多くの子どもが慢性的に身体不活動な状態
本研究は、全国の小学生をもつ保護者を対象に、子どもの身体活動の季節変動を明らかにすることを目的に3時点で調査を実施した。結果、各時点で72~80%の子どもが推奨される身体活動量(1日60分の身体活動)を達成しておらず、約6割は3回を通じて一度も達成していなかった。身体活動量に大きな季節変動は確認されず、年間を通じて低水準で推移していたことから、多くの子どもが季節を問わず、慢性的に身体不活動な状態であることが示された。
子どもの身体活動促進に必要な視点
夏季には「暑いこと」が活動しない主要因としてあげられ、気候変動(特に、夏季における高温多湿環境)への対応が重要であることも示された。季節ごとの対症療法的な対策のみに依拠するのではなく、子どもの生活全体やそれを取り巻く環境を俯瞰した、より根本的かつ包括的なアプローチが必要であると考えられる。
子どもの身体活動促進に向けたアプローチ
大きく分けて「長期的な視点」と「短期的な視点」の両方が必要だと考える。
まず長期的な視点としては、気候変動が今後さらに進んでいくことを前提に、子どもが日常的に身体を動かすことのできる環境そのものを見直していく必要があるだろう。例えば、学校の校庭に日陰や緑を増やす、いわゆる「学校の森化」のような取り組みは、今後、真剣に議論していくべき重要な方向性の一つになるはずだ。暑さを避けるだけでなく、暑い時期であっても子どもが安全に遊び、身体を動かせる環境を整えるという視点が重要となる。
一方で、短期的に今すぐできる工夫もある。例えば、体育の授業や外遊びの時間帯を見直し、比較的気温が低い午前中に体育を行うこと、朝読書の時間の一部を「朝遊び」にすることなども考えられる。また、暑い日には屋外活動を一律に中止するだけでなく、体育館や冷房のある屋内空間を活用しながら、子どもが身体を動かす機会を確保する工夫も可能だ。
さらに、より根本的には、子どもの生活全体の中に「身体を動かす余白」が失われていることも大きな課題といえる。現代の子どもは、学校、習い事、塾、家庭学習などで多忙化しており、自由に遊ぶ時間や、自然に身体を動かす時間が社会全体として少なくなっている。そのため、単に「運動しましょう」と呼びかけるだけではなく、学校・家庭・地域が連携し、楽しく、自然と身体を動かせる機会を意図的につくっていくことが重要だ。
日本体育大学体育学部 准教授 城所 哲宏