笹川スポーツ財団と明治安田厚生事業団は、「活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査2024」(2024年11月実施)の報告書を発刊します。 ※速報値は2025年3月にご案内済
2024年1月、厚生労働省(以下、厚労省)は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(以下、身体活動ガイド2023)」の中で「健康づくりのための新しい推奨身体活動量」を示しました。しかし、身体活動量に関する全国規模かつ代表性のある客観的データがなく、実際に国民がどの程度動いているかを明確に把握できていないという課題があります。
そこで、身体活動に費やす時間や活動強度、座位時間を詳細に測定できる「活動量計」を用い、身体活動量を実測するとともに、質問票でスポーツ実施状況等を調査し、日本国内における身体活動の実態把握を目指す共同研究を2023年度から実施しています。前年度から規模を拡大し、全国47都道府県200地点、5,400人を対象に実施した本調査結果から、男女や成人・高齢者ごとの身体活動の特徴がみえてきました。
※身体活動とは
「安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての動作」を指す。日常生活の立ち仕事や家事全般などは低強度身体活動、階段昇降や運動・スポーツ全般は中高強度身体活動に分類される。
主な調査結果
1. 厚労省・推奨身体活動量の達成率は 47.9%(再掲)
身体活動ガイド2023」で推奨する3メッツ以上の強度の身体活動量
- 成人(20-64歳):1日60分以上(=1日約8,000歩以上=週23メッツ・時以上)
- 高齢者(65歳以上):1日40分以上(=1日約6,000歩以上=週15メッツ・時以上)
本調査における1日あたりの推奨身体活動量を満たす者の割合(達成率)は全体で47.9%であった。年齢層別では、20-64歳の成人が45.7%、65-79歳の高齢者が57.1%、性別でみると、男性では成人47.2%、高齢者52.3%、女性では成人44.6%、高齢者62.4%となり、成人で達成率がより低いことが明らかとなった。
2. 1日あたりの身体活動時間・歩数・座位行動時間
1日あたりの低強度身体活動(LPA)時間、中高強度身体活動(MVPA)時間、座位行動時間、歩数の中央値を示した(図1)。
成人の身体活動時間をみると、男性はLPA時間295.0分、MVPA時間57.2分、女性はLPA時間377.3分、MVPA時間56.0分と、LPA時間は女性が男性より約80分長かった。座位行動時間は、男性が542.0分、女性は523.8分と、男性が女性より約20分長い。歩数は男性が7,368歩、女性が6,693歩と男性が約670歩多かった。
高齢者の身体活動時間は、男性がLPA時間300.5分、MVPA時間41.7分、女性はLPA時間395.0分、MVPA時間47.0分と、MVPA時間は約5分、LPA時間は約90分、それぞれ女性が男性より長い。座位行動時間は、男性550.9分、女性488.8分と男性が約60分長く、歩数は男性5,525歩、女性5,315歩と男性が約200歩多かった。
図1.各行動の中央値

※数値は研究対象者における1日の活動量の中央値を示す。
※中央値と平均値について
〈中央値〉とは、すべてのデータの数値を小さいほうから順に並べた際、中央にあるデータの値。〈平均値〉とは、すべてのデータの値を足し合わせた合計をデータの個数で割った値。今回は、他と比べて極端に小さな値、または極端に大きな値(外れ値)の影響を受けにくい、中央値を使用して結果を示した。
3. 活動量計装着中の運動・スポーツ実施の有無
活動量計装着中の運動・スポーツ実施の有無による1日あたりの身体活動量推奨基準の達成率を示した(図2)。全体では、運動・スポーツ「実施者」60.7%、「非実施者」40.5%だった。
成人・高齢者それぞれについて男女別の達成率をみると、成人の男性は「実施者」62.7%、「非実施者」37.0%、成人の女性は「実施者」54.2%、「非実施者」40.9%であった。「実施者」では男性、「非実施者」では女性が高かった。高齢者の男性は「実施者」62.5%、「非実施者」37.8%、高齢者の女性は「実施者」70.8%、「非実施者」55.8%であり、いずれも実施者が非実施者を上回った。
男性では成人・高齢者ともに25ポイント程度、女性では成人・高齢者ともに15ポイントほど「非実施者」より「実施者」が高く、活動量計装着中の運動・スポーツ実施の有無による達成率の差は男性でより大きかった。女性は男性と比べて、家事や育児などの日常生活動作による身体活動量が多いと予想され、相対的に運動・スポーツ実施の有無による達成率への影響が小さかったと推察される。
図2.活動量計装着中の運動・スポーツ実施の有無による達成率(全体、成人・高齢者別、成人・高齢者×性別)
活動量計
本調査では、三軸加速度センサーが入った活動量計を使用し、身体活動を客観的に測定する。腰に装着するだけで身体活動データを1分ごとに記録し、個人の身体活動量や歩数が測定可能。日常生活で「どのくらい動いているのか」「どのくらい座っているのか」を本格的に測定・分析できる。対象者は休日を含めた1週間、就寝時や入浴時などを除き装着する。