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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査(2020年10月調査)

「新しい生活様式」が浸透していくなかでスポーツ活動も変化

全国の18歳から70歳代を対象とする『新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査』を、今年6月に続き、10月1日から6日に実施いたしました。「新しい生活様式」が徐々に浸透していくなかで、スポーツ活動に対しても変化が見られます。

本調査は今後も継続予定であり、スポーツ活動の機会の確保と新型コロナウイルス感染拡大防止を両立させる方策を、データの分析・考察を通じて明らかにすることを目的としております。

新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査

1.イベント主催者に期待する「スタジアムにおける感染対策」が、6月調査時に比べより具体的な内容に変化。

  • 「大きな声での会話や応援、肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」は6月調査1.9%に対し、10月調査11.6%と9.7ポイントの差があった。
  • 「人と人との間隔を確保するための入場者数の制限や誘導」(22.5%)も6月調査時の15.1%から7.4ポイント増加。

⇒10月調査においては、回答者が、メディア等で実際に報じられるスポーツ観戦時の様子を踏まえたうえで期待する対策を選ぶ傾向が強まっていると推測。

2.種目別運動・スポーツ実施率に、6月調査時から明確な変化がみられる。

  • ゴルフ、水泳、テニス(硬式)など、主に施設を利用して行う種目の実施率が増加。
  • 「ウォーキング」や「散歩(ぶらぶら歩き)」など自宅周辺で行える種目の実施率は減少。

政策オフィサー 鈴木貴大 コメント

 5月末の緊急事態宣言解除に伴うス ポーツ施設の再開や7月にはプロ野球とJリーグで人数を制限しながらも有観客試合が再開されるなど人々のスポーツ環境は戻りつつある。スポーツ環境が戻る過程で、人々の意識にも変化がみられ、観戦においてはアルコール消毒液の設置、マスク着用の呼びかけなど日常生活に定着してきた感染症対策に加えて、 大きな声での会話や応援への注意喚起など、スポーツ観戦時ならではの対策を求める傾向が強まっている。

 また、運動・スポーツ実施においては、ゴルフや水泳など施設を利用して行う種目の実施率増加が確認された。一方、全体の実施率は6月に行った前回調査からは減少し、ウォーキングや散歩など比較的気軽に取り組める種目の実施率減が影響していると推察できる。実施率減少の要因など本調査では明らかにできなかった点を含め、2021年2月実施予定の次回調査の結果から新型コロナウイルスと人々のスポーツライフの関係について考察したい。

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策オフィサー鈴木貴大


【調査結果のポイント解説】

1.イベント主催者に実施を期待する、スタジアムにおける感染対策

2020年6~9月の期間にスタジアムや競技場に足を運んで観戦していないと回答した人を対象に、今後スタジアムや競技場に足を運んでのスポーツ観戦を再開するために、イベント主催者に期待する対策を図表1に示した。

6月調査と比較して最も差があった対策は、「大きな声での会話や応援、肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」は6月調査1.9%に対し、10月調査11.6%と9.7ポイントの差があった。そのほか、「人と人との間隔を確保するための入場者数の制限や誘導」(15.1%、22.5%)が7.4ポイント差であった。「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、室内の換気」「来場者へマスク着用を呼び掛けるなど、感染拡大防止のための注意喚起」など、すでにスポーツ以外の場面でも日常になりつつある対策よりも、プロ野球(NPB)やJリーグ、大相撲とスポーツ観戦が再開され、メディア等で会場の様子を見聞きするなかで、より重点的に実施してほしい対策への期待が反映されていると考えられる。

2.6月調査時から明確に変化した、種目別運動・スポーツ実施率

今回の調査で明らかにした過去4ヵ月(2020年6~9月)の種目別運動・スポーツ実施状況について、6月に実施した前回調査(2~5月の実施状況)の結果と比較した(図表2)。全体の実施状況をみると「運動・スポーツを行っていない」は2~5月49.9%、6~9月55.2%と非実施者の割合は増加している。

6~9月の種目別実施率をみると、「ウォーキング」23.1%が1位、以下、「散歩(ぶらぶら歩き)」12.2%、「筋力トレーニング」9.7%、「ジョギング・ランニング」5.5%、「体操(軽い体操、ラジオ体操など)」4.0%と続く。実施率上位5種目は2~5月の結果と同様であったが、実施率はどの種目も減少していた。特に「散歩(ぶらぶら歩き)」の実施率の減少が大きい。

上位20種目について、実施率の増減をみると、「ウォーキング」や「散歩(ぶらぶら歩き)」など自宅や自宅周辺で行える種目の実施率が減少する一方で、「ゴルフ(コース)」3.0%から3.5%、「ゴルフ(練習場)」2.7%から3.2%、「水泳」1.5%から2.2%、「テニス(硬式テニス)」1.2%から1.5%と施設を利用して行う種目の実施率は微増している。新型コロナウイルスの影響で休業していた施設が6月以降、徐々に再開したため、これらの種目の実施率が増加したと推察できる。

図表2 種目別運動・スポーツ実施率
実施率が減少した種目 2020年2~5月(n=5,000)
実施率(%)
2020年6~9月(n=5,000)
実施率(%)
ウォーキング 27.1 23.1
散歩(ぶらぶら歩き) 18.4 12.2
筋力トレーニング 11.4 9.7
ジョギング・ランニング 6.4 5.5
体操(軽い体操、ラジオ体操など) 5.9 4.0
運動・スポーツは行っていない 49.9 55.2
実施率が増加した種目 2020年2~5月(n=5,000)
実施率(%)
2020年6~9月(n=5,000)
実施率(%)
ゴルフ(コース) 3.0 3.5
ゴルフ(練習場) 2.7 3.2
ヨーガ 2.5 2.6
水泳 1.5 2.2
テニス(硬式テニス) 1.2 1.4
1) 調査の目的
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のスポーツ活動の機会が奪われている。
また、感染封じ込めのための人と人との接触を減らす取り組みを通じて、多くの国民の身体活動量・運動量が大きく減少することが危惧されている。こうした環境下で、国民の身体活動・運動の実施状況やスポーツ観戦等のニーズがどのように変化しているのかを調査する。
2) 調査方法
インターネット調査
3) 調査対象
全国の市区町村に在住する18~79歳までの男女5,000人(5,000サンプルが地区ごとの性別・年代別人口構成比率に近似するよう割当)
4) 調査時期
2020年10月1日~10月6日
5) 主な調査項目
1 )2020年6~9月の運動・スポーツ実施状況
2 )新型コロナウイルスに影響により中止した運動・スポーツの状況
3 )運動・スポーツの再開状況
4 )新型コロナウイルスの影響による生活環境の変化
5 )新型コロナウイルスの影響による、運動・スポーツ環境の変化
6 )過去1年間のスポーツ実施・スポーツ観戦形態に関する経験の有無と今後のニーズ
7 )スポーツ観戦状況(直接スポーツ観戦、テレビやインターネットによるスポーツ観戦)
8 )2020年6~9月の直接スポーツ観戦実施者からみた各種対策への評価、非実施者が期待する対策
9 )テレビやインターネットでの観戦日数
10)運動・スポーツ実施時に気を付けていること
11)スポーツを実施しない理由
12)東京2020オリンピック・パラリンピックについて
13)身の回りの感染者について
14)新型コロナウイルス影響下におけるスポーツ以外の余暇活動の行動回数
報告書

全文(PDF:3.69MB)

目次
  • 1. 調査の概要 詳細(PDF:616KB)
  • 2. 主な調査結果 詳細(PDF:2.87MB)
    • 1) 運動・スポーツ実施状況と実施頻度
    • 2) 運動・スポーツを実施する際に気を付けたいこと・やらない理由
    • 3) 新型コロナウイルスの影響 によるスポーツ環境の変化
    • 4) スポーツ 観戦状況
    • 5) スタジアムにおける感染対策への評価と イベント主催者に期待する対策
    • 6) 過去1年間のスポーツ実施・観戦形態に関する経験の有無と今後のニーズ
    • 7) 新型コロナウイルスの影響による生活の変化
    • 8) 新型コロナウイルスの影響下 におけるスポーツ以外の余暇活動
    • 9) 東京 2020 オリンピック・パラリンピック大会への期待
  • 3.まとめ 詳細(PDF:795KB)
  • 4. 調査票(単純集計結果) 詳細(PDF:832KB)

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本事業は、ボートレースの交付金による日本財団の助成金を受けて実施しました。

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テーマ

スポーツ政策・予算

キーワード
年度

2020年度

発行者

公益財団法人 笹川スポーツ財団

担当研究者