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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

習い事・スポーツクラブ活動状況からみる幼少年期の子どもの運動・スポーツ

-「指導する」から「一緒に遊ぶ」活動へ-

2018年11月5日

習い事・スポーツクラブ活動状況からみる幼少年期の子どもの運動・スポーツ

子どもの体力・運動能力は1985年をピークに低下している。先日、スポーツ庁から「2017年度体力・運動能力調査」の結果が公表された。過去20年間における18歳と19歳女性の運動実施率の低下が顕著で、「週1回もしない」が6割を占めていた。また、達成意欲が高い子どもほど体力テストの得点も高いこと、幼児期に外でからだを動かして遊ぶ機会が多かった子どもほど、就学後もスポーツを続けている割合が高く、体力テストの結果も高いといった意欲や幼児期の外遊び実施状況との関連性も示されている。

体力・運動能力低下の原因として「身体活動量・運動量の減少」と「基本的な動きの未習得」が指摘されている。かつての子どもは、普段の生活や仲間との自由な遊びを通してたくさんからだを動かし、走る・跳ぶ・投げるなどの動作を身につけていた。しかし、都市化による遊び場の減少や少子化、便利な生活など、子どもの育つ環境は昔と比べて大きく変化し、現代では様々な運動を経験する機会が少なくなったことで、運動量は減り、基本的な動きは自然に身につけることが困難な状況となっている。

放課後や休日に仲間と自由に遊べる環境が減ってしまった今日、子どもたちは運動やスポーツは習いごととして行うのが一般的になってきているのではないだろうか。そこで、本コラムでは習いごとやスポーツクラブなどの組織で行うスポーツ活動からみた子どもの運動・スポーツ実施状況や、幼少年期の子どもの運動・スポーツのあり方について考えてみたい。

1.習い事からみる子どものスポーツ活動

笹川スポーツ財団「子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017」によると、4~11歳の7割が習いごとをしており(図1)、内容は水泳(スイミング)が24.7%と最も多い(表1)。習いごとのなかでもスポーツ系の種目は人気が高く、水泳のほかサッカーや体操、野球、バスケットボールなどが上位に挙がる。

性別・学校期別にみると、男子では未就学児から小学3・4年にかけて水泳(スイミング)が習いごとの第1位である(表2)。小学5・6年になると女子では学習塾、ピアノといった学習・文化系の習いごとが上位を占めるようになるが、男子では水泳(スイミング)、サッカー、野球といったスポーツ系の習いごとが上位にランクインする。幼児では男女ともにスポーツ系の習いごとが人気であるが、学年が進むにつれて女子は学習・文化系の習いごとへとシフトする傾向があり、小学生になると子どものスポーツ活動に男女で違いがみられるようになる。

【図1】習い事の実施率(4~11歳)(全体・性別・性別×学校期別)

【図1】習いごとの実施率(4~11歳)

【表1】子どもの習い事の種類(4~11歳:複数回答)

(%)

順位 4~11歳(n=1,571)
1 水泳(スイミング) 24.7
2 学習塾 15.8
3 ピアノ 14.8
4 英会話 12.7
5 習字 10.9
6 サッカー 8.0
7 体操 5.7
8 そろばん 5.2
9 野球 4.1
10 バスケットボール 3.1
11 空手 3.0
12 テニス 2.9
13 バレエ(ダンス) 1.9
14 陸上競技 1.7
15 絵画 1.6
バレーボール 1.6

注)   はスポーツ系の習いごと

【表2】4~11歳の習い事の種類(性別×学校期別:複数回答)

<男子>

(%)

順位 未就学児(n=162) 順位 小学1・2年(n=174) 順位 小学3・4年(n=219) 順位 小学5・6年(n=271)
1 水泳
(スイミング)
24.71 水泳
(スイミング)
32.81 水泳
(スイミング)
34.71 学習塾 24.4
2 英会話 12.32 英会話 15.52 学習塾 20.52 水泳
(スイミング)
20.7
体操 12.33 学習塾 12.63 サッカー 19.63 サッカー 15.9
4 学習塾 5.6 サッカー 12.64 英会話 10.04 野球 13.3
5 ピアノ 4.95 体操 8.05 習字 9.15 英会話 12.5
6 サッカー 4.36 習字 7.56 野球 8.76 習字 8.5
7 習字 2.57 ピアノ 6.37 そろばん 7.37 バスケット
ボール
7.7
8 ヒップホップ
ダンス
1.98 空手 5.78 空手 6.48 ピアノ 5.2
9 空手 1.29 野球 2.99 体操 5.99 空手 4.4
そろばん 1.210 絵画 2.310 バスケット
ボール
5.510 そろばん 4.1
そろばん 2.3

<女子>

(%)

順位 未就学児(n=143) 順位 小学1・2年(n=148) 順位 小学3・4年(n=198) 順位 小学5・6年(n=243)
1 水泳
(スイミング)
22.41 ピアノ 34.51 ピアノ 25.31 学習塾 25.1
2 ピアノ 20.32 水泳
(スイミング)
27.72 習字 24.22 ピアノ 24.3
3 英会話 7.73 英会話 12.23 水泳
(スイミング)
23.73 習字 18.5
体操 7.74 習字 10.84 英会話 14.14 英会話 15.6
5 学習塾 4.25 バレエ(ダンス) 9.55 学習塾 13.15 水泳
(スイミング)
14.4
バレエ(ダンス) 4.26 学習塾 8.86 そろばん 8.16 そろばん 8.2
7 習字 2.17 そろばん 6.87 ヒップホップダンス 4.5 テニス 8.2
ダンス 2.18 体操 3.48 体操 4.08 バレーボール 5.3
9 絵画 1.49 絵画 2.09 バレーボール 3.09 バスケットボール 4.5
書き方 1.4 ヒップホップダンス 2.010 空手 2.510 体操 3.7
空手 1.4 バレエ(ダンス) 2.5
サッカー 1.4
そろばん 1.4
体育クラブ、
スポーツ教室
1.4

注)   はスポーツ系の習いごと

資料:笹川スポーツ財団「子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017」

2.子どものスポーツ活動にみられる格差

子どものスポーツ活動状況をスポーツクラブの加入率からみると、2017年調査では未就学児が男子41.3%、女子38.8%、小学1・2年が男子60.3%、女子44.6%、小学3・4年が男子72.9%、女子55.7%、小学5・6年が男子77.4%、女子56.6%であった(図2)。学年が上がるにつれて男女差は大きくなり、小学校高学年では20ポイント程度まで差は開く。男子では学年進行にともなってクラブ加入率は大きく増加していくが、女子にはそのような傾向はみられない。子どものスポーツの機会には性別による格差があると言える。

では、女子はどのような運動・スポーツを行っているのだろうか。よく行っている種目を学校期別にみると、男子では小学校低学年から運動遊びの種目とともに、サッカーをはじめとするスポーツ系の種目が上位にランクインするようになるが、女子では小学5・6年までおにごっこ、ぶらんこなどの運動遊び系の種目が中心であり、スポーツ系の種目は少ない(表3)。小学校高学年ごろは、スポーツ少年団や民間クラブなどでスポーツを定期的に行うようになる時期であるが、中学校の部活動でようやくスポーツに触れる機会を持つ女子も多いことがうかがえる。

主に小学校高学年の子どもが参加しているスポーツ少年団では、団員の男女構成が男子69.5%に対して女子は30.5%(日本スポーツ協会,2018)となっている。過去の団員数の男女構成と比べると、30年前の1987年(男子73.3%、女子26.7%)よりは女子の割合は増加傾向にあるが、まだまだ男子に比べて少ないのが現状である(日本体育協会,2013)。

【図2】スポーツクラブへの加入率(性別×学校期別)

図2 スポーツクラブへの加入率(性別×学校期別)

資料:笹川スポーツ財団「子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017」

【表3】過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目(性別×学校期別:複数回答)

(%)

未就学児
順位 男子(n=157) 女子(n=141)
1 自転車あそび 48.4 ぶらんこ 56.0
2 おにごっこ 42.0 おにごっこ 46.1
3 ぶらんこ 37.6 自転車あそび 42.6
4 水泳(スイミング) 31.8 かくれんぼ 37.6
5 かくれんぼ 25.5 鉄棒 29.8

(%)

小学1・2年
順位 男子(n=169) 女子(n=146)
1 おにごっこ 49.7 おにごっこ 53.4
2 水泳(スイミング) 39.6 ぶらんこ 41.8
3 自転車あそび 38.5 なわとび
(長なわとびを含む)
41.1
4 サッカー 35.5 自転車あそび 35.6
5 ドッジボール 29.0 水泳(スイミング) 32.9

(%)

小学3・4年
順位 男子(n=216) 女子(n=195)
1 おにごっこ 50.5 おにごっこ 57.4
2 サッカー 43.5 水泳(スイミング) 33.8
ドッジボール 42.1 ドッジボール 33.8
水泳(スイミング) 41.2 なわとび
(長なわとびを含む)
33.8
5 自転車あそび 29.2 自転車あそび 28.2
ぶらんこ 28.2

(%)

小学5・6年
順位 男子(n=269) 女子(n=236)
1 サッカー 51.3 おにごっこ 44.1
2 ドッジボール 50.6 ドッジボール 35.2
3 おにごっこ 40.1 水泳(スイミング) 33.5
4 水泳(スイミング) 31.2 ぶらんこ 24.2
5 野球 23.4 なわとび
(長なわとびを含む)
22.5
バドミントン 22.5

(%)

中学校期
順位 男子(n=283) 女子(n=224)
1 サッカー 39.9 バドミントン 29.9
2 バスケットボール 30.4 おにごっこ 27.2
3 野球 28.3 バレーボール 23.7
4 卓球 25.8 ジョギング・ランニング 22.8
5 おにごっこ 24.0 バスケットボール 22.3

(%)

高校期
順位 男子(n=217) 女子(n=183)
1 サッカー 34.1 バドミントン 30.1
2 バスケットボール 23.0 ジョギング・ランニング 24.0
3 筋力トレーニング 20.3 バレーボール 22.4
4 ジョギング・ランニング 19.4 バスケットボール 20.8
5 野球 18.9 筋力トレーニング 20.2

注)「よく行った」運動・スポーツ種目:過去1年間に行った運動・スポーツのうち、実施回数の多い種目
資料:笹川スポーツ財団「子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017」

また「子どものスポーツライフ・データ2013」報告書では、子どもの運動・スポーツ実施に影響を与える社会的要因について二次分析を行っている(澤井,2013)。運動・スポーツ系の習いごとの実施率と性別や居住地域、家族形態、保護者のスポーツ経験、世帯年収などの社会的要因変数との関連性をみたところ、性別では女子よりも男子の方が実施率は高く、就園状況では保育園よりも幼稚園に通っている方が高かった。居住地域では北海道や東北で実施率は低く、関東で高い傾向がみられた。家庭環境としては、保護者が大学で運動部に加入していた子どもほど高く、世帯年収別では600万円以上の方が実施率は高いという結果が示されている。

加えて「子どものスポーツライフ・データ2015」報告書によると、世帯年収と運動・スポーツ、運動遊びの実施種目数との関連をみたところ、運動・スポーツ系の種目では世帯年収による影響を受けていたが、運動遊び系の種目は経済格差の影響を受けないとの分析結果が示されている(鈴木,2015)。

このように、習いごととして行う運動・スポーツ活動の実施には少なからず保護者や居住地域、性別といった社会的環境による格差が生じてしまうと考えられる。子どもたちが家庭環境や性別だけでなく、体力・運動能力の高低、障がいの有無などにも左右されずに、運動・スポーツが実施できる機会を提供する方策として「子どもによる自由な遊び」は重要な視点であると言える。

3.低年齢化する子どものスポーツ活動

4~11歳のスポーツクラブの加入率の推移を学校期別にみたものを表4に示した。未就学児の加入率は2015年では32.8%、2017年では40.1%であり、過去2年間で7.3ポイント増加している。

スポーツ少年団の団員数は、小学校4~6年生の割合は2013年では64.2%、2017年では62.1%と減少傾向にあるが、小学校1~3年生の割合は2013年23.4%、2017年24.8%と増加しており、子どもの組織スポーツ活動は低年齢化しつつある(日本スポーツ協会,2018)。スポーツ少年団では2017年より幼児の加入が可能となり、現在4,486人が登録している。団員数全体に占める幼児の割合は1%に満たないが、今後は増加していくと考えられる。

スポーツ指導者はこれまで小学校高学年が指導対象の中心であったが、今後は幼児や小学校低学年の子どもたちも指導の対象となることから、子どものスポーツ指導に関する知識や技能の習得はより重要な課題となると言える。

【表4】学校期別にみるスポーツクラブへの加入率の推移(2015年~2017年)

2015年 2017年
未就学児(n=287) 32.8 未就学児(n=299) 40.1
小学1・2年(n=378) 55.3 小学1・2年(n=322) 53.1
小学3・4年(n=448) 63.6 小学3・4年(n=412) 64.8
小学5・6年(n=311) 72.0 小学5・6年(n=512) 67.6

注)スポーツクラブ:学校のクラブ活動や運動部活動,民間のスポーツクラブ(スイミングクラブや体操クラブなど),地域のスポーツクラブ(スポーツ少年団や地域のスポーツ教室など)を含む
資料:笹川スポーツ財団「子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017」

4.幼少年期の子どもの運動・スポーツのあり方とは

-「スポーツ指導者」から「プレイリーダー」へ-

スポーツを始めるのに最適な条件を備えている時期は、初歩的なスポーツ技能の習得が可能になる小学校高学年ごろであるとされる(Meinel,1981)。しかし、幼児期や小学校低学年期にからだを動かす経験が不十分である場合、スポーツ技能がスムーズに獲得されず、運動・スポーツ実施に困難がともなう「習熟の障壁」にぶつかる。特に、幼児期は人間の生涯にわたる運動全般の基礎・基本となる「走る」「跳ぶ」「投げる」などの動きが習得される時期であり、いかに多様で豊かな運動経験ができるかが重要となろう。

しかし、子どもがからだを動かして遊ぶ機会の減少や、子どものスポーツの競技化、単一種目のスポーツクラブ、長時間・高頻度の活動など子どもの運動・スポーツには課題も多い。幼児や小学校低学年の子どもたちの組織スポーツ活動が盛んになりつつある中、発達に応じた運動・スポーツ、運動遊びの機会の提供と人材の育成が不可欠となる。

そこで、近年では子どもに自由で豊かな遊びや多様な運動の機会を保障するため「プレイリーダー」を育成する取り組みが行われ始めている。プレイリーダーは遊びを先導し、子どもの主体的な運動遊びを引き出す役割を担う。スポーツ庁は子どもの運動習慣アップのため、運動遊びプログラムを通じて子どもが主体的に活動できるようプレイリーダーの養成を行っている。放課後子供教室や幼稚園等にプレイリーダーを派遣し、運動遊びプログラムを提供することで、子どもたちが多様な動きを身に付けるとともに、からだを動かす楽しさを感じることを目指している。

また、日本スポーツ協会は様々な動きを楽しみながら身につける運動プログラム「アクティブ・チャイルド・プログラム」を開発し、スポーツ少年団や都道府県体育協会、総合型地域スポーツクラブ、幼稚園や保育園、小学校などへ普及活動を行っている。民間企業でもミズノ株式会社が運動遊びプログラムの開発とプレイリーダーの育成を行い、体力・運動能力の向上を目指した事業が展開されている(笹川スポーツ財団,2017)。 プレイリーダーとなる人材は、地域や民間のスポーツ指導者、学校・幼稚園の教員、保育士、保護者などが挙げられる。子どもと一緒に遊びを考え、工夫し、楽しむ姿勢が大切であり、これまでの「子どもに教える」から「子どもを観察し、支援する」活動への発想の転換が求められる。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所研究員 武長 理栄

参考文献

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
担当研究者