭輔が青学大4年飯田貴之との一騎打ちを制して優勝。強い駒大を見せつけた。

 対抗は青山学院。10月の出雲駅伝、11月の全日本ともに2位、優勝に手が届かなかった悔しさを箱根にぶつける。エース近藤を筆頭に実力者の飯田、4年高橋勇輝に加え、下級生も力をつけてきた。何といっても原晋監督の箱根を見据えた調整の巧みさに注目したい。

 前回アンカー勝負で涙を呑んだ創価はその真価が問われる。全日本は予選会敗退、出雲も7位と振るわず、ムルワを中心にどう立て直してくるか。

 今回、"台風の目"候補が東京国際だ。出雲では初出場初優勝。4年生を起用せず、3年生中心に編成した作戦が奏効した。45.1km6区間と距離の短い出雲に対し、箱根は全10区間すべて20km以上の長丁場、経験がモノを言う。4年生の奮起がチーム力を押し上げれば、意外な展開もありうる。

 総合力の國學院大学、1万m27分台の3選手を抱える早稲田大学が上位をうかがう。予選会を勝ち抜き、初出場の駿河台大学には31歳、体育教師から転身した4年生今井隆生や留学生の4年ジェームズ・ブヌカなどタレントがそろう。予選会突破の勢いを箱根路にぶつけてほしい。

  • 佐野 慎輔 佐野 慎輔   Shinsuke Sano 尚美学園大学 教授/産経新聞 客員論説委員
    笹川スポーツ財団理事/上席特別研究員
    報知新聞社を経て産経新聞社入社。産経新聞シドニー支局長、外信部次長、編集局次長兼運動部長、サンケイスポーツ代表、産経新聞社取締役などを歴任。スポーツ記者を30年間以上経験し、野球とオリンピックを各15年間担当。5回のオリンピック取材の経験を持つ。日本スポーツフェアネス推進機構体制審議委員、B&G財団理事、日本モーターボート競走会評議員等


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