笹川スポーツ財団では、全国の自治体におけるスポーツ諸施策について、具体的な取り組みに対する公費投入の有無や、その実務を担っている主体について、その実態把握と実施現場の課題解決のための基礎資料とするために調査を行いました。
- 調査・研究
© 2020 SASAKAWA SPORTS FOUNDATION
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スポーツ政策研究所を組織し、Mission&Visionの達成に向けさまざまな研究調査活動を行います。客観的な分析・研究に基づく実現性のある政策提言につなげています。
自治体・スポーツ組織・企業・教育機関等と連携し、スポーツ推進計画の策定やスポーツ振興、地域課題の解決につながる取り組みを共同で実践しています。
「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。
日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。
笹川スポーツ財団では、全国の自治体におけるスポーツ諸施策について、具体的な取り組みに対する公費投入の有無や、その実務を担っている主体について、その実態把握と実施現場の課題解決のための基礎資料とするために調査を行いました。
・「予算あり」は865団体(88.6%)。「予算なし」も含めてほとんどの団体で取り組まれている
・自治体8分類においても、「予算あり」が各分類でほとんどを占めている
・総合型地域スポーツクラブ支援の「予算あり」は522団体(53.5%)、「予算なし」は454団体(46.5%)
・予算ありの実施主体は、「自部署(スポーツ所管)」が全体最多の433団体(44.4%)
・「予算なし」かつ「実施主体なし」=支援なしは338団体(34.6%)
・「予算あり」は380団体(38.9%)、「予算なし」は596団体(61.1%)
・自治体8分類では、政令市は「予算あり」が大半を占めるものの、その他では人口規模が小さくなるほど「予算なし」が顕著に増加し、町村では「予算なし」が大多数を占めている
【法人格】
・任意団体が最多の630団体(64.5%)で全体の6割強
・政令市と中核市及び特別区以外の6分類では半数以上が任意団体であり、町村のほとんどが任意団体
【事務局運営に関する自治体の関与度】
・法人格を有している(公益・一般・NPO)団体では「独立・関与なし」がほとんど
・任意団体及びその他団体では約7割が「庁内に事務局設置かつ庁内部署が実務」
【自治体からの運営費補助】
・「補助あり」が768団体(78.7%)で約8割、「補助なし」は206団体(21.1%)
・法人格の分類では、「補助あり」は任意団体で最も高い割合で8割以上
・政令市ではすべて1,000万円以上、町村ではほとんどが1,000万円未満
全国の自治体では、「スポーツそのものが有する価値」と「スポーツが社会活性化等に寄与する価値」をさらに高め、より生かすべく、スポーツ諸施策が精力的に展開されている。その施策は、どこの自治体やスポーツ協会でも当たり前のように取り組まれているものと思われがちだが、その実態は多様であることが本調査で確認された。なかでも、人口規模の大小による施策実施環境の差異は想像以上に大きい。
全国約1,720自治体のうち、約7割は5万人以下である。今日でも既に、人口規模の小さい市町村では、スポーツに関わる団体は少なく、予算は限られ、行政依存の状態にあるのに、人口減少が進行するなかで施策実施環境をいかに担保していくのか。スポーツの施策領域を拡大させるばかりではなく、選択と集中をどの点で図っていくのか。そもそも、地域住民に提供されるスポーツ機会や支援とはどうあるべきなのか。本調査が、実効ある自治体スポーツ政策の立案・検討の一助となれば幸いである。
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 上席特別研究員 熊谷 哲
<本調査における分類>
自治体におけるスポーツ施策の実施状況を端的に示すため、当該自治体における予算(当初予算または補正予算)措置の有無と取り組み実施主体との組み合わせを下記の9分類で示している。
①予算措置有り×スポーツ施策の主管部署
②予算措置有り×当該自治体庁内(市区役所・町村役場)の他部署
③予算措置有り×スポーツ(体育)協会
④予算措置有り×当該自治体の(スポーツ・体育協会以外の)外郭団体
⑤予算措置有り×その他の法人・団体
⑥予算措置なし×スポーツ(体育)協会
⑦予算措置なし×当該自治体の(スポーツ協会以外の)外郭団体
⑧予算措置なし×その他の法人・団体
⑨予算措置なし×実施している団体なし
・自治体の権能や人口、予算規模等による相違を見るため、市区町村制の要件等を鑑みながら下記の8分類による結果を示している。
分類 | 回答団体数 | 全団体数 | 回答率(%) | 全体に占める割合(%) |
---|---|---|---|---|
政令指定都市 | 13 | 20 | 65.0 | 1.3 |
中核市及び特別区 | 60 | 85 | 70.6 | 6.1 |
市・10万人以上 | 118 | 176 | 67.0 | 12.1 |
市・5〜10万人 | 137 | 234 | 58.5 | 14.0 |
市・5万人未満 | 184 | 297 | 62.0 | 18.9 |
町村・1万5千人以上 | 133 | 233 | 57.1 | 13.6 |
町村・5千〜1万人 | 193 | 391 | 49.4 | 19.8 |
町村・5千人未満 | 138 | 299 | 46.2 | 14.1 |
合計 | 976 | 1,735 | 56.3 | 100.0 |
住民の健康増進や介護予防を目的としたスポーツ活動の支援状況は、「予算あり」は865団体(88.6%)であり、「予算なし」も含めてほとんどの団体で取り組まれている(図表2)。
自治体8分類でみても、「予算あり」が各分類でほとんどを占めている。
注)複数回答
総合型地域スポーツクラブの活動支援状況をみると、「予算あり」は522団体(53.5%)、「予算なし」は454団体(46.5%)であった(図表3)。予算ありの実施主体は、「自部署(スポーツ所管)」が全体最多の433団体(44.4%)であり、次いで「スポ協」の66団体(6.8%)、「その他法人」の34団体(3.5%)であった。予算なしで実施している主体は比較的少なめで、「実施主体なし(=支援なし)」が338団体(34.6%)であった。
注)複数回答
スポーツ合宿の誘致やスポーツツーリズムの誘客活動について、「予算あり」は380団体(38.9%)、「予算なし」は596団体(61.1%)であった(図表4)。
自治体8分類でみると、政令市こそ「予算あり」が大半を占めているものの、その他では人口規模が小さくなるほど「予算なし」が顕著に増加し、町村では「予算なし」が大多数を占めている。また、政令市を除く7分類では「実施団体なし」が最多となっている。
注)複数回答
スポーツ(体育)協会の運営状況についてみていく。まず、該自治体に所在しているスポーツ(体育)協会の法人格は、任意団体が最多の630団体(64.5%)で全体の6割強を占めた。自治体の8分類でみると、人口規模の大きな団体ほど法人格を有していることが多いものの、政令市と中核市及び特別区以外の6分類では半数以上が任意団体であり、町村の3分類ではほとんどであった(図表5)。
続いてスポーツ(体育)協会の事務局運営に対する自治体の関与度をみると、法人格を有している(公益・一般・NPO)団体では「独立・関与なし」がほとんどであるなか、公益法人では「事務局は独立し、専任職員を派遣している」が1割以上みられる(図表6)。他方、任意団体及びその他団体では約7割が「庁内に事務局設置かつ庁内部署が実務」となっている。
さらに、スポーツ(体育)協会に対する当該自治体からの運営費補助(事業費補助を除く)の状況については、「補助あり」が768団体(78.7%)で約8割であった。「補助あり」としている自治体についてその補助金額を自治体の8分類でみると、自治体の規模による差異が明確に現れており、政令市ではすべて1,000万円以上の補助を実施している一方、町村ではほとんどが1,000万円未満となっている(図表7)。
区分 | 回答団体数 | 全団体数 | 回答率(%) | 全体に占める割合(%) |
---|---|---|---|---|
政令指定都市 | 13 | 20 | 65.0 | 1.3 |
特別区 | 13 | 23 | 56.5 | 1.3 |
中核市 | 47 | 62 | 75.8 | 4.8 |
一般市 | 439 | 707 | 62.1 | 45.0 |
町 | 378 | 740 | 51.1 | 38.7 |
村 | 86 | 183 | 47.0 | 8.8 |
合計 | 976 | 1,735 | 56.3 | 100.0 |
全文(PDF:4.53MB)
スポーツによるまちづくり
2024年度
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