筋力トレーニング実施率は2000年以降右肩上がりで増加してきた。2000年当時、フィットネス業界ではターゲット層の拡大に向けた業態開発が大手企業を中心に積極的に行われ始めていた。しかし景気の低迷やライフスタイルの変化に伴い、フィットネス関連消費が伸び悩む一方、2010年ごろから健康志向が高い層の細かいニーズに対応すべくマイクロジムやパーソナルトレーナーといったオーダーメイドのトレーニングにも注目が集まった。2013年健康増進法施行に伴い、健康寿命の延伸を目的とした健康づくりが社会課題として認識され始める。2017年度にはフィットネス関連業界の収入高合計が7年連続前年度比増、またフィットネスクラブ会員数も過去10年で最高を記録し1)、世間でも筋トレやフィットネスがブームとして認識されるようになった。
しかし、近年の実施率をみると2020年から2022年にかけて全体として減少傾向にある。男女ともに20~30代の若年層において顕著であり、とくに30代女性の減少幅が大きい。コロナ禍での在宅勤務や行動制限をきっかけに実施を始めた人たちが、2022年時点までに継続的な実施に至っていない可能性がうかがえる。若年層の傾向に反して、60代以上の高齢層では2020年に減少がみられたものの、男性では2022年に増加へと転じている。トレーニング施設でのクラスター感染の影響から“ジム控え”をしていた人たちが、行動緩和の兆しが見え始めた2022年頃から徐々に実施を再開してきた可能性がある。
シニア政策オフィサー 水野 陽介