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コロナ禍で変わった子どもの運動・スポーツ実施環境

―行政や地域による子どものスポーツを支える仕組みづくりを―

2022年11月10日

コロナ禍で変わった子どもの運動・スポーツ実施環境

はじめに

 近年、子どもの体力低下が社会問題となっている中で、幼児期から運動習慣を身につけることの重要性がスポーツ関係者をはじめ社会全体で認識されつつある。しかし、幼児の運動・スポーツ実施状況を示す全国的なデータは、笹川スポーツ財団が実施する「411歳のスポーツライフに関する調査」以外にほとんどみられず、幼児のデータに基づいた取り組みは不足していると考えられる。さらに、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって、幼児の運動・スポーツ実施状況はさらなる変化を強いられ、現状を踏まえた取り組みは急務と言える。

そこで、本稿では新型コロナ感染拡大前に実施した「411歳のスポーツライフに関する調査2019」と感染拡大後に実施した2021年調査より、未就学児、小学12年のスポーツ施設の利用状況や主に一緒に行う人の変化に着目し、新型コロナ感染拡大が子どもたちの運動・スポーツ、運動あそびの実施にどのような影響を与えたか検討した。

 

1. 未就学児、小学12年の運動・スポーツ施設利用状況の変化

 表1には、新型コロナ感染拡大前後の運動・スポーツ施設利用率を性・就学状況別に示した。2021年の利用率は未就学児では男女とも「公園」が最も高く、次いで「自宅や友人・知人などの家の周り」であった。小学16年では男女とも「園庭・校庭・学校のグラウンド」が最も高く、「公園」「自宅や友人・知人などの家の周り」が続く。利用率の順位は、新型コロナ感染拡大前後で大きな変化はみられず、子どもたちの運動・スポーツ、運動あそびの主な実施場所は学校施設や公園、自宅周辺であることが読み取れる。

新型コロナ感染拡大前後で差が大きい施設に着目すると、「公園」は男女未就学児、女子小学12年で15ポイント以上増加し、「自宅や友人・知人などの家の周り」は男子小学12年で、「自宅や友人・知人などの家」は女子小学12年で10ポイント以上増加した。一方、「園庭・校庭・学校のグラウンド」は女子未就学児で10.0ポイント減少した。

 10ポイント以上の差は未就学児と小学12年に確認でき、小学3年以上は最大でも8.5ポイントの変化にとどまった。また、利用率は「公園」や「自宅や友人・知人などの家の周り/家」が増加し、「園庭・校庭・学校のグラウンド」「スイミングスクール(スイミングクラブ)」「スポーツクラブ(フィットネスクラブ)」などが減少した。これらの変化は新型コロナ感染拡大により学校施設や公共・民間スポーツ施設の利用が制限され、子どもたちが自宅やその周辺、利用制限のなかった公園で運動・スポーツ、運動あそびを実施している状況を示した結果と推察できる。新型コロナ感染拡大によるスポーツ施設利用への影響は、特に、未就学児と小学12年に対して大きかったと考えられる。

【表1】 4~11歳の運動・スポーツ施設の利用率(性・就学状況別:複数回答)
男子 未就学児 小学1・2年 小学3・4年 小学5・6年
2019年
(n=164)
2021年
(n=147)
2019年
(n=162)
2021年
(n=172)
2019年
(n=216)
2021年
(n=160)
2019年
(n=228)
2021年
(n=241)
園庭・校庭・学校のグラウンド 35.4 26.5 -8.9 67.9 59.9 -8.0 74.5 66.3 -8.2 67.5 75.5 8.0
公園 43.3 58.5 15.2 44.4 42.4 -2.0 30.1 36.9 6.8 25.9 29.9 4.0
自宅や友人・知人などの家の周り 25.0 32.0 7.0 17.9 30.2 12.3 19.4 26.9 7.5 18.0 20.7 2.7
スイミングスクール(スイミングクラブ) 15.9 14.3 -1.6 25.9 17.4 -8.5 21.3 21.9 0.6 14.9 15.8 0.9
自宅や友人・知人などの家 15.9 13.6 -2.3 6.2 12.2 6.0 4.6 13.1 8.5 9.6 10.4 0.8
幼稚園・保育園・学校 20.7 22.4 1.7 11.1 9.9 -1.2 12.0 10.0 -2.0 7.9 10.4 2.5
幼稚園・保育園・学校の体育館 1.8 2.7 0.9 9.9 7.0 -2.9 13.0 15.0 2.0 18.4 18.7 0.3
自宅や友人・知人などの家の庭 8.5 10.9 2.4 7.4 9.3 1.9 8.3 13.1 4.8 3.5 9.5 6.0
スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団を含む)、トレーニングセンター・ジム 10.4 6.1 -4.3 16.7 12.2 -4.5 10.6 5.0 -5.6 9.2 5.4 -3.8
体育館 3.7 6.1 2.4 4.9 5.2 0.3 6.5 8.8 2.3 16.2 8.3 -7.9
女子 未就学児 小学1・2年 小学3・4年 小学5・6年
2019年
(n=158)
2021年
(n=145)
2019年
(n=158)
2021年
(n=165)
2019年
(n=185)
2021年
(n=193)
2019年
(n=216)
2021年
(n=221)
園庭・校庭・学校のグラウンド 27.2 17.2 -10.0 59.5 49.7 -9.8 55.7 56.0 0.3 59.3 57.9 -1.4
公園 46.2 65.5 19.3 32.3 49.1 16.8 36.8 40.9 4.1 29.2 36.2 7.0
自宅や友人・知人などの家の周り 29.1 32.4 3.3 32.9 33.3 0.4 24.9 31.6 6.7 22.7 27.6 4.9
スイミングスクール(スイミングクラブ) 16.5 12.4 -4.1 19.0 17.0 -2.0 16.8 20.2 3.4 12.0 9.0 -3.0
自宅や友人・知人などの家 15.8 22.8 7.0 7.6 17.6 10.0 10.8 15.0 4.2 8.3 10.9 2.6
幼稚園・保育園・学校 26.6 20.0 -6.6 13.3 12.7 -0.6 14.6 14.0 -0.6 14.4 11.3 -3.1
幼稚園・保育園・学校の体育館 4.4 1.4 -3.0 7.6 4.2 -3.4 16.2 14.0 -2.2 22.2 19.9 -2.3
自宅や友人・知人などの家の庭 9.5 13.1 3.6 11.4 13.3 1.9 7.6 8.3 0.7 4.6 10.0 5.4
スポーツクラブ(フィットネスクラブ・少年団を含む)、トレーニングセンター・ジム 4.4 8.3 3.9 13.3 7.9 -5.4 11.4 9.3 -2.1 9.7 5.0 -4.7
体育館 3.2 4.1 0.9 7.0 2.4 -4.6 8.6 8.8 0.2 12.0 8.6 -3.4

注1) 黄色 :5ポイント以上の変化  水色 :10ポイント以上の変化
注2)「差」は2019年(%)-2021年(%)
注3)2021年の4~11歳全体で利用率の高い上位10施設を示した

2. 未就学児・小学1・2年の主に一緒に行う人の変化

 運動・スポーツ施設利用率の変化が大きかった未就学児と小学12年の実施状況を、より詳細に把握するため、利用率の高い「園庭・校庭・学校のグラウンド」「公園」「自宅や友人・知人などの家の周り」に絞り、主に一緒に行う人の変化を表2に示した。

 まず、「園庭・校庭・学校のグラウンド」をみると、「友だち」との割合が、男子小学12年は9.2ポイント減少し、男子未就学児と小学12年、女子未就学児では10ポイント以上減少した。新型コロナ感染拡大前である2019年は「友だちと」の割合がいずれも85%以上と、他よりも高い値を示している。学校などのグラウンドで友だちと一緒に遊ぶことは、この年代の子どもにとっては当たり前であったと思われる。しかし、新型コロナ感染拡大の影響により、友だちと集まって遊ぶことがままならない状況に変化した様子が確認できる。

 次に「公園」をみると、「友だちと」の割合はグラウンドと同じように減少傾向を示した。未就学児では男女ともに約8ポイント減、小学12年は約20ポイント減と、特に小学12年で大きく減少した。感染拡大前のように公園で友だちと一緒に運動・スポーツ、運動あそびができていない実態が明らかになった。一方、「公園」の「家族と」の割合は、いずれの性・就学状況においても増加している。未就学児で710ポイント増え、小学12年は15ポイント以上増加した。新型コロナ感染拡大の影響により、未就学児と小学12年が公園で一緒に運動・スポーツ、運動あそびをする相手は友だちから家族へと変化している。

 最後に「自宅や友人・知人などの家の周り」をみると、男子の未就学児、小学12年では表1に示した利用率は増加したものの、一緒に行う人に大きな変化はみられなかった。女子では、表1の利用率は男子ほどの変化はなかったものの、いずれの就学状況でも「家族と」の割合が増加した。一方、「友だちと」「ひとりで」の割合が減少しており、性別による違いが確認された。

 利用率の高い3施設における友だちとの実施は、新型コロナ感染拡大前である2019年から減少し、グラウンドでは習いごとなどの仲間やひとりで、公園や家の周りでは家族との実施が増加した。感染予防の観点からも、不特定多数の友だちと遊ぶことができず、代わりに家族と実施せざるを得ない状況が読み取れる。

【表2】運動・スポーツを主に一緒に実施する相手
男子 利用施設 n数 ひとりで 家族と 友だちと 習いごとやスポーツクラブの仲間と
2019 2021 2019 2021 2019 2021 2019 2021 2019 2021
未就学児 園庭・校庭・学校のグラウンド 130 82 2.3 7.3 5.0 3.1 0.0 -3.1 86.2 69.5 -16.7 6.2 17.1 10.9
公園 134 203 2.2 4.4 2.2 61.9 69.5 7.6 34.3 25.6 -8.7 1.5 0.5 -1.0
自宅や友人・知人などの家の周り 70 80 4.3 1.3 -3.0 71.4 76.3 4.9 24.3 22.5 -1.8 0.0 0.0 0.0
小学
1・2年
園庭・校庭・学校のグラウンド 239 224 2.9 6.7 3.8 1.3 1.3 0.0 89.1 79.9 -9.2 6.7 9.8 3.1
公園 139 133 6.5 6.0 -0.5 24.5 42.1 17.6 64.7 45.9 -18.8 3.6 4.5 0.9
自宅や友人・知人などの家の周り 44 84 18.2 17.9 -0.3 56.8 56.0 -0.8 25.0 26.2 1.2 0.0 0.0 0.0
女子 利用施設 n数 ひとりで 家族と 友だちと 習いごとやスポーツクラブの仲間と
2019 2021 2019 2021 2019 2021 2019 2021 2019 2021
未就学児 園庭・校庭・学校のグラウンド 107 56 0.0 7.1 7.1 0.9 0.0 -0.9 98.1 87.5 -10.6 0.9 5.4 4.5
公園 159 203 5.0 3.9 -1.1 58.5 68.5 10.0 35.8 27.6 -8.2 0.6 0.0 -0.6
自宅や友人・知人などの家の周り 76 88 15.8 8.0 -7.8 61.8 81.8 20.0 22.4 10.2 -12.2 0.0 0.0 0.0
小学
1・2年
園庭・校庭・学校のグラウンド 212 183 4.7 4.4 -0.3 1.9 1.1 -0.8 91.5 90.7 -0.8 1.9 2.7 0.8
公園 106 158 3.8 7.0 3.2 29.2 44.3 15.1 66.0 46.8 -19.2 0.0 1.3 1.3
自宅や友人・知人などの家の周り 73 92 21.9 6.5 -15.4 45.2 55.4 10.2 32.9 35.9 3.0 0.0 0.0 0.0

注1) 黄色 :5ポイント以上の変化  水色 :10ポイント以上の変化
注2)「差」は2019年(%)-2021年(%)

3. 家族との運動・スポーツ、運動あそびの実施状況

 表12の結果から、新型コロナ感染拡大前後で未就学児と小学12年の運動・スポーツ、運動あそびの実施場所は、学校施設などが減少し公園や自宅周辺が増加している。また、主に一緒に行う人は、友だちから家族へと変化する傾向が確認された。そこで、実際に新型コロナ感染拡大前後で、普段の家族との運動・スポーツ、運動あそびの実施状況がどのように変化したか図1に示した。

 「よくしている」の割合は、男子未就学児(18.8%→29.1%)、小学12年(13.4%→24.6%)において、2019年から大幅な増加がみられた。女子の未就学児、小学12年も男子ほどの変化はなかったものの割合は増加した。すべての性・就学状況で家族との実施機会は増え、新型コロナ感染拡大前後で未就学児、小学12年の運動・スポーツ実施における家族の関わりは深くなったと言える。

4.行政や地域スポーツ団体による子どもの運動・スポーツを支える仕組みづくりを

 本稿では、運動・スポーツ施設の利用状況と主に一緒に行う人の新型コロナ感染拡大前後のデータから、未就学児と小学12年の運動・スポーツ、運動あそびの実施状況の変化を詳細に検討してきた。その結果、新型コロナ感染拡大の影響により、未就学児と小学12年は、感染拡大前のように友だちとグラウンドや公園で運動・スポーツ、運動あそびができなくなる一方、公園や家、家の周りで家族と行っている様子が確認された。つまり、新型コロナの感染拡大は、子どもだけではなく家族にも大きな変化をもたらした。家族の支えがあったからこそ、子どもたちが満足に身体を動かせる状況もあったのではないだろうか。コロナ禍で子どもたちの運動・スポーツ実施環境の変化や体力・運動能力の低下が懸念される中、家族のサポートにも限界がある。今後、行政や地域のスポーツ団体が中心となり、子どもの運動・スポーツ実施環境の整備に加え、家庭での実施の質を高める支援が求められている。

 コロナ禍における子どもの運動・スポーツの促進は、スポーツ庁の「Sport in Life プロジェクト」や自治体独自の取り組みなど、さまざまな形で展開されている。笹川スポーツ財団と連携しながら、地域が抱えるスポーツに関する課題解決に取り組む宮城県角田市もそのひとつである。角田市では、地域の主要な既存スポーツ団体を母体とする新たな地域スポーツプラットフォームである地域スポーツ運営組織「スポーツネットワークかくだ」(以下、スポネットかくだ)を20194月に設立し、この組織が中心となりさまざまな事業に取り組んでいる。202210月現在スポネットかくだは、角田市スポーツ協会、スポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブ、地域振興公社、スポーツ推進委員協議会、公共施設指定管理者、道の駅かくだ運営会社、仙台大学の9団体で構成されている。

 角田市の未就学児の運動・スポーツ振興施策に関しては、市内保育所・幼稚園等に通う45歳児を対象とした運動あそび出前講座や乳幼児健診での親子運動あそび講座、親子で参加できる運動あそび講座などを「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」として展開している。参加する子どもが運動あそびそのものを楽しみながら、運動習慣の改善や運動・スポーツを好きになってもらい、元気な子どもの育成、豊かな人生を送るための基盤づくりを目的に取り組んでいる。

 2020年度から継続して取り組んだ結果、子どもたちの運動・スポーツの実施意向や気持ちに加え、家族との実施機会の増加などの効果が確認されている。さらに角田市では、家庭での親子運動あそびを促進するために、乳幼児健診の運動あそび講座などに参加した保護者に、年齢に応じた「親子ふれあい体操」のリーフレット(0歳児、満1歳、2歳半、3歳児)を配布し、家庭でも気軽に効果的な運動ができるよう周知に取り組んでいる。

 このようにコロナ禍においても、行政や地域のスポーツ団体が中心となり、子どもたちに運動・スポーツ、運動あそびの機会を提供し、実施意向などが向上した好事例も存在する。幼児期からの運動習慣は小学校入学後の体力(スポーツ庁,2016)や成人期の運動習慣(鈴木,2011)にも影響を及ぼすと言われており、この時期からの運動習慣の確立は重要である。しかし、近年ではスマートフォンや携帯ゲーム機などの普及により、子どもたちのスクリーンタイムの増加や生活習慣の乱れによる運動習慣への影響が懸念されている。新型コロナの感染拡大はこのような状況にさらに拍車をかけ、社会や環境の変化の影響を受けやすい子どもの、運動・スポーツ実施を含めた生活そのものに大きな変化をもたらした。withコロナ社会、postコロナ社会を迎えるにあたり、子どもたちが運動・スポーツの楽しさに触れながら、運動習慣を確立するためには、家族を含め自治体や地域のスポーツ団体が中心となり、子どもの運動・スポーツ、運動あそびを支える仕組みづくりが望まれる。

参考文献

  • スポーツ庁(2016)平成28年度体力・運動能力調査報告書
  • 鈴木宏哉(2011)成人期を見据えた子どもの頃の身体活動経験,体育の科学61:pp653-660
データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴をの把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2022年度

担当研究者