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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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セミナー「子供のスポーツ」

スポーツ活動の再開に向けて ~オランダのガイドライン紹介~

新型コロナウイルスとスポーツ

新型コロナウイルスにより一度止まったスポーツ活動も再開し始めましたが、各国、各競技団体で、感染症対策などを踏まえながらスポーツ活動再開に向けたガイドラインを発表しています。笹川スポーツ財団では、国際的なスポーツ・フォー・オールの統括組織であるTAFISAやSSF海外研究員のネットワーク等を通じて、国内外のガイドラインを収集しています。

【第10回】 オランダの状況
オランダにおけるスポーツ活動再開に向けた取り組みについて

オランダは3月中旬から新型コロナウイルスの感染拡大に伴い全国的にロックダウン状態となっていたが、その後感染者拡大のペースが鈍化したことに伴い、段階的に規制を緩和している。

オランダ政府のウェブサイト上では、シチュエーション、分野別に緩和される規制の内容、引き続き守るべきルール、感染症対策等を示しており、その中で「スポーツとレクリエーション(Sport and recreation)」についても述べられている。

また政府が発表している内容を基に、オランダオリンピック委員会・スポーツ連合(Nederlands Olympisch Comité * Nederlandse Sport Federatie : NOC*NSF)*1 は公式サイト上に設置した特設ページの中で、安全なスポーツ活動の再開にあたって具体的な注意点等を示した資料を公表している。

<1. オランダ政府が公表しているシチュエーション別の情報>

オランダ政府はウェブサイト上に立ち上げた新型コロナウイルスに関する特設ページの中で、新型コロナウイルス感染症検査を受ける方法や事業者向けの経済支援スキーム等、最新の情報を提供している。その中の一つとして「国内の新型コロナウイルス対策(Dutch measures against coronavirus)」というページを設けて、政府が定めている規制の内容をいくつかのシチュエーション別に説明している。

現状の主な規制とスポーツに関連する内容として下記が示されている。 (ただし地域によっては感染状況やリスクを踏まえて、必要に応じて独自の規制強化や追加規制が定められる可能性があるとしている)

全員に共通する基本的なルール

  • 新型コロナウイルスの症状、もしくは疑われる症状が出た場合には、自宅に待機して、可能な限り迅速に検査を受ける
  • 1.5mの対人距離を常に確保する
  • 手洗いを頻繁に行う
  • 咳やくしゃみは、肘等を使って飛沫が飛ばないようにする
  • 可能な限り自宅での勤務を行う
  • 混雑する場所を避け、混雑のピークとなる時間を避けた移動を心掛ける

屋内での活動について

屋内での活動に関するルールについては、活動場所を大きく3つに分けて記載されている。

自宅 訪問者を含めて集まることができる人数に制限はない

ただし常に1.5mの対人距離を確保した上で、求められる公衆衛生施策を実施することを強く推奨する
基本的に訪問者が1か所に留まる場所
(レストラン、バー、映画館、劇場、結婚式等)
全員を固定の席に座らせた上で、1.5mの対人距離を確保する

予約制を取ることができず、事前の健康チェックを実施できない場合は、集まることができる人数を100名までとする(屋内の動線を適切に管理すること)

100名を超える大きな集まりについては、予約制にする上に、事前の健康チェックが必須となる。予約制で事前の健康チェックを適切に行う前提であれば、最大人数に制限はない(ただし屋内の動線が適切に管理され、出口・入口・洗面所へのルート等を明確に区分する必要がある)
訪問者が動き回る場所
(商業店舗、博物館等)
人数制限は設けない

ただし、必要な衛生施策を講じて、屋内のスペースが混雑しすぎないような措置を取る必要がある

その他の注意事項として下記が示されている。

  • 就業場所については全員が1.5mの対人距離を確保する必要があり、これを維持できる作業に限られる
  • ナイトクラブ等、人々が密着するような場所については引き続き閉鎖とする
  • 屋内スペースではビル管理法令に基づいて換気を行う必要がある(個人での扇風機等の利用も可能だが、その他に冷却の方法がない場合に限る。また自分の吐いた息等が直接他の人のところに行かないように工夫する必要がある)

屋外での活動について

前提条件として、18歳以上の全ての人は、他の人から1.5mの対人距離を常に維持することを定めている。ただし同居人同士、もしくは介助等が必要な方については、このルールは適用されない。3人以上の集まりが対人距離確保のルールを守っていない場合は、罰則等を伴うアクションが取られる可能性がある。

屋外での活動についても、活動場所を二つのパターンに分けてルールを示している。

継続的に訪問者が動く場所
(商店街、動物園、見本市等)
集まりの人数について制限はない
訪問者が動かない場所
(スポーツ観戦会場、レストラン、カフェ等)
予約制で、事前の健康チェックが実行でき、かつ訪問者全員に固定席が用意されている場合は、人数に制限はない

予約制、事前の健康チェック、固定席用意の3つの条件が適用できない場合は、集まりの人数を最大250名までとする

レストラン、カフェ、バー等では訪問者はそれぞれが必ず自分の席に座る必要がある。ただし屋外の座席においては、1.5mの対人距離確保の代わりに間仕切りやスクリーンを利用することができる

イベントの開催について

特別な承認を得たイベント以外は開催を禁止されていたが、その規制は7月1日をもって緩和される。イベントの実施可否については、今後は各地方自治体がイベント主催者の安全対策に鑑みて参加者の安全を守れるか(対人距離1.5mの確保やその他必要な基準)を基に判断する。

スポーツとレクリエーション

7月1日以降、屋内・屋外を問わず全てのスポーツ活動の再開が許可される。

対人距離は可能な限り1.5mを確保するようにすべきだが、競技の特性によって、競技中に対人距離の確保が不可能な場合は免除される。また事前の健康チェックを実行する。

7月1日以降は試合や競技大会に観客を入れることも可能とする。ただし屋内・屋外活動の一般的なルールを順守する必要があり、集団での歌、チャントの合唱、叫びながら応援するといった行為は引き続き禁止とする。

<2. NOC*NSFが示しているスポーツ・プロトコル>

NOC*NSFはウェブサイト上で新型コロナウイルスに関する特設ページを策定しており、その中で、最新のニュース、スポーツクラブ向け活動再開に向けたチェックリスト、コミュニケーションツール(ポスター素材)、よくある質問集等を公表している。

スポーツ活動の実施については、政府が示している規制内容に則って安全にスポーツ活動を再開していくにあたり、具体的な注意点等を示したプロトコルを提示している。

責任あるスポーツ活動のプロトコル(Protocol verantwoord sporten)

7月1日以降に適用される政府の規制緩和を受けて、スポーツ活動についても、新型コロナウイルス感染症の症状が疑われる場合の自宅待機、1.5mの対人距離確保、手洗いの徹底等の基本的なルールを守った上であれば、ほとんどの活動を再開できることになった。(1.5mの対人距離確保については、上述の通りスポーツ活動に関しては競技中にどうしても難しい場合は規制が免除される)

本プロトコルは政府の方針に基づいて、スポーツ活動に携わる全ての関係者に向けて、どのように安全なスポーツ活動を再開していくべきかの指針を示している。

資料の内容としては、関係者全員が守るべきルールに加えて、スポーツ団体/施設運営者/イベント企画者、トレーナー/監督者/ボランティア、アスリート、参加者の保護者/観客、地方自治体等、対象者別に具体的な注意点や対策を記載している。

コロナとスポーツ オランダのガイドライン

「責任あるスポーツ活動のプロトコル(表紙)」(NOC*NSFウェブサイトより)

12歳までの子供と13~19歳の若者向けのスポーツ・プロトコル
(Sports protocol for children up to 12 years & youth 13 to 19 years old)

ロックダウン状態が続いていた4月30日に公表された資料で、政府が4月29日より12歳以下の子供と13歳~18歳の若者については、一定の条件の下で、屋外でのスポーツ活動を許可する規制緩和を行ったことを踏まえて、活動再開の際の具体的な注意点等を示している。

スポーツ活動の再開と注意点の徹底については、地方自治体が責任を負うとされており、度重なる違反が確認された場合は、団体の除名や施設の閉鎖等の処分を取る可能性があるとしている。



(本記事の内容は別途記載がない限り、2020年8月6日時点の情報に基づくものであり、その後情報の更新・変更が行われている場合がある)

笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 武富 涼介

【リンク先】(英語/オランダ語のみ)


*1  1993年にオランダオリンピック委員会とスポーツ連合が合併して設立された団体。オランダ国内の競技団体を統括しており、国内スポーツ実施率の向上とエリートスポーツの推進をミッションとしている。90のスポーツ関連団体が加盟している。

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