SSFは、2024年8月~9月に実施した「スポーツ振興に関する全自治体調査2024」の調査結果を発表しました。
スポーツ庁設置から約10年が経過し、社会情勢の変化に伴うスポーツ施策の転換がみられ、スポーツ行政の機能的・効果的な推進が期待されています。本調査は地方自治体のスポーツ施策の実態を把握し、各地域におけるスポーツ推進の一助となるデータの収集を目的に実施しました。1,187自治体から回答を得た調査結果では、スポーツ担当部署の実態やスポーツ推進(振興)計画の重点テーマなどが明らかとなりました。また、2015年調査との比較やスポーツ行政の喫緊の課題である運動部活動の地域連携・地域移行の進捗状況なども調査しています。
主な調査結果
■スポーツ担当部署
2024年調査の都道府県は「教育委員会」が12.8%、「首長部局」が87.2%、市区町村は「教育委員会」が77.1%、「首長部局」が22.7%であった。2015年調査の都道府県では「教育委員会」が55.3%と約半数を占めたが、2024年調査では9割近くが「首長部局」であり、都道府県のスポーツ担当部署は教育委員会から首長部局へ移管した。市区町村では「教育委員会」が2015年調査より7.2 ポイント減少、「首長部局」が7.5ポイント増加した。市区町村の人口規模別にみると、「1万人未満」では「教育委員会」が99.0%と、ほぼすべての自治体で教育委員会がスポーツ行政を担っている現状が明らかになった。「50万人以上」の自治体では「首長部局」が92.3%であった。
図表1. スポーツ担当部署(都道府県/市区町村)
資料:全自治体調査2015, 2024
図表2. スポーツ担当部署(市区町村・人口規模)
資料:全自治体調査2024
障害者スポーツの主たる担当部署は、都道府県では「首長部局(スポーツ関連)」57.4%、「障害福祉関連部署」38.3%、「教育委員会(スポーツ関連)」と「その他」が2.1%であった。市区町村では「教育委員会(スポーツ関連)」42.7%、「障害福祉関連部署」36.5%、「首長部局(スポーツ関連)」12.7%であった。2015 年調査と比較すると、「障害福祉関連部署」の割合が都道府県では89.4%から51.1ポイント、市区町村では54.5%から18.0ポイント減少した。約10年で障害者スポーツの主たる担当部署は、障害福祉からスポーツ振興部署への統合・移管が進んでいる。
■スポーツ担当部署の専任職員数
スポーツ担当部署の専任職員数をみると、都道府県では「20人以上」が63.8%と最も高く、「10~19人」が27.7%、「5~9人」が6.4%、「3~4人」が2.1%となった。市区町村では「1~2人」「3~4人」「5~9人」がそれぞれ3割弱であり、「0人」を含めると約9割の自治体が10人未満であった。スポーツ担当部署の専任職員数は都道府県、市区町村ともに2015 年調査から大きな変化はみられなかった。
■スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲット
スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲットは、都道府県、市区町村ともに「子どものスポーツ」が最も高く、それぞれ95.7%、84.8%であった。都道府県では「競技力の向上」91.5%、「障害者のスポーツ」85.1%が続き、市区町村では「スポーツ施設・環境の整備」が77.4%、「住民の健康増進」が76.8%で高い割合を示した。「競技力の向上」は都道府県では2番目に高く91.5%、市区町村では7番目の53.6%、「住民の健康増進」は市区町村では3番目の76.8%、都道府県では同率7番目の59.6%であり、都道府県と市区町村で重点テーマ・ターゲットに違いがみられた。
図表3. スポーツ推進(振興)計画の重点テーマ・ターゲット(都道府県/市区町村:複数回答)
資料:全自治体調査2024
■運動部活動の地域連携・地域移行の担当部署
地域連携・地域移行の主たる担当部署をたずねたところ、都道府県、市区町村ともに「教育委員会の学校関連部署」が最も高く、それぞれ46.8%、60.4%であった。「教育委員会のスポーツ関連部署」は都道府県、市区町村ともに3割程度であり、合計すると都道府県では78.7%、市区町村では89.4%となり、多くの自治体で地域連携・地域移行は教育委員会が主導している。
地域連携・地域移行に関わりのある部署数は、都道府県では「1部署」が21.3%、「2部署」が61.7%、「3 部署以上」が17.0%であった。市区町村は「1部署」が33.2%、「2部署」が62.3%、「3部署以上」が4.5%であった。都道府県、市区町村ともに「2部署」が最も高く6 割以上の自治体が複数の部署で地域連携・地域移行に取り組む実態が明らかとなった。「2部署」の主な組み合わせは「教育委員会の学校関連部署」と「教育委員会のスポーツ関連部署」、「教育委員会の学校関連部署」と「首長部局のスポーツ関連部署」の2つが多い。
図表4. 運動部活動の地域連携・地域移行の担当部署数(都道府県/市区町村・人口規模)
資料:全自治体調査2024
■休日の運動部活動の地域連携・地域移行の取り組み状況
休日の運動部活動の地域連携・地域移行の取り組み状況をみると、都道府県では「地域のすべての公立中学校で実施している」8.5%、「地域の一部の公立中学校で実施している」70.2%、「現在検討中である」19.1%、「実施しない」2.1%であった。市区町村全体では「地域のすべての公立中学校で実施している」18.9%、「地域の一部の公立中学校で実施している」14.1%と、両者を合わせる33.0%となり、全国の3割程度の市区町村が地域連携・地域移行に取り組んでいる状況が確認できる。