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スポーツライフ・データ 分析レポート Vol.3

「スポーツライフ・データとは?」
-調査の概要と特徴-

2018年10月3日

「スポーツライフ・データとは?」

  はじめに

  スポーツ・フォー・エブリワン社会の実現をミッションとする笹川スポーツ財団(SSF)では、財団設立当初より、全国の運動・スポーツ実施状況を把握するため「スポーツライフに関する調査(スポーツライフ・データ)」を実施している。本レポートでは、スポーツライフ・データがどのような調査であるのか、あらためてその概要や特徴を紹介する。

  スポーツライフ・データの25年間の歩み

  スポーツライフ・データは、1992年に20歳以上の成人を対象とする第1回目の調査が実施された。その当時、「体力・スポーツに関する世論調査」(旧:総理府)に代表される全国規模の社会調査では、「直近1年間に、運動・スポーツを1回以上実施したかどうか」を問う形式が主に用いられていた。1年間に1回でも運動・スポーツを行っていれば、運動・スポーツ実施者であり、その割合が「運動・スポーツ実施率」を意味するものであった。急速な経済の発展や少子高齢化、健康志向の高まりなどを背景に、着実に運動・スポーツ実施者は増えていたが、普段の生活にスポーツがどのように溶け込み習慣化されているのか、1週間あたりの実施頻度や実施種目までは十分に把握できていないのが現状であった。そこで、誰もが日常的にスポーツを楽しめる社会を実現するためにも、より詳細な実態把握が必要ではないかという議論をきっかけに、「スポーツライフ・データ」がスタートした。

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  図1 スポーツライフ・データの歩み(1992~2017)

  図1は、スポーツライフ・データのこれまでの歩みである。1992年に実施した第1回調査の結果は、翌年「スポーツライフ・データ1993」として刊行した。「実施頻度」「実施時間」「運動強度」の3つの観点から分析を行い、健康の維持増進に十分な運動・スポーツ活動を行っている者は国民全体の6.6%に留まることを明らかにした。その後、1994年の第2回調査からは、運動・スポーツ実施状況だけではなく、スポーツ観戦やスポーツボランティアの質問項目を追加し、「する」「みる」「ささえる」スポーツの多様な関わり方を捉える調査内容とした。以降、現在まで四半世紀に渡り、隔年で調査を実施している。

  2001年からは、成人の調査とは別の枠組みで、10代を対象とした「青少年のスポーツライフ・データ(10代のスポーツライフに関する調査)」を開始し、青少年における運動・スポーツ実施の二極化を明らかにした。加えて、2009年からは、幼少年期の子どもを対象とした「子どものスポーツライフ・データ(4~9歳のスポーツライフに関する調査)」を実施し、8歳ごろからすでに運動・スポーツ実施の二極化が始まっていることを報告した。

  調査の概要 -どのように調査しているのか-

  表1に、直近のスポーツライフ・データ2016と子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017の調査概要を示した。現在、スポーツライフ・データは、偶数年に成人の調査を行い、奇数年に子ども・青少年(4~11歳および12~21歳)の調査を実施している。子ども・青少年、そして成人の若年者から高齢者まで、全年代のライフステージに応じたスポーツ参画機会を的確に把握すべく、全国調査を積み重ねている。

表1 直近のスポーツライフ・データの調査概要

報告書名 スポーツライフ・データ2016 子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017
調査名 スポーツライフに関する調査2016 4~11歳のスポーツライフに関する調査2017 12~21歳のスポーツライフに関する調査2017
調査実施年 隔年(偶数年) 隔年(奇数年) 隔年(奇数年)
調査時期 該当年 6月~7月 該当年 6月~7月 該当年 6月~7月
母集団 全国の市区町村に居住する
18歳以上の男女
全国の市区町村に居住する
4~11歳の男女
全国の市区町村に居住する
12~21歳の男女
標本数 3,000人 2,400人 3,000人
抽出方法 割当法
※年齢別の人口構成比に近似するよう配分
層化二段無作為抽出
※住民基本台帳を閲覧し、対象者を抽出
層化二段無作為抽出
※住民基本台帳を閲覧し、対象者を抽出
調査地点数 全国300地点
(市部273地点、町村部27地点)
全国225地点
(市部204地点、町村部21地点)
全国225地点
(市部204地点、町村部21地点)
調査方法 訪問留置法による質問紙調査 訪問留置法による質問紙調査
※保護者立会いの下、
調査員による個別聴取法を併用
訪問留置法による質問紙調査
調査内容 運動・スポーツ実施状況
スポーツ観戦
スポーツボランティア 等々
運動・スポーツ実施状況
スポーツ観戦
習い事 等々
運動・スポーツ実施状況
スポーツ観戦
スポーツボランティア  等々
有効回収(率) 3,000
※標本数に達するまで調査を実施
1,573
(65.5%)
1,636
(54.5%)

  スポーツライフ・データ2016は、成人年齢の引き下げに関する民法改正の動きを勘案し、母集団を18歳以上に拡大した。標本数は、年代別のクロス集計にも耐え得るよう3,000人とした。標本の抽出方法は、全国の若年者から高齢者までを含む母集団の状況が偏りなく反映されるように割当法を採用している。調査地点数は全国300地点(大都市86地点、人口10万人以上の市121地点、人口10万人未満の市66地点、町村27地点)である。

  表2は、全国に配分した調査地点数と標本数を示している。標本の抽出にあたり、はじめに、全国の市区町村を都道府県単位で11地区に分類した。次に、各地区内の市区町村を都市規模によって4つに分類し、グループ分けを行った。そして、地区・都市規模別の各グループにおける18歳以上の人口数に応じて、300の地点数を比例配分した。1地点あたりの標本数は10サンプルとし、全3,000サンプルが各グループの年齢別の人口構成比に近似するよう割り当てた。図2は、スポーツライフ・データ2016の実際の調査地点である。

  図3は、各調査地点における調査票の回収方法を示している。調査を実施する地点の範囲を大字・町丁目で指定し、調査員が訪問する。はじめに訪問した世帯から番地の大きい方へと3世帯間隔で訪ね、人口構成比によって各地点に割り当てられた年代・性別に合った対象者に調査を依頼し、調査票の回収を行った。

  1992年から2006年の調査までは、ランダムサンプリングのひとつである層化二段無作為抽出法を用いていたが、回収率の低下とともに、回答者が高齢者層に偏ってしまう調査上のデメリットが大きくなった。加えて、住民基本台帳閲覧に関する法改正もあり、2008年調査から対象者の抽出には割当法を採用している。近年、スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」をはじめ、政府系の社会調査ではインターネット調査が増えている。スポーツライフ・データでは、回答者の偏りが発生する可能性と調査方法の継続性を考慮し、1992年調査から現在まで、訪問留置法による質問紙調査によって回答を得ている。

  表2 スポーツライフ・データ2016の調査地点数と標本数(地区・都市規模別)

表2 スポーツライフ・データ2016の調査地点数と標本数(地区・都市規模別)


図2 スポーツライフ・データ2016の調査地点(全国300地点)

 

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図3 スポーツライフ・データ2016の調査票回収方法

  図3 スポーツライフ・データ2016の調査票回収方法

  子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017は、学校期別の分析に焦点をあてるため、未就学児から小学生年代を母集団とする「4~11歳のスポーツライフに関する調査」と、中学・高校・大学生年代を母集団とする「12~21歳のスポーツライフに関する調査」から構成されている。4~11歳の調査は標本数2,400人、12~21歳の調査は標本数3,000人である。標本の抽出方法は、成人対象の調査とは異なり、住民基本台帳の閲覧によるランダムサンプリングの層化二段無作為抽出法を採用している。調査地点数は、4~11歳の調査と12~21歳の調査ともに、全国225地点(大都市58地点、人口10万人以上の市95地点、人口10万人未満の市51地点、町村21地点)である。

  表3は、子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017の調査地点数と標本数を示している。4~11歳の調査と 12~21歳の調査ともに、全国の市区町村を都道府県単位で10地区に分類し、さらに都市規模によって4つに分けて、グループ化を行った。4~11歳の調査では、地区・都市規模別の各グループにおける4~11歳の人口数により、2,400の標本数を比例配分し、1地点あたりの標本数が8~16程度になるように調査地点を決めた。12~21歳の調査も同様に、地区・都市規模別の各グループにおける12~21歳の人口数に基づき、3,000の標本数を比例配分し、1地点あたりの標本数を10~19程度とした。図4は実際の調査地点である。

  図5には、子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017における調査票の回収方法を示した。調査地点となるすべての自治体に対して住民基本台帳の閲覧申請を行っている。住民基本台帳の閲覧により、指定した調査地点の範囲(町・丁目・番地等)から対象者を等間隔抽出法によって抽出した。調査の方法は、訪問留置法による質問紙調査である。事前に対象者宅へ協力依頼ハガキを送付した後、調査員が調査票を持って訪問し、回答を得た。4~11歳の調査では、保護者立会いの下での個別面接聴取法を併用している。12~21歳調査においても、中学生以下の対象者には、保護者の許可を得てから調査を実施している。オートロックマンションの普及など、住宅環境の変化で、訪問留置法による調査票の回収が以前よりも難しくなってきてはいるが、現在まで両調査ともに回収率50%~60%台を維持できている。

  表3 子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017の調査地点数と標本数(地区・都市規模別)

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図4 子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017の調査地点(全国225地点)

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  図5 子ども・青少年のスポーツライフ・データ2017の調査票回収方法

  
スポーツライフ・データの特徴 -どのような分析ができるのか?-

  表4 運動・スポーツ実施状況に関する調査項目(調査票一部抜粋)

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※薄緑色で記載の数値は、単純集計結果
スポーツライフ・データ2016

  スポーツライフ・データの最大の特徴は調査票とその継続性にある。表4は、スポーツライフ・データ2016の調査票から運動・スポーツ実施状況に関する代表的な質問項目を抜粋したものである。この項目は、前述の成人調査、4~11歳の調査、12~21歳の調査で共通しており、過去の調査から質問内容の変更を加えずにデータを蓄積している。1年間に行った運動・スポーツについて、実施回数の多い種目から順に、「A:種目名」「B:実施回数(回/年・月・週)」「C:実施時間(分)」「D:主観的な運動強度(『かなり楽である』~『かなりきつい』までの5段階)」を最大5種目まで問う形式である。何の種目を、どのような頻度で、平均何分、どの程度のきつさで実施しているのか、また、複数の種目に取り組んでいるのか、日常的な運動・スポーツの実施状況を量的・質的な観点から捉えることができる。

 

  図6 運動・スポーツ実施状況の分析事例

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  図6には、この質問項目を用いた分析事例を示した。例えば、項目A・Bをもとに、最大5種目までの実施回数を週あたりの頻度に合計すると、「週1回以上の運動・スポーツ実施率」や「週2回以上の運動・スポーツ実施率」などが算出できる。過去調査の結果を並べて表現すると、過去25年間の運動・スポーツ実施率の年次推移を示すことができる。成人の週1回以上の運動・スポーツ実施率は、1992年の23.7%から大きく上昇を続け、2012年には59.1%に達した。その後、2016年までわずかではあるが減少傾向に転じ、頭打ちの状況となっている。

  SSFでは、項目A・B・C・Dを用いて、「実施頻度」「実施時間」「運動強度」の3つの観点をもとに「運動・スポーツ実施レベル」という独自の概念を定義している。1992年と2016年の調査結果を比較すると、レベル0「過去1年間にまったく運動・スポーツをしなかった」が大幅に減少し、「レベル3」(週2回以上、1回30分以上)や「レベル4」(週2回以上、1回30分以上、ややきつい以上)の割合が増えている。四半世紀を経て、私たちの日常生活の中に、運動・スポーツがより身近なものになってきたことがわかる。

  また、項目Aの種目を軸に分析することで、ジョギング・ランニング実施率の算出など、種目に特化した検討が可能となる。算出した種目別の実施率を該当年の総人口と掛け合わせると、全国でどのくらいの人がその種目を定期的に実施しているのかを推計することもできる。2016年の調査では、成人におけるジョギング・ランニングの週1回以上の実施率は4.5%であり、実施者は467万人と推計された。他の種目でも同様に実施率や推計人口を算出することができる。

  スポーツライフ・データは、調査報告書を刊行する他、SSFウェブサイトにて、集計前のローデータ(Excel・SPSS)、調査票(PDF)、クロス集計表(Excel)を含むオリジナル・データを無料公開している。「する」「みる」「ささえる」スポーツに関する二次分析が可能となっている。学術領域をはじめ、行政、メディア、マーケティング分野など、様々な視点から広く活用いただきたい。これまで以上にスポーツに関する議論が活性化され、「誰もがスポーツを楽しめる社会の実現」に貢献できるよう、スポーツライフ・データでは、その基礎となる実態把握と分析、情報発信を続けていく。

 

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 副主任研究員

山田大輔

  <参考文献>



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