笹川スポーツ財団では、山梨大学大学院の鈴木 健一准教授と共同で、「片脚踏切跳躍運動における踏切使用脚決定要因解明の試み -量的データの検討から-」(期間:2025年4月~2026年3月)を実施しました。
本研究は、片脚で踏み切る跳躍運動の踏切脚(どちらの脚で踏み切るか)がどのように決定されるかに迫るもので、「片脚一歩跳」「片脚垂直跳」「走幅跳(かがみ跳び)」「走高跳(はさみ跳び)」の4種目の踏切に使用する側の脚を調査しました。その結果、跳躍運動では、必ずしも利き手と同じ側の脚やボールを蹴る脚が踏切脚に選択されるわけではなく、種目により踏切脚は異なることなどがわかりました。現在の小学校学習指導要領・解説体育編では、跳躍運動において踏切脚が決定した後、競争や記録向上を目指す学習活動が示されています。しかし、本研究の結果は踏切脚が種目によって異なる可能性を示しており、踏切脚の選択過程そのものに着目する必要性が示唆されます。小学校体育科の指導においては、児童が左右両脚による試行を十分に行った上で、それぞれの運動に適した踏切脚を決定する学習過程が重要です。
主な調査結果
■各跳躍運動の踏切使用脚の結果
多くの先行研究と同様に、本研究においても利き手とボールの蹴り脚が右側であると自覚する対象者は90%程度だった。片脚一歩跳に対して踏切脚を右とした対象者は73.2%、片脚垂直跳は65.3%と右側を踏切脚とする傾向が確かめられた。一方で、走幅跳は踏切脚の使用が逆転し、左側を優位(57.7%)とする傾向が窺えた。そして走高跳ではそれが顕著に現れ、81.9%の対象者が左側を優位とした。
図表1. 基礎データと各跳躍運動の踏切使用脚の結果
■各跳躍運動相互の踏切脚の関係
片脚一歩跳と片脚垂直跳、走幅跳と走高跳、片脚一歩跳と走幅跳、片脚垂直跳と走高跳それぞれの運動で使用した踏切脚をクロス集計し、左右の使用側を把握することとした。
走幅跳と走高跳において、両運動とも右脚踏切が15.5%、左脚踏切が54.6%で同一の側による踏切は70.1%とこれまでの多くの研究と同様に高い一致率を示したが、29.9%は走幅跳と走高跳の踏切脚が同一ではないことが示された。
片脚垂直跳と走高跳は、いずれも上方へ移動することを目的とするが、両運動とも右脚踏切が12.6%、左脚踏切が31.6%で同じ側での踏切は44.2%であり、55.8%は両運動の踏切脚が同一ではなかった。
走幅跳と走高跳では3割、片脚垂直跳と走高跳では5割の者が、踏切脚はそれぞれ同一でないことが分かった。
図表2. 走幅跳と走高跳の踏切脚のχ2検定結果
図表3. 片脚垂直跳と走高跳の踏切脚のχ2検定結果
■片足垂直跳・走幅跳・走高跳の運動構造と各脚の機能
- 片脚垂直跳
踏切脚は蹴り付け動作前に膝を屈曲して他部位の動きとともに伸展する動きを準備として行い、蹴り付け動作をもって上方へ移動するための極めて限定的な機能をもち、振上脚は、より上方へ移動するために振り上げることがめざされる補助的な機能に留まることが示された。
- 走幅跳
助走スピードをいかに踏切動作によって上前方への移動に転じるかの機能をもつ踏切脚のはたらきと、上前方へ身体を移動するための振上脚の機能が示された。
- 走高跳
膝を伸展したまま振上脚を振り上げた後に直面するバークリアのための開脚引き付け動作の要求に応じる必要があるために、踏切脚が単に地面を蹴り付けて上方へ移動するための機能だけをもつのではなく、空中局面における開脚引き付け動作と、さらにその後の振上脚からの片脚着地をも先取りした上でのクリアランスのための機能が存在することが明らかとなった。踏切脚がもつそれら2つの機能をより合目的的・経済的に果たす上で、運動者が踏切脚・振上脚を選択していることが考えられる。
■研究担当者プロフィール
東京学芸大学大学院修了。修士(教育学)。2024年3月まで東京都公立小学校の主幹教諭を務め、2024年4月より埼玉学園大学人間学部講師、2025年4月より現職。2016年度から2018年度まで、笹川スポーツ研究助成において「子ども・青少年」に関するテーマの研究が採択され、助成を受けた。2018年度の採択研究においては優秀研究賞を受賞。笹川スポーツ財団・2024年度研究「小学校体育科「ゲーム」領域における投捕運動の志向を促す教材開発」。