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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

セミナー「子供のスポーツ」

筋トレ人口

2022年の20歳以上の筋トレ人口(実施人口)は1,640万人、男性:941万人、女性:688万人

笹川スポーツ財団では、2022年6月から7月にかけて「スポーツライフ・データ(スポーツライフに関する調査)」を実施しました。
この「スポーツライフ・データ」の中から、筋トレ人口(実施人口)・実施率の推移を解説します。


筋力トレーニング実施率は2000年以降右肩上がりで増加してきた。しかし、近年の実施率をみると2020年から2022年にかけて全体として減少傾向にある。男女ともに20~30代の若年層において顕著であり、とくに30代女性の減少幅が大きい。若年層の傾向に反して、60代以上の高齢層では2020年に減少がみられたものの、男性では2022年に増加へと転じている。

 筋力トレーニング実施率は2000年以降右肩上がりで増加してきた。2000年当時、フィットネス業界ではターゲット層の拡大に向けた業態開発が大手企業を中心に積極的に行われ始めていた。しかし景気の低迷やライフスタイルの変化に伴い、フィットネス関連消費が伸び悩む一方、2010年ごろから健康志向が高い層の細かいニーズに対応すべくマイクロジムやパーソナルトレーナーといったオーダーメイドのトレーニングにも注目が集まった。2013年健康増進法施行に伴い、健康寿命の延伸を目的とした健康づくりが社会課題として認識され始める。2017年度にはフィットネス関連業界の収入高合計が7年連続前年度比増、またフィットネスクラブ会員数も過去10年で最高を記録し)、世間でも筋トレやフィットネスがブームとして認識されるようになった。

 しかし、近年の実施率をみると2020年から2022年にかけて全体として減少傾向にある。男女ともに2030代の若年層において顕著であり、とくに30代女性の減少幅が大きい。コロナ禍での在宅勤務や行動制限をきっかけに実施を始めた人たちが、2022年時点までに継続的な実施に至っていない可能性がうかがえる。若年層の傾向に反して、60代以上の高齢層では2020年に減少がみられたものの、男性では2022年に増加へと転じている。トレーニング施設でのクラスター感染の影響から“ジム控え”をしていた人たちが、行動緩和の兆しが見え始めた2022年頃から徐々に実施を再開してきた可能性がある。

シニア政策オフィサー 水野 陽介


1. 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率(年1回以上)の年次推移:全体・性別

 全体の年1回以上の実施率(図1)をみると、2000年(7.3%)から2020年(17.6%)まで20年間にわたって右肩上がりに上昇した。しかし2022年(15.9%)は減少に転じ、2018年ごろの水準まで落ち込んでいる。

 性別にみると、総じて女性よりも男性のほうが高いものの2020年までは男女ともに上昇していた。特に女性は2000年の4.4%から約3.5倍の16.2%まで増加した。2022年は男女ともに減少に転じたが、男性(前回比0.1ポイント減[19.0%→18.9%])に対して女性(前回比3.3ポイント減[16.2%→12.9%])のほうがより減少幅が大きい。2000年と2022年で比較すると全体で8.6ポイント増(7.3%→15.9%)となり、この22年間で性別を問わず広く浸透が進んだものとみられる。

1-2.筋トレ実施率(年1回以上)と推計実施人口(万人)の年次推移(全体・性別)

図2 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率と推計人口の年次推移:全体(20歳以上)

笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)より作成

表1 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の年次推移:全体・性別(20歳以上)
調査年 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022
全体 実施率(%) 7.3 8.5 9.6 8.4 11.1 11.5 12.2 13.0 13.5 15.1 17.6 15.9
推計人口(万人) 726 856 977 862 1,148 1,194 1,268 1,350 1,402 1,566 1,820 1,640
男性 実施率(%) 10.3 11.6 12.3 11.7 14.6 14.6 15.7 17.1 17.0 17.3 19.0 18.9
推計人口(万人) 497 566 606 581 730 733 789 857 853 866 949 941
女性 実施率(%) 4.4 5.6 7.0 5.3 7.7 8.4 8.8 9.0 10.0 12.9 16.2 12.9
推計人口(万人) 225 290 367 281 411 450 473 483 537 692 867 688

注1)推計人口は住民基本台帳の成人人口(人)に実施率(%)を乗じて算出
注2)推計値を算出する際に端数が発生するため、全体の人口と男性・女性を合計した人口は必ずしも一致しない

笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)より作成

 同データから年1回以上の推計実施人口を算出すると、2022年では約1,640万人が筋力トレーニングを実施しているとみられ、2000年の約726万人から2倍以上増加した(図2)。男性の推計実施人口は約941万人、女性では約688万人で2000年と比較すると男性で約2倍、女性では約3倍に増加した(表1)。

2.年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の年次推移:年代別

表2 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移:年代別(20歳以上)
調査年 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022
全体(%) 20歳代 15.3 18.8 18.4 19.8 19.6 16.4 23.8 23.7 18.8 19.9 29.7 23.3
30歳代 9.1 12.1 11.6 10.2 17.0 16.5 16.5 15.1 17.8 18.5 23.1 17.6
40歳代 8.7 6.8 13.2 10.1 12.1 12.0 11.4 13.0 15.3 15.3 16.2 15.8
50歳代 4.9 6.8 7.9 5.8 7.4 9.7 9.3 12.3 12.0 14.3 18.1 16.8
60歳代 2.9 4.4 4.5 5.8 4.8 8.5 7.1 9.4 10.6 12.1 10.2 13.3
70歳以上 1.4 1.9 2.3 1.6 4.4 4.3 5.9 5.7 6.7 11.2 11.7 10.7

 年代別に年1回以上の実施率(図3)をみると、この20年間は全ての年代で実施率は上昇傾向にあり、また若い年代ほど実施率が高い傾向にある。一方で年代が高いほど緩やかかつ安定的な上昇がみられるのに対し、20歳代・30歳代ではやや起伏があり、増加傾向にありながらも年度によって変動的に推移している。2022年は20~30歳代でやや減少がみられたが、40歳代以上では比較的変化は小さく、60歳代では上昇が確認された。

3. 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の年次推移:性別×年代別

図4 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移:男性・年代別(20歳以上)

図5 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移:女性・年代別(20歳以上)

笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)より作成

表3 年1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移:性・年代別(20歳以上)
調査年 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022
男性(%) 20歳代 20.9 25.8 21.8 27.2 26.6 19.3 32.9 28.7 23.9 21.6 32.6 26.9
30歳代 13.8 17.1 17.7 16.1 23.3 22.7 21.9 20.7 22.4 20.4 27.2 23.8
40歳代 12.9 9.2 13.5 13.2 11.1 16.3 14.5 17.3 20.0 19.1 15.9 17.4
50歳代 6.4 7.7 12.3 8.0 9.2 11.2 7.8 15.2 13.9 14.5 19.8 18.7
60歳代 3.7 5.5 5.5 6.6 8.2 10.2 9.2 12.3 13.2 13.4 9.4 14.9
70歳以上 1.0 3.4 2.0 2.9 5.4 4.4 7.4 8.7 7.6 14.9 12.4 13.8
女性(%) 20歳代 9.4 11.5 14.4 12.6 12.2 13.3 14.3 18.7 13.5 18.2 26.6 19.3
30歳代 4.9 7.4 6.4 5.6 10.4 10.0 10.9 9.2 13.1 16.6 18.8 11.2
40歳代 4.8 4.5 13.0 7.3 13.1 7.8 8.1 8.6 10.4 11.3 16.6 14.1
50歳代 3.2 6.0 3.9 3.4 5.6 8.2 10.8 9.6 10.2 14.2 16.4 14.9
60歳代 2.1 3.4 3.4 5.0 1.7 6.9 5.1 6.6 8.1 10.8 10.9 11.7
70歳以上 1.7 0.6 2.5 0.6 3.5 4.1 4.7 3.2 5.9 8.1 11.2 8.0

笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)より作成

 さらに性・年代別で年1回以上の実施率(図4・5)をみると、やはり女性よりも男性のほうが高いが年代ごとの変動幅も男性の方が大きく、また女性ではおおよそ0-20%の範囲で推移しているのに対し、男性ではおおよそ0-30%とより広い範囲で推移している。60歳代以上でも実施率は上昇しているものの同性内での年代差も男性のほうが総じてより大きい。

4. 週1回以上の「筋力トレーニング」実施率の年次推移:全体・性別

図6 週1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移(2000〜2022年):全体・性別(20歳以上)

図6 週1回以上の「筋力トレーニング」実施率の推移(2000〜2022年):全体・性別(20歳以上)

笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(2000~2022)より作成

 ここまでは年1回以上の実施率について整理し、性別・年代にかかわらず多くの人々にとって筋力トレーニングに取り組む機会が増えた20年であった様子がうかがえる。 ここでさらに週1回以上の実施率(図6)についてみると、年1回以上よりも緩やかではあるものの全体・性別ともに20年間にわたって上昇した。2022年の全体の実施率は、2000年の4.5%から7.5ポイント増加し12.0%であった。この20年間で定期的に筋力トレーニングを実施する層の増加が確認できる。性別にみると男性14.1%、女性9.9%であり、年1回以上と同様にすべての調査年において男性の実施率が高い。また、女性の実施率は2014年以降の伸び幅が大きく、これまで最大で5.1ポイント差(2014年)あった男女差が2020年には2.0ポイントまで縮まった。年1回以上実施率の推移(図1)とグラフを重ねてみると、週1回以上の実施率も全体として右肩上がりに増加している。一方で2022年の減少もみられることから、定期的な実施層においても新型コロナウイルス感染拡大に関する影響が一定程度あったことが推察される。

参考資料

1) 株式会社帝国データバンク「フィットネスクラブ経営業者の実態調査-フィットネスクラブの収入高、7年連続増~新興企業で増収目立つ~」2018.09.26https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p180906.html

スポーツライフ・データ2022」調査概要

調査内容
運動・スポーツ実施状況、運動・スポーツ施設、スポーツクラブ・同好会・チーム、スポーツ観戦、スポーツボランティア、日常生活における身体活動、生活習慣・健康 他
調査対象
全国の市区町村に居住する満18歳以上の男女3,000人(男性: 1,503人、女性1,497人)
地点数
300地点(大都市90地点、人口10万人以上の市122地点、人口10万人未満の市64地点、町村24地点)
調査時期
2022年6月10日~7月10日

データの使用申請

最新の調査をはじめ、過去のスポーツライフ・データのローデータ(クロス集計結果を含む)を提供しています。

活用例

  1. 政策立案:所属自治体と全国の比較や調査設計に活用(年齢や性別、地域ごとの特徴を把握)
  2. 研究:研究の導入部分の資料や仮説を立てる際に活用(現状の把握、問題提起、仮説、序論)
  3. ビジネス:商品企画や営業の場面で活用(市場調査、データの裏付け、潜在的なニーズの発見)
テーマ

スポーツライフ・データ

キーワード
年度

2022年度

担当研究者